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インドネシア語 接辞と基語、語幹


 今回は接辞と接辞に関わる文法用語(基語と語幹)について説明したいと思います。
 本来、文法用語などはあまり使いたくないのですが、まったく使わずに解説をすると、文法用語を使った時よりも、長ったらしくなり、しかもかえって分かりにくくなってしまいますので、少し我慢してお付き合いいただきたいと思います。

接辞(接頭辞と接尾辞)

 まずは接辞についてです。
 接辞とは、単語の前や後ろについて、新たな意味を加えたり、文章中での役割を決める言葉のことです。
 英単語で例を挙げますと、port (運ぶ)という単語に、「外に」という意味を加えるex をつけるとexport (外に運ぶ、輸出、輸出する)になります。
 おなじくport に「できる、可能」という意味を加えるable をつけるとportable (運ぶことができる、持ち運び可能)という単語になります。
 この例でのex とable が接辞です。

 この接辞が単語の頭(つまり単語の前ですね)につくと接頭辞とよばれます。先ほどの例ですと、export のex が接頭辞です。
 そして、接辞が単語の尾(単語の後ろですね)につくと接尾辞とよばれます。先ほどの例ではportable のable が接尾辞です。

 インドネシア語では接頭辞と接尾辞の両方ともつく場合があります。この場合は共接辞とよばれます。

基語と語幹

 インドネシア語の文法で基語というのは、接辞が何も(接頭辞も接尾辞も)ついていない状態の単語のことをいいます。
 少し例を挙げますが、これらは形をみていただければいいだけなので、意味は書きません。
 terjual の基語はjual 、pekerja の基語はkerja
 makanan の基語はmakan 、dudukkan の基語はduduk
 pakaian の基語はpakai 、berpakaian の基語もpakai

 そこで語幹についてなのですが、日本語の文法にも語幹というのはありまして、日本語文法では動詞や形容詞、形容動詞の活用によって変化しない部分を意味しました。
 しかし、インドネシア語文法では、日本語文法の語幹とは意味が違いますのでご注意ください。
 インドネシア語文法での語幹は、接辞がつく「直前」の単語のことをいいます。

 それは上で説明した基語と同じじゃないのか?とお思いの方もいらっしゃると思います。実際に、解説者によっては基語という用語だけを使って語幹という用語を使わない方、逆に語幹という用語のみを使って基語という用語は使わない方もいらっしゃいます。

 とはいえ、一応違いはありまして、先ほどの例のうちpakaian とberpakaian を使って説明しましょう。

 これはpakai という単語に接尾辞an が付きpakaian という単語ができます。それからpakaian に接頭辞ber が付きberpakaian になります。

 この場合、pakaian にとっては、pakai は接辞が何もついていない状態ですから基語です。同時に接尾辞an が付く「直前」の状態でもありますので語幹とも言えます。

 berpakaian にとっては基語は(pakaian の基語と同じく)pakai になります。接頭辞のber も接尾辞のan も何もついていない状態だからです。
 しかしberpakaian にとって語幹はpakai ではありません。上で述べたようにpakaian に接頭辞ber が付いてberpakaian となっていますので、berpakaian の接頭辞がつく「直前」の状態はpakaian となります。そのため、berpakaian の語幹はpakaian ということになります。

少なくとも基語だけは意識しましょう(インドネシア語の辞書について)

 文法分析をする際は別として、インドネシア語を使うためには、このように基語と語幹をきっちり区別する必要はあまりありません。たとえば、先ほどのberpakaian の語幹がpakaian であることは会話でも文章でも意識する必要もありませんし、ほとんどの場合トリビア的な話題以外で使うこともありません。
 (でも、基語と語幹を分けて解説している先生の授業や文法書を理解するためには、基語と語幹の違いが分かる方がいいに決まってます)

 しかし、基語(接辞が何もついていない形)だけはきっちりと意識して学ぶ必要があります。
 なぜなら、基語を知らないと(伝統的な編集方針でつくられた紙の)インドネシア語の辞書がひけないからです。
 インドネシア語の辞書は接辞がついた形(派生語といいます)