大人になって再読したフルーツバスケットも、やっぱり人生だった
フルーツバスケットという漫画をご存知でしょうか?
1998年〜2006年まで「花とゆめ」で連載されていた少女漫画です。
アニメも放送されていて、完結前の2001年に1回。完結後の2019年に2回目のアニメ化をしています。
私は漫画しか読んでいないのですが、2回もアニメ化する漫画って相当人気なんじゃないか?
そして時を経たアニメ化のおかげで、連載当時読んでなかった層も知るきっかけになってたと思う。(6歳年下の妹がアニメにハマってた)
「〇〇は人生」とよく言いますが、私にとっては何歳になっても「フルバは人生」だなぁと、再読して改めて思いました。
全23巻。話数も多く、登場人物も多く、思い入れも強すぎて上手くまとめられなさそうなので、特に共感や思い入れのあるキャラクターにスポットを当てる形で感想を書きます。
フルーツバスケットとは
主人公の高校生、本田透は母親を事故で亡くし、事情があり小山で1人テント暮らしをしていました。
その小山は(たぶん地元で有名な)草摩一族が所有する土地で、ある日そのテント暮らしを、同級生で学校の王子様的存在の草摩由希と、由希の同居人で保護者代わりの草摩紫呉に見つかってしまいます。紆余曲折あり、透も彼らと暮らすことになります。
草摩一族は代々十二支の物の怪に憑かれており、物の怪が憑いているものは異性に抱きつかれると憑いている動物に変身してしまう、という秘密がありました。
主人公本田透と、草摩一族の物の怪憑きの人たち、親たち、友人たち、たくさんの人が登場し、物語が展開されます。
あらすじだけ見るとファンタジーラブコメかな?と思うくらいですが、物の怪に憑かれていることが「呪い」であり「絆」であり、抜け出したくても抜け出せない呪縛があったり。
特殊な体質の子どもを持つ親との、親子関係を描いていたり。
友人とは何か、好きな人とは何か、生きるとは何か、本当に多くのテーマが凝縮されているお話です。
本田 透
幼い頃に父親を亡くし、高校生になってから母親も事故で亡くし、唯一の身寄りの父方の祖父の家族からも疎まれ…。
それでも気丈に、明るく、そしてなにより優しさに溢れた主人公。
母性にも近いその包み込むような優しさに、草摩一族の人々も癒されたり、自分の親からはもらえなかったものをもらえたり、本当に「理想のお母さん」みたいな存在です。
ただそんな完璧超人な人間かというとそうでもなく、暗い体験や感情に蓋をするための振る舞いだったり、自分を守るための優しさもあるのだろうなと、大人になった今感じます。
それでも、気丈であろうとする彼女は強く、そんな透が私は好きです。
透を象徴するお話として、紅葉くんが話した「世界で1番馬鹿な旅人」というお話がありました。
無償の愛なのだなと、彼女が持つものは、見返りを求めない無償の愛だなと感じました。
私も大人になって母親になって、「理想の母親」になれずに苦しんだりしましたが、その私の中の理想の母親は、まさに本田透でした。
私には無理だよ…あんな人間になるのは…。
草摩 綾女
透の同級生で学校の王子様的存在、草摩由希の兄である綾女。
白髪で長髪で、王族を思わせるカリスマ性のある人物です。
フルバを知っている人がこの記事読んでいたとしたら、「なんで綾女?」とか思われそうなくらい、割と草摩一族の暗い部分と縁遠いというか、彼自身が謎の自信と鈍感さとカリスマ性を持っているからか、呪縛を呪縛と捉えていない、作中でも珍しいキャラクターです。
コメディ要素が強い場面によく登場していたなと。
なぜ綾女かというと、憧れなんですよね笑
ほかに類を見ないカリスマ性と鈍感さ、他人を尊重してないというより、他人より自分が1番な感じ。
「他人より自分が1番」なところは、私もそうなので共感できたり。そしてそういう人間はあそこまで突き抜けていたら、もっと生きるの楽だろうなと思わせるのが綾女です。
でも鈍感ゆえに過去に犯した過ちがあったり。
子どもの頃にした行い、過ちを大人になってから気づき、それと向き合って彼なりに昇華させていく過程が描かれています。
ネガティブでなく、ポジティブに現状を変えていこう、今からでも遅くないかもしれないから、変わっていこうとする姿がとても好きです。
そして自分の世界観強めで他を圧倒するところが好きです笑
草摩 紅野
彼は物語の中でも中盤〜終盤にかけて登場します。そして唯一、酉の物の怪がついていながら、その呪いが解けている人物。
十二支の呪い、絆に固執する草摩家当主の慊人が、呪いが解けた時に「おいていかないで」と縋った人です。
そんな慊人を拒絶できず、常に身近にいて慊人を支えます。
彼も透に近い優しさがありますが、彼の優しさは透とは少し質が違うのかなと。
それが本当に相手のためなのか、ただ拒絶できない、反抗できないことからくる優しさなのかな。
そして少し、相手の気持ちを聞かずに、自己完結型のようにも思います。それは、草摩でずっと慊人のそばで生きていなければならなかったことが大いに影響しているとは思いますが。
彼のことが心に残るのは、夫に似てるからなんですよね。マインドが。
「助けて」と言われた人を突き放せない。たとえ自分が苦しくても、見放せない。
そんなところが、よく似ています。
草摩 楝
草摩家当主の慊人の母親である楝。
実子である慊人とは確執があり、憎み合っているという親子関係。
その確執の元は、慊人の父親であり、楝の夫であり、前草摩家当主の晶にあります。
何よりも晶を愛していた楝ですが、慊人が産まれたことにより、その寵愛が慊人に向けられます。夫を取られたような気分なのでしょうね。
だから慊人を受け入れられず、拒絶します。
楝さんは悪女的に描かれていますが、私は一歩間違えたら楝さんのようになっていただろうなと思う。
私も夫が大好きなので、もし晶さんみたいに「子ども一筋!」に夫がなったとしたら、かなり子どもに対して複雑な気持ちになると思う。取られたような気持ちになると思う。
世界には2人だけしかいなくて、それでよくて、それなのに産まれた子。邪魔者のように思ったんでしょうね。楝さんは。
私も子どもを邪魔者に思う時があるので、気持ちがわかる。
楝さんのことは、子どもの頃と社会人になってからの2回読んだ時には、やっぱり悪の権化みたいな印象でしたが、妻となり母親となった今、1番気持ちがわかるキャラクターでした。
フルバは人生だ
迷い、悩み、傷つけ、傷つき、執着や依存、いろんな形の優しさ、後悔、裏切り。
生きていると本当にたくさんのことが起こるし、他人と生きる大変さを感じる。
生きることは簡単なことじゃないけど、生きていなければ良いことも悪いことも可能性はゼロで、だから、生きてほしい。
人生で感じるいろんな感情がギュギュッと詰まっている。それがフルーツバスケットという作品だと私は思います。
誰もが生きていれば体験することが、きっとこの漫画の中にはあると思います。
みんなの輪に入れない自分。他人を羨ましいと思う自分。誰かを悪者にすることで安心している自分。
少し「痛い」ところを突いてくる、そんなお話。
そんな少し痛い自分とどう向き合うか、どう生きていくかのヒントをくれる、人生で読んで損はない漫画です。