蝿の王子と蛆の姫⑥
「それで、この12時間はどう過ごすんですか?」
「なんでもかんでも聞くな。自分の頭を使え」
見た目に反して言葉がきつい。
「その……襲撃を事前に回避するとか」
「無理だろうな」
「プレイヤー全員で協力して生き残ってクリア?」
「鈴木、あんた蝿の王を読んだことないだろう」
「はい、ぶっちゃけないです」
「できるだけ味方は多いほうがいい。たが、最後に信じていいのは自分だけだ」
「裏切り者がいるってことですか?」
「そんな生易しいものじゃない。下手したらプレイヤー同士の殺し合いになる可能性が高い。扇動者は人間じゃない」
「あー、なるほど」
蛆姫神社の巫女は天啓を与える。
「ガイド役なんですね、貴女の役割は?」
「不本意だが。本来は巫女はプレイヤーではなかった。私自身も驚いている。」
「信じられませんね。貴方が生身の人格を有している可能性は低い」
「それでいい。誰も信じてはいけない。自分だけを信じて行動するんだ」
「わかりました。必ず生き残りましょう」
「クリアしてみないことには、解らないことがある」
最初からそのつもりだった。
割には合わないが、仕事は仕事だった。
このゲームをクリアする。
その上でバグは報告しなければならない。
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