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ゲイン

5年ぶりに両親に会ってきた。
年に数度のLINE程度でしか交流がなかった。
理由は、5年前、大喧嘩をしたこと、そのあとすぐに東京に異動になったし、コロナになったし、弟のことで再び揉めたし、間が空いたにはいろんな理由があった。

両親は、もう20年も山奥で半自給自足のような暮らしをしている。ポツンと一軒家に出演できるかどうか微妙な程度の暮らし。田舎暮らしに憧れる人も多いだろうが、多分ほとんどの人が1週間で飽きると思う。

そんな山奥に5年ぶりに、一人で。
手土産に美和桜のさくらもちと、母親にカヌレをもって。

広島県三次市 美和桜酒造

車で走ること2時間、ずっと見覚えのある風景が続いている。田舎は基本的に変わらない。
家も看板の位置も、木の様子もずっとそのままだ。
変わったのは、山奥に入れば入るほど、民家に人影がなく、畑も田んぼも荒れ放題だということ。
人の手が入っていない田舎。それでも都会の四季がない、首都高から見る街並みよりも美しいかな。

懐かしい両親の家が見えてきた。
父親が出迎えてくれた。いつも通り気難しい様子かと身構えたがそうでもないらしい。
母は、長年の闘病などで、聞いていた通り、田舎のおばあちゃんみたいに腰が、背中が曲がっていた。骨粗鬆症の影響だろう。

当日は、私もいろいろ厄介ごとを抱えており、本調子ではなく、あまり快活にはいられなかったが、5年の空白に言葉は要らなかった。
久しぶりに3人で母の作る昼食を食べた。
食べてすぐにみんなで車に乗って最寄りのスーパーでアジとワカシを買って、魚ロッケを買って、日本酒で宴。粗末ではないが、質素な見栄え。母の母方の家系図の話をしながらゆっくり時間が過ぎる。
この時間の中で、20年二人で過ごしてきたのだから何も言うことはない。





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