見出し画像

二次流通関連ビジネスへ参入するモデルにはどんなものがあるのか?

こんにちは。二次流通で顧客とのつながりをつくる、『Selloop』 Managerの長谷川です。この記事は、二次流通ビジネス立ち上げを検討している方や興味がある方に向けて、「二次流通のビジネスモデルってどんなものがあるのか」、「例えばどういった形で参入ができそうか」について簡単ではありますが書いてみました。二次流通ビジネスについて具体的なイメージを持っていただくのに少しでも役立てていただければ幸いです。


1. 二次流通とは

メーカーで生産された製品が、卸業者や小売業者を通して販売されるという一般的な流通を一次流通と呼びます。これに対し、一度市場で販売された製品が、再び販売されることを二次流通と呼びます。基本的には中古品の売買がこれにあたり、フリマアプリでの取引等がイメージしやすいかと思います。

中古品、つまりリユースの市場規模は2021年で2兆6988億円とも呼ばれており、年々成長を続けています。さらに日本の家庭に眠るいわゆる”かくれ資産”は推計約44兆円あるとも言われており、ポテンシャルも非常に大きな市場といえます。

また、SDGsの目標12で掲げられている「つくる責任 つかう責任」に関連し、持続可能な社会の実現に向けても注目されている領域です。

*なお、本記事では基本的にリユースに関する内容を取り扱い、ドネーションやリサイクル等を含めた循環経済全体の機能やビジネス等についてはまた別の記事にて触れさせていただければと思います!

2. 二次流通関連ビジネスへの参入モデル

一般的な二次流通・リユースビジネスは、①個人や法人からの「買取」、②買い取った製品の「再商品化」、③再商品化した製品の「再販売」を行うモデルです。

例えば個人から不要な服を買い取り、検品・清掃等を通して再商品化したものを再び別の利用者へ販売するという流れです。基本的な収益ポイントは買取・再販の差益や、手数料収入です。

こうした事業はリユース事業者が主に手掛けていますが、近年、特に海外では、顧客や市場環境の変化に対応するためにも、一次流通の事業者が自らのブランドでこうしたビジネスに参入する形が増えています。

その背景には、一次流通と二次流通をうまく組み合わせることで顧客ロイヤリティや収益性、社会貢献性を高めることができる可能性があるということがあります。例えば、うまく買取の提案を行うことで顧客との接点が生まれ、新商品への買換えが進み、買取商品のリユースやより環境負荷の小さい製品への買換えを通して持続可能な社会への貢献へつながるということがあります。

「リユースビジネスが自社の既存事業にどう影響するのか?」については以下記事をご参照ください。本記事の内容もこの記事の内容を前提としていますので、先にこちらを読んでいただくことをお勧めします!

では一次流通事業者が二次流通ビジネスに参入する形としては、例えばどんなものがあるでしょうか。本記事ではひとまず以下の4つをご紹介します。
①買取サービス
②買取・再販サービス
③サブスク、レンタル、リース等のサービス
④再販・レンタルプラットフォームサービス
それぞれ具体的にみていきましょう。

3. 買取サービス

【概要】
・顧客の使用済製品を買い取るサービスです。例えば新品販売時に顧客が使用していた同種の商品を買い取ったり(いわゆる下取り)、買取申込の窓口をオンラインや店頭で設け、査定したうえで買い取るといった形があります。

・一般的な流れとしては買取サービスの告知(買取提案)⇒買取申込⇒査定額提示⇒査定額承認(買取成立)⇒買取金額支払い&商品引取となります。訪問や店舗への持込を通して実際の現物を確認して査定する場合もあれば、オンライン上の情報で査定が完結する場合もあります。

・買い取りを行う対象商品はサービスが設定する基準によりますが、商品種類、自社製造品か否か(自社が過去製造した商品に限る場合もあれば他社の同種製品を買い取る場合もある)、品質(外観、機能、経年等)等で判断されます。

・買い取った商品は後述のようにリユース品として自社顧客に再販売したり、BtoBのオークション等でリユース事業者等に再販売を行います。

【期待効果・立ち上げ時のポイント】
・買取という新たな顧客接点が生まれ、その接点を活かした新品販売、買い替えサイクルの強化や顧客のロイヤルティ向上が期待できます。またリユースの促進というサステナブルな取組を通じて、うまくブランドイメージの向上につなげられる可能性もあります。

・一方で本格的な立ち上げにあたってはユーザーフロントのクリエイティブ設計から買取基準、買取品の管理・検品体制、再販売手段の確保等、様々な設計が必要になりそれ相応の知見やコストが必要となります。またきちんと全社戦略との接続や既存事業とのシナジーを考慮して設計しなければ、リユースビジネスのポテンシャルを取り逃がしてしまうことになりかねません。

