そのニ

そのニ
とりあえず高校へ進学出来た。
補欠なだけに少し遠慮気味ではあったが
昼は現場で塗装職人として働き夜は勉学に励む日々になっていった。
ある休日の朝先輩の車がうちの前に来た。車の爆音に気づき出ると「行く
ぞ、荷物積め」と急に言われたが家を出たかった自分はせっせと生活する
荷物を積み始めた。車に乗り込みしばらく走り「これ~拉致られた」と勘
違いをしながら、どこへ行くのか行き先も告げずT区にある住宅地の一角
にベンツが止まっていた。
車から降りて扉を開ける先輩に違和感があった。リビングに通され革ソフ
ァーに
どっしりと座っている人間がいた。オレはやべえとこに来た。と思うのも
束の間先輩に挨拶せえよ、と言われ身分を告げて宜しくお願いします。と
言うとおっ、よろしくな。とどすのある兄貴の返事が返ってきた。外の爆
音が集合すると「失礼します」と次々と先輩方が入ってきた。挨拶を一人
一人して外のベンツを洗車しているうちに自分の置かれた立ち位置が理解
できたんだ。洗車が終わると中へ「入ります」と台所で飯炊きを先輩とし
ながら
話し込んでいた。夕方、街宣車を
コイン洗車場で皆で洗いその日はわかれた。
塗装工として汗を流して働き仕事が終わると夕飯を楽しみにY校定時制に
行きたっぷりと飯を食べて美味しい学給食に感謝していたんだ。職場と学
校の往復にも慣れた頃、M絵という女の子と友達の紹介で知り合った。一
連ボディコンで可愛いいに驚きあっという間に仲良くなり
1

野毛のマンションでの同棲生活が始まった。
M絵はパパが五人ぐらい居て、同棲している野毛のマンションに不良のパ
パが
小遣い5万円をたまに様子見にくれたりした。
同僚反町のY田は一個上の先輩ではあったが
一緒に塗装工として働いていて右翼活動も一緒に行動していた。
Y田の女もM絵と友達で集会にも
一緒によく行った。日野坂にフジヤの
ペコちゃんがあって駐車場で先輩方と
Y田の姉ちゃん彼氏と合流して
日限山へ向かうのであった。
Y田の姉貴もポン中で夜な夜な親が眠る
耳元でジャブを放り込む姉さんだった。
保土ヶ谷公園に集会の帰りに寄り静まり返った山の中に車を止めて静かに
各々ジャブを放り込み幻覚に妄想にかられながら楽しんでいた。狸も現れ
る朝方キマりすぎて車にはY田だけいてシンナーを吸引していた。シンナ
ー好きなY田は売りをしていた私から度々リッター瓶を持っていってい
た。一斗缶を田舎の方に仕入れに行く時、自分のY30を出す訳だが、
トランクに10缶も積み込むと車高が下がっている上更に沈みケツがペタペ
タで
前上がりの状態で田舎の方から先輩と朝方帰って来るがハンドル握る手は
汗ばみ、身体に入ってるから余計にバクバクして帰宅する自分、よく頑張
った。と帰宅して放り込み眠りにらつくのであった。翌日配達する訳だが
寺の住職だったり学校の先生だったりして少し驚いていた。C瓶に小分け
して車に積み込み待ち合わせ場所で集金してはジャブに入れ込んでいた。
2

ジャブを引きに行くとキロから分けていて人間も暗号化して厳密にしてい
た。
仕事も順調にいっていた頃逮捕されたオレは一夏で退学になり鑑別所へ移
送された。罪名は毒物及び劇物取り締まり法、
無免許、窃盗罪であった。
出てきてから途方に暮れて民間保護施設ダルクに通所するが上の空で放り
込んでは抜けた頃に仕事へ行き疲れるとまた放り込むという山手線の様な
生活を送っていた。
付き合っていたM絵の眠る足元でジャブを打っているところ、泊まりに来
ていたM絵の妹に見られてしまいオレは完全におかしくなり外でやる様に
なり勘繰りでぐりぐりになっていった。
そんなオレにM絵は別れを告げた。
荷物をまとめて4年程のお付き合い
ありがとう。
今でも野毛山動物園に行くと
当時の壁の落書きを探して
物思いにふけ
あの頃はもう戻ってこない事
悲しく思う自分がいた。
ある朝事故渋滞している高速道路で
緊急車両の赤灯を回しサイレンを自分がスイッチON、「緊急車両通りま
す」と拡声器を通して道を開けて行く先に間に合い定例で関東圏から数台
四灯たいて
待っていた。挨拶をして合流した後靖国神社へ参拝、国民儀礼して昼弁を
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食べて
大使館に突っ込みオーライオーライ、
共産党の脇を通り止まらず街宣し
公園で休憩。
わかれて帰る夕日が眩しかった。
当番日には緊張して後輩と電話番していた。
ある夕日いつも通りの帰り道、
コンビニにいる女二人に声を掛けると
乗っかってきてラリっていた一人の女と結婚するとは思いもしなかった。
見切りつけて港の見える丘公園で
式を挙げて一緒になり仕事も真面目に
取り組んでいった。
塗装業の深さが分かり始めてきて
その時私は23才になっていた。
仕事で先輩に叱られ引っ叩かれ
ていたが子供が一人、二人、三人、
と産まれる度、責任を感じて
働いていた。
新聞配達も早朝から踏ん張って団地の階段を駆けずり回り配達が終わると
急いで
塗装工に塗り替え仕事をこなして
順調に進んでいたと感じた。

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