アミダくじ、歌わずにはいられない世代
『アミダくじ』
選んだ運命の1本の線が下にたどり着くまでの独特な緊張感、せっかく当たりにたどり着いたのに、「あれ、今1本飛ばさなかった?」などと言われてやり直したらやっぱりハズレだった時の絶望感は言葉にできないものがあります。
「抽選方法」というカテゴリーの中では、折り紙に当たりハズレを記入し、花の形にしてパクパクさせるアイテム(正式名称はパクパクパックンチョ)とその人気を二分するといっても過言ではないでしょう。
先日職場にて、とある問題をアミダくじで決める事になり、線を辿りながら「あっみだくじ~あみっだくじ~」といつものようにくちずさんだ所、同僚の20代女性に「その歌なんですか??」と問われました。「え、もしかして知らないかな?アミダばばあ…。」小さくと答えると「え、誰ですか?!」と興味津津。
土曜の夜はめちゃイケ!世代の彼女が、アミダばばあを知らないのは無理もありませんが、素朴な疑問を投げかけてみました。
「あみだくじをやる時、歌わないでどうやってやるのかな?」
すると彼女はかなり困惑した様子でしたが真剣に考えて答えてくれました。
「うーん…。ビョ~ンとか…デデデ~とかですかね?」
私は思いました。
「それじゃあアミダくじがあっという間に終わってしまうじゃないか…」
思わぬ事でジェネレーションギャップに直面し、その日は少し落ち込みました。
アミダばばあは、土曜の夜を彩った伝説のバラエティ『オレたちひょうきん族』(1981-1989)に登場した明石家さんまさん扮する怪人で、ビートたけしさん扮するタケちゃんマンの3番目の天敵です。コミカルに繰り返される「あっみだくじ~あっみだくじ~どれにしようかあっみだくじ~」のフレーズは、当時世の小学生を虜にしました。
この曲は1983年にタケちゃんマン&アミダばばあ名義で『アミダばばあの唄』としてシングルレコードも発売され35万枚のスマッシュヒットを記録。作詞作曲は、あの!桑田佳祐さん。
学校の休み時間、私たちはとにかくこの歌が歌いたくて、意味もなくアミダくじを作ってははしゃぎました。〇でも×でも△でも、ハートでも☆でもなんでも良かったんです。結果なんかどうでも良かった。ただみんな歌いたかった。
アッミダくじ~(ばばあ!)←合いの手
アッミダくじ~(ばばあ!)
どれにしようかアッミダくじ~♫
今の世では若干の不適切感がある合いの手ではありますが、今とは違って色んな事が許されていた時代でした。
1本の線が下にたどり着くまでのあのごく短い時間が、この歌によってそれはそれは愉快な時間に変わったものです。
そんな思い出に浸りながら、曲をしっかり聴いてみたところ、
大人になってから聴く『アミダばばあの唄』はやけに心に沁みました。
哀愁漂うメロディーに、お2人の独特なハスキーボイス。
何よりも、想像以上に切ない歌詞。
1本の線に翻弄されながら進んでいくアミダくじは、思うようにはいかない人生と似ているのかもしれないと、深読みしてしまうほどでした。
検索していると、桑田佳祐さんご本人が歌われてるもののあり、
そちらもとってもかっこよかったです。
その動画では、「ばばあ!」の部分のコーラスに、村上ショージさんの
「ドゥーン!」が使われており、こちらも素晴らしかったです。
そんなアミダくじ、今はアプリがあるそうです。
どんな仕組みなのかは全く想像できませんが、BGMだけは『アミダばばあの唄』でありますようにと願わずにはいられません。
ぜひ若い世代の方々にも、歌いながらアミダくじにチャレンジする喜びを知ってもらいたいと願う、3月の夜。