・さらに適切な管理や検査、再流通手段を確保しておかないと、粗悪なリユース品の流通やコンプライアンス違反によってブランドイメージを棄損してしまうリスクもあります。

・立ち上げの際には、新品販売と合わせた総体として企画・設計することや、法規制/コンプライアンスを遵守しブランドを既存させないような体制を構築することが重要です。

・また、買取の際には古物営業法への対応が必要です。詳しくは以下の記事をご参照ください。

【具体事例】
①(Apple)Trade Inサービス
いわゆる下取りサービスですが、使用中の端末はいつでも下取りに出すことができ、下取り額分はAppleの製品やサービスの購入に使えるギフトカードで受け取れます。下取り額もシンプルなUIで確認ができ、キットでの集荷回収でも店舗への持込でも回収が可能な設計となっています。

②(lululemon)Trade InとResale
米国では既に多くのアパレルブランドが自ら使用済製品の買取サービスを開始しています。lululemonはlululemon Like Newのサービス名で買取と再販プログラムを展開しており、顧客は状態の良い買取対象であるlululemon製品を近くの店舗に持ち込み、査定後に商品種別に応じて$5~$25分のEギフトカードが受け取れるシステムです。

https://likenew.lululemon.com/

海外の事例についてより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください


4. 買取・再販サービス

【概要】
・前述の買取に加えて、買い取った商品をリユース品として自社顧客に再販売を行います。例えば自社ブランドの認定中古品として販売しているケースがこれにあたります。

・一般的には機能面で問題が無く、外観も良好なものを一定の保証を付けて販売する形をとります。ただし新品と同様の保証内容である場合もあれば、新品と比べて厳格な内容である場合もあります。

・なお買い取った商品だけでなく、顧客から返品された商品もリユースの対象となり得ます。

・販売にあたっては、使用済の商品の検査、修理(簡易修理からリファービッシュまで)といった工程が重要となります。

【期待効果・立ち上げ時のポイント】
・顧客へ新たな選択肢を提供することで購買を生み出したり、新しい顧客層へリーチできることが期待されます。

・新品に比べて安価なため、価格面で敬遠していた潜在顧客のエントリーを促す効果もあれば、サステナブルな商品を指向する顧客層(特に若年層)のエントリーを促す効果も期待できます。

・ブランド自身が自らの名において認証等を付与して販売することは、安心・信頼を購入者に与えることができます。二次流通においてはこういった安心感・信頼感が最も重要であり、中古品を販売するサードパーティ等に比べ、製品を生産・販売しているブランド自身が取り組むことは非常に効果的です。また、買い取られた製品がその後適切にリユースされているということが分かると、サービス利用者としても安心して買取を依頼できます。

・一方で、新品販売への影響(いわゆる新品とリユース品のカニバリゼーション)が懸念されるかと思います。この点については、カニバリゼーションのリスクと、エントリー顧客獲得によるリターンとを総合的に考えてみる必要があるでしょう。

・販売するリユース品の対象や品質担保については、新品販売やブランドイメージへの影響、自社の販売ポリシー等を考慮して内容を検討していく必要があります。また、既にある一定の二次流通市場が形成されている商材については、そこでどういった品質で流通されているのかといった実態や価格帯を把握しておくことも重要です。

【具体事例】
①(TOYOTA)認定中古車
クリーニング、車両検査証明書の発行、ロングラン保証の三つの安心を付与して、TOYOTAの認定中古車として販売を行っています。二次流通で適正な流通や価値が担保されていることは一次流通にも好影響を与えます。

②(Patagonia)Trade InおよびUsed Gearの販売
米国ではWorn Wearというサービス名で中古品の販売等を行っています。全ての商品は厳しい検査基準を満たし、クリーニングされ、新品同様の保証が付いています。加えて下取りや修理、リサイクルといったサービスも展開することで、顧客がPatagoniaとパートナーとなり、製品の寿命を延ばすための重要なリソースを提供するプログラムとなっています。


5. サブスク、レンタル、リース等のサービス

【概要】
・二次流通市場での取引価値の把握や流通手段の確保ができると、サブスク、レンタル、リースといった、いわゆる売り切りではなく製品の「利用」を提供するサービスの展開も効果的に行うことができます。(「モノ」から「コト」へ)

・例えば自動車の残価設定ローンやカーリースは、将来の自動車の残存価値、つまり将来の二次流通市場における再販価値(=リセールバリュー)の分を差し引いた料金で自動車を利用できるサービスですが、製品の利用中及び利用後のリセールバリューを高めることおよび精度高く把握することは、競争力のあるサービス料金設定につながります。二次流通市場において一定の価値で流通させ、相場の情報が収集・蓄積できれば製品のリセールバリューを把握することができ、それを前提としたサービス設計が可能になるのです。

