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はるか遠くから人種を言い当てる -なぜわかるのか?-

いまイスラム教の国に来ていて
長らくホテルの12階に滞在(生息?)している
といっても建物の作りが違うので
日本であれば15階以上の高さに匹敵するだろう

毎日仕事をしながら窓の外を眺める
道を歩く人の姿が小さく目にとまる

不思議なことに
歩いている人がアジア系なのか欧米人なのか、
あるいはインド系なのか、マレー人なのか
即座にわかるのだ
骨格も体躯も違うし、歩き方(英語でgaitというやつ)も違う
何かを本能的に嗅ぎつけて、すぐさま人種を言い当てる

むかし、奥さんが幼稚園を経営している友人が言った
人の歩き方は赤ん坊の時にどんなオムツを何歳まで履かされていたかで決まってくると
あるいは、履いていたか履いていなかったかによっても違ってくるのだと
要は、歩く姿にその国の子育て文化が反映するということらしい

たしかにそういうこともあるには相違ない
でも、それだけだろうか

以前不思議な体験をした
日本人の集団にハーフがひとり混じっていた時
人の群れをひと目見渡しただけで、瞬時にその「異物」を探知できたのだ
自分だけに備わった特技というより
人間の認知体系にビルトインされた野生の直感知のようなもの
直観といってもいいかもしれない
自分を守るための、他者を、あるいは外敵をただちに察知する鋭い感性が
ほんらい我々に本能として授けられているのではないか

関根恵子(現 高橋恵子)という美人女優がいた
彼女とのちに結婚することになる映画監督・高橋伴明が、ある時
誰かを一向に判別できないくらい遠方を歩く人たちの中に
当の関根がいることを即時に識別したという
顔かたちや歩き方うんぬんというより、特定の人に対してだけ発する特別なオーラのようなもの、そして、特定の人だけを峻別できる神秘的な力のようなもの、それらが相俟ったのだと思う

とりとめのない話になったが
人を瞬間的に区別する、識別するという知覚能力の背後に
敵味方を見分けるための原初的な直覚のようなものが
いまも密かに働いているように思うのである

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