シェアハウス・ロック1117
カマキリはなぜ路上で死ぬのか
秋になると、アスファルトの道路上で死んでいるカマキリをよく見る。私は、長年、「これはどういうことなんだろう」と思っていた。どうせ死ぬんだったら、もうちょっとましな場所、彼らにとって環境のよいところもあるだろうにと考えていたのである。
11月13日の毎日新聞夕刊に、その答えが出ていた。同記事は、京大准教授・佐藤拓也さんと澤田侑那さんを中心とした当時の修士グループの研究成果に基くものだ。捕食関係を前提にした仮説である。
カマキリが捕食した水生昆虫には、ハリガネムシが寄生していることが多い。体内で成長したハリガネムシは、カマキリを操って水に飛び込ませる。本人(笑)が水のなかでカマキリの腹から脱出し、水草などに産卵するためである。
では、なぜアスファルトか。
水面からの反射光に多く含まれる「水平偏向」が、アスファルト道路のそれと同じ強度であるからだというのが、その仮説の根拠である。ちなみに、「水平偏向」は電磁波(光も電磁波である)の振動が水平に偏ることを言う。偏光ガラスを二つ重ね、ゆっくりと回していくと、まったく向こうが見えなくなる角度がある。これで、偏光という現象は確認できる。
研究グループは、アスファルト道路と色の異なる三つのセメント道路で実験したところ、感染カマキリはアスファルト道路を高頻度で歩いたというし、日本と台湾の4地点で100匹以上のハラビロカマキリをアスファルト道路、樹上で採集したところ、樹上のものは感染率が低く、アスファルトのものは8割以上が感染していたという。
前述で、「ハリガネムシは、カマキリを操って水に飛び込ませる」と簡単に書いたが、私としてはどうやって操るのかが一番知りたいところだ。でも、この解明は今後の課題なんだろうな。
私が新聞を読む最大の理由は、こういったこと、つまりネットなどを検索していてはどこをどうやっても知ることのないことが、「向こうから」ぽーんと飛び込んでくるからである。
ところで、これを書いている昨日から、最寄り駅では古本市をやっている。私は早速足を運び、3冊100円コーナーで、9冊仕入れて来た。その一冊『はみだし生物学』(小松左京)は再読なのだが、今回のような話の宝庫である。