・利用されていた商品をメンテナンスして再度利用提供したり、ある時点でリユース品として再販売するといったことをシームレスに展開する形もあり得るでしょう。

・サブスク、レンタル、リース、買取保証付きでの販売等、サービス形態や見せ方は様々な手段が考えられますが、本質的にはリセールバリューを可視化し、高く保つことがサービスの質を高めることにつながります。

【期待効果・立ち上げ時のポイント】
・リユース品の販売と同じく、顧客へ新たな選択肢を提供することで購買を生み出したり、新しい顧客層へリーチが期待できます。

・基本的に利用分だけ(残価分を差し引いた金額)の金額を提示できるため、価格面で敬遠していた潜在顧客のエントリーを促す効果もあります。

・また精緻に残価を設定できることにより、顧客へ残価の保証をすることで安心を与えると同時に自社のリスクも軽減させることができるでしょう。

・一方で精度高く残価を設定するためには二次流通市場での再販価値が査定できること、再販価値を高めること、相場情報の収集・蓄積や相場の予測等が必要になり、一定のノウハウやリソースを確保しなければなりません。

・再販価値を高めるためには、質の高い検査や修理、買い手の開拓、買い手が買いやすい再販プラットフォーム等が必要になります。

【具体事例】
①(SONY)残価設定クレジット(カメラ)
カメラの返却時の買取予定価格を残価額とし、残価額を差し引いた代金を24カ月の分割で支払いできるサービスで、月々の支払いを抑えられます。カメラは二次流通でも一定の市場性がありますので、こうしたサービスを組み合わせることで新たな顧客層へリーチできる可能性がありあす。

②バイクリース(ME:RIDE)
メーカーではありませんが、中古バイク流通を手掛けるオークネットが展開するバイクリースサービス。
バイクは車に比べ、車両の価値下落は比較的なだらかであることや特定シーズンの集中利用のニーズ及び若年層はサブスクに馴染が深いこと等に着目して開始され、バイク業界全体の新規ユーザー層拡大に貢献しています。


6. 再販・レンタルプラットフォームサービス

【概要】
・ブランドを利用するエンドユーザー同士が利用済み品を売買したりレンタルし合うプラットフォームを提供するサービスの展開というのも考えられます。

・例えばユーザーがECサイトで購入した製品を利用した後、いつでも別のユーザーへ販売したりレンタルを行うことができるプラットフォームが考えられます。購入およびレンタルが安心して行えるよう、ブランドは取引プラットフォームのUI/UXや、検査・真贋機能、配送手配サポート機能等を提供します。

【期待効果・立ち上げ時のポイント】
・既にサードパーティのCtoCのフリマアプリや中古品売買サイト等は存在しますが、ブランド企業が自ら展開することで取引の安心感、信頼性が高まります。また、新品購入と合わせた一体的なブランド体験をデザインすることにより顧客ロイヤルティや利便性の向上が期待できます。

・会員制ビジネスを展開しているなどのコミュニティ基盤がある場合には導入しやすく、そうしたコミュニティを強化する手段として活用できます。例えば「良いモノを丁寧に使い、受け継ぐ」、「活動を通じて環境保全に貢献する」といった世界観で展開することで、ファンコミュニティの活性化につながるかもしれません。裏を返せば、導入にはそれなりの熱量をもったコミュニティ基盤の必要性が高いともいえます。

【具体事例】
①AirRobe
海外ではブランド向けに、ブランドの顧客が購入時にサーキュラーコマースに参加できる機能を提供している企業も存在します。AirRobeはブランドECサイト購入画面に、再販やレンタル機能のウィジェットをシームレスに挿入できるサービスを展開しています。ユーザーはブランドサイトでの購入時にワンクリックでこの仕組みを利用でき、後日再販、レンタル、リサイクル、寄付を選択することが可能です。


7. おわりに

以上、4つの二次流通関連ビジネスのモデルを簡単に紹介させていただきました。どれも既存ビジネスと上手く組み合わせることにより顧客ロイヤリティや収益性、社会貢献性を高められることが期待できます。どの形から入ればよいかという点については、実現難易度が比較的低い買取サービスの導入から検討するのがまずはよいかと思います。

一方でその実施には一定の専門的な知見やノウハウ、リソースが必要となり、自社で全てを実行するのはハードルが高いかと思います。さらにいえば、二次流通ビジネスによる好影響を、自社のブランド特性・商品特性を前提としても同じように実現できるかどうかは、あくまで検証が必要な仮説です。この点を確かめるためには、まずは小規模なPoC(コンセプト検証)をクイックに実施することが非常に有効です。

二次流通支援サービス「Selloop」では、PoC実施を含めたクイックかつローリスクなリユースビジネスの立ち上げを、ビジネス設計のコンサルティングや各種開発・制作の代行、業務BPOによって実現します。
ご興味のある方は、Selloop webサイトよりお気軽にご相談ください。

Sellop Webサイト