その三

その三

仕事が軌道にのり家庭も支えて月二の
当番と街宣という二足の草鞋を履いて
毎日が生き生きとしているのを感じながら日々精進していった。
正直やってること疲れるが夕方帰宅して
子供たちと一緒に風呂に入ってる時が私にとって一番良いと思う時間であった。
風呂を次から次へと出ると元嫁がバスタオルを構えて抱き抱えて拭き上げてくれて最後に私は風呂場を片付け湯を流し小窓を開けて換気して一日の仕事が終わりを迎えるのであった。
出来てる晩御飯をテーブル囲んで皆座り
いただきます、お疲れ様、と私の好きだった日本酒越乃寒梅を冷でチビりながら
魚をつまみ幸せっつー時間を感じながら
一日の疲れから酒飲んで身体を癒して
川の字に引かれた布団でゴロっと横たわり深い眠りについた。
身体は疲労困憊していても朝がまた来て
一日が始まるのでありました。
そんな生活の影でいわゆるタマポン、
たまに放り込む自分がいた。
家族の顔を見る事なく暗闇に消えていくのであった。
そんなある朝、仕事へ行こうと玄関扉を
開けると前から変なのが5人こちらに向かってくるとしっかと令状をかざしガサが入った朝6時30分頃の空気は濁っていたのがわかった。
ガサから家を出てくると空のポンプ100本程と材料が少量押収された。
朝もやに私が乗った一台のワゴン車が消えていった。
家族を残して家から遠ざかる車内で私は
見慣れた外観を眺めて無念さを感じて下を俯いていた。
「これはおわりじゃないか」
そんな風に思ってました。
逮捕され留置所から横浜拘置支所に移管になり暫く菓子をパリパリと食べて過ごしていると嫁の面会がありました。
嬉しくなる反面変な汗をかいていたんだ。面会室に入ると一人で来てくれて
険しい顔している嫁から察した。
紙を持ってきていて素直に応じる事しか出来ないのは仕方ないと思った。
独居房に戻り入ります、とサンダルを
揃え鉄の扉がガシャーンと閉まるとシーンと静まり返った房で一人涙した。
暫くたったある昼時、外へ出ると明日、
鳥取まで行くからと教えてくれたオヤジが朝早いから領置物検査から支度を、するからとびっくり箱で待っていた。
ルイ・ヴィトンのボストンバックに整理して詰め込むと朝の準備が出来た。
房へ帰り明日へ備えて早く休む事とした。早朝4時頃出ます、と房を後にして
新横浜駅まで護送車に揺れている他四名の姿があった。駅に着くとロープで繋がる私を含めた五名が駅に進み縦に歩いていった。正直、恥ずかしいしまわりはサラリーマンや会社員の通勤する人々がじろじろ見ているじゃないか。情けない思いでやりきりホームへたどり着いた。
すでに鉄道警察が待っていて新幹線が到着するとボックス席に五名に対し三人が座った。
途中、エロ本を護送中に渡されたが
全然見る気に無くて車窓から外観を眺めていた。京都駅で特急電車に乗り換えて鳥取駅まで4時間はかかる中駅弁を振る舞われた。
とても色とりどりのおかずに白飯を美味しく頂きました。少し眠っているとトンネルに入り出た頃には雪が降っていた。
日本海側の鳥取県は雪国であった。
列車から降りると寒くて驚いたよ。
待っていた護送車に乗って鳥取刑務所にたどり着いた。
領置物検査をしてびっくり箱に入り、
舎房へと入りバタンと戸が閉まり
シーンと静まり返っていた。
独居に二人暮らしは狭くて二段ベットにやっと通れる通路がある。先人に挨拶をして落ち着ける場所で机に向かって新入の書類を作成していた。
外から懲役の声が響きわたり帰ってきたんだと思った。飯は境港港が近いのか
魚料理が目立つ国立保養所であった。
結局懲役たち自分も含め覚醒剤取締法により逮捕されここに落ちた類いの人間が多かったな。外人やお年寄りが多く
工場での仕事が終わり風呂に入る訳だが
たまに水面にプカプカと浮く黒い物を手の甲であっちいけ、と自分の排泄物をよそへやる場面を多々見受けられた。
すると刑務官であるオヤジが伸びるタモ網をシュルシュルっと糞へと伸ばしてすくい竿を納めるオヤジはプロだと確信したのでありました。湯上がりの懲役の背中には赤くなった登り鯉がいい色に染まっていたな。
雨の日は運動も無く舎房に一日中シケ込む訳で、舎房の床の角に落ちている陰毛を結んで遊んだりしていた。
陰毛の数を数え成果を上げていたんだ。
そんなんことしている間、左見て右見たら出所になり仮釈放で無事出所した。
当日は吹雪いていて、門番のオヤジに
駅はどっちか聞くと指さす方向へ向かって吹雪の中少しずつ歩き出していった。
振り返るとあそこで病み具合いも悪くなったり涙したり馬鹿な話をしたりして過ごした施設が遠ざかっていった。
しかし駅まで2時間程歩いて着いた時タバコを買いとりあえず一服した感じは
清々しくてとてもうまかった。ゆっくり
普通列車で京都駅まで揺られて外観を眺めて色々と考えさせられたんだ。
しばし眠りについた。
京都駅に着くとドコモに寄りケータイ電話を作業報奨金で購入して手に持ちアンテナが無い事に気がついた。なんじゃこりゃ。
一応元嫁に電話したが使われてなかった。暫く携帯電話を眺めていた。
新幹線は東京方面へ向かっていた。

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