その一

つわものたち
その一
           菅野國彦
夏が終わり秋風に包まれて住まいの塗り替えのシーズンにもあたる心地良
い風が頬を通り過ぎる陽気が気持ち良い。外壁をローラーで転がしながら
何も考えず替え歌でも口ずさみたいところだがこの時代、現場では私語禁
止、煙草はコンビニ、昼飯もコンビニである。そんな昼のコンビニでは
知り合いの塗装屋によく生き合ったりする。「おぅ、久しぶり~、元気
か?」など生存を確かめ合ったりする。たまに足場屋さんの営業もあった
りして誰と出会うかわからない希少な昼飯時の休憩時間だ。ゆっくり休ん
でいる。
少年期から塗装業に携わっており独立も二度目だが少年期に比べて今を見
ると自由感が無くやたらとあれも駄目、これも駄目と窮屈に感じたりもす
るこの時代私が思うと塗装屋の腕の良さよりも
お客様とのコミニュケーションや話上手が好まれる、そんな時代になちま
ったものだから昭和の塗装屋にはキツいと思う。
私が小学校6年生の頃、バイトが港湾の
仕事や死体洗い、新聞配達、など主にしていたんだ。
O中学に入学して二年もたった頃、童貞だった私にもM紀という通称ヤリ
マンと身体が当たりその時は良しとしたが後々淋病を頂いたんだ。
小便する度、あの女~と腹を立てるが痛みの方が、強かった。早熟女の収
穫時を
間違えてしまい事業自得である。
先輩たちから○濱連○のパーティー券を
渡されて明日までに銭用意しろよ、と言われかき集めた銭で足りない日に
1

は顔面殴られ車で引きづられて散々な結末を知っているから恐喝窃盗何で
もいいから集金して翌朝に渡していたんだ。
普段は大人しく学校をサボり友達の家で
シンナー吸いながら麻雀、ポーカーをして過ごしていた。たまに埠頭で夜
釣りにアナゴをひっかけに手に握りながら楽しんだりしていた。
中学三年になっても変わらず学校にも行かずに遊んでいた。
駄菓子屋には菓子パン、駄菓子、おばあちゃんの手作り焼きそば、芋煮、
があり
テーブルゲームがあった。
一日駄菓子屋にいる場合もありポーカーゲーム、スパルタンX、魔界村、
麻雀、などがあったんだ。
ゲームで銭を消費しては婆さんの釣り銭箱から小銭をパクって突っ込んで
いた。
そのうち家出するようになり銭が必要で
友達などの家に入ったりして銭を盗っていた。駅前のレストランのシャッ
ターの鍵が夜開いているとの情報があり夜中の1時頃オレたち仲間三人で
そのレストランに入る事にした。盗ったバイクで少し離れた場所に忍び寄
りとめて三人でコソっとレストランのシャッターをゆっくり開けて入りゆ
っくり下ろした。中扉の鍵をバールで割り壊してロックを開けて入ったん
だ。レジ、事務所を荒らして小銭やら札束を各々ポケットに押し込み金目
のものが無くなると冷蔵庫を開けておかずや肉を袋に詰め込み5分たらず
でコソっと店を出てシャッターをゆっくり下ろしてダッシュしてバイクで
散るように逃げていったんだ。達成感に満ち溢れやれば出来る事を再確認
してマンションの屋上で眠りについた。邪魔が入らず翌朝スーハーして妄
想を膨らましてマンション屋上から自宅を見ていたんだ。
2

一人寂しく昨夜盗ったおかずを食べて生きていた。ちょっと仲間が心配に
なり駄菓子屋へ行った。するとゲームをしていた後輩が共犯である仲間○
田目が近くの交番にいると聞いて、ああ、と思ったんだ。学校の担任に話
を聞きに行くと仲間の孝○が○手警察にいるとも聞き驚いたもののマンシ
ョン屋上に逃げ帰った。
時間の問題を忘れるのにスーハーして眠りについた。食べものが無くなり
腹が減り家に戻るとアレが待ち構えていたように背後から迫りよってきた
のがわかりすぎた。結局、友人の親のレストランに入ったという事で穏便
に済ませる様に神のお告げがあり勾留10日間でパイになり
出て友人宅に謝りに行って各々弁償する事になった。
家庭裁判所送りになり保護観察がついて
しばらく大人しくしていた。
オレらとしては小遣いをくれないから
盗っていたんだ。
一時そんな事もあり夏を迎え海やプールに遊びに行った。
オレたちが流れるプールの水の吹き出し口付近で好みの女が来るのを待ち
構えていた。仲間の○田目が「来たんだ」と呟くと流れる川下に忍び寄っ
ていった。
タイミング合わせて流されて女の身体を触りまくり惰性で流されていった
んだ。
そんな事を繰り返してるとたまに「ピーピー」と笛を吹いて警告されるが
知らないツラして繰り返し遊んでいた。
そんな夏も終わり季節は秋から冬景色に変わり元々学校へ行かなかったオ
レは
高校進学をどうするか、と担任に言われたが出席日数が足りなくてもしか
3

して
進学出来ない可能性があったんだ。
しかし補欠で定時制にもしかしたら入れると聞いたオレは日夜勉学に励ん
だ。
春に桜が咲き誇り合格発表を楽しみに高等学校へ向かった。番号を探して
「あれ~おかしいな」と何度も見返して、番号が無い。やっぱりオレって
奴は...としけ込んで帰ろうとした時小さな白い掲示板を持った先生に一応
聞いてみようと手に握りしめた番号の紙を見せようとしたところ「話は伺
ってますよ、補欠ですが」との返答に唖然となり、一気にオレの心は晴れ
上がり感謝の言葉を伝えて急いで家に帰り母に「合格した」と告げる。
「良かったじゃない、やれば出来るのよ」と微笑んだ。ありがとう。

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