シェアハウス・ロック(or日録)0110

元旦の毎日新聞下八

 新聞の1面の下の書籍広告を、業界では下八(したやつ)と呼ぶ。元旦の毎日新聞下八で目を引いた書籍タイトルは以下である。下八なので、8社なのだが、私の興味をあまり引かなかった書籍の出版社もあった。

①『互恵で栄える生物界』(オールソン著/西田美緒子訳)
②『だめ連の資本主義より楽しく生きる』(神長恒一+ぺぺ長谷川)
③『自立からの卒業』(勝山実)
④『刑務所に回復共同体をつくる』(毛利真弓)
⑤『哲学の問題とはポイントの問題である』(谷田雄毅)
⑥『痛み、人間のすべてにつながる』(ライマン著/塩崎香織訳)

 全体として、いまの社会体制に疑義を呈するような書名である(⑤⑥は違うが)。元旦なので、これはなにかのメッセージなのかと、ちょっと深読みしてしまうが、そんなことはないのだろう。たまたまそういうことになったのか、あるいは私の性向からそんなことを感じたのだろうと思う。でも、繰り返しになるが、「いま」の無意識がここに結実したと私は考えたのである。
 ちなみに②③は同一の出版社。
 たとえば⑤は「ウィトゲンシュタインの中心概念を読む」と副題がついており、また⑥は単純に痛みそのものを論じた科学的、医学的な本であり、上記の「深読み」からは外れている。
『互恵で栄える生物界』はこのごろ私が考えていること、つまり、バクテリアから始まり、人間に至るまで、生物界は互恵に満ちているということを再認識させてくれる本なのだろうと思う。
 昨年の自殺者は、バブル崩壊時の3万に迫ろうという勢いであり、私の考えではバブル崩壊時よりもタチが悪いと思う。バブル崩壊は一過性であったが、昨年の自殺者の多くは、アベノミックスを皮切りとし(先駆は小泉純一郎と竹中平蔵コンビによる「改革」である)、この間ジワジワと進んだ庶民イジメの結果であると思える。
 そういう時代にあって、①②③④は、私には、この時代へのメッセージとして響くのである。
『自立からの卒業』には、「寄生してでも生きよう」という裏メッセージがある。雨宮処凛さんの発言だったと思うのだが「『自立』をあまりにも強調するあまり、生活保護などの制度に頼れず、犯罪に走る」と断罪するコメントを紹介した記事があり、私はそのご意見をそれなりに納得して読んだ記憶がある。
 菅義偉は、「自助、互助、公助、そして絆」と総理大臣にあるまじきことを言ったが、「自助」がトップに来るということは、明らかに「自分でなんとかしろ」であり、「自分でなんとかならないなら、お互いになんとかしろ」であり、これは「公助」を担当するべき行政の長としての発言とは思えない。雨宮さんの主張も、こういう言葉と照らし合わせると納得である。
 上記①~⑥で①⑤⑥はぜひ読みたいなあ。

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