シェアハウス・ロック0911
長女に字を教える2
次の日曜日。
この日は、散歩しながら「うくすつぬふむゆる」をとにかくおぼえさせた。「あいうえお」は、どこでおぼえたのか彼女は知っていたのである。「うくすつ……」をおぼえてから、
「『く』に続けて、『あ』って言ってごらん」
「くあ」
「もっと速く」
「くぁ」
「もっと速く」
「か」
私は、日本語の「か」は、「k+a」ではなく、「く+あ」であることをなにかで聞きかじっていたのである。吉本隆明さんもこの考えをとっていたことを知ったのは、ずっと後年だった。
この日の散歩中に、長女の頭のなかの「五十音表」は完成した。
次の日曜日までに、私は行の頭に「うくすつぬふむゆる」を小さく書き、さらに「ぐずづぶぷ」を書き、一番右の行に「あいうえお」を書き、交点に「ひらがな」を右に「カタカナ」を左に書いたものをワープロでつくっておいた。
次の日曜日にこの「五十音表」を渡し、
「『かくかく』した字と、『くねくね』した字が書いてあるけど、最初はどっちを書いてもいい。だんだん慣れてきたら、右だけ、左だけって書けるようになるからね」
と言った。
これで「かな」の授業はすべて終了だった。
あとは、この「五十音表」をおぼえた後、絵本、子どもの本、とりわけ『コロコロコミック』で、漢字もおぼえていったようだ。『いちご新聞』ってのもあったなあ。思い出した。ルビつきの子どもの本は、子どもが字をおぼえる際には、相当に有効である。
8月の後半、我が長女と、彼女の子どもと3人で会った。昨年の私からのクリスマスプレゼントの履行が遅れに遅れ、このときになったのである。彼女の子どもの主張は、クリスマス分と、もう誕生日も来たので、2点買ってくれてもいいはずだということであった。大甘のおじいちゃんとしては、「いいよ」である。
まあ、プレゼントはともあれ、このときに私が予定していた楽しみは、例えば「山」「川」「月」「日」「木」などを書いて読ませ、もし読めなかったら、だんだんと象形文字にしていき、最後は絵にして読ませたいということだった。もう、ひらがな、カタカナが読めるのは知っていたからね。
それを楽しみにしていて、昼食後、「もう漢字は読めるの?」と聞いてみた。間髪を入れず「中学生くらいまでの漢字なら読めるよ」と返ってきた。長女によれば、『コロコロコミック』のルビでおぼえたという。まだ出てるのか!
せっかく頭のなかで象形文字化する練習をしてたのになあ。ちぇっ、つまんねえの。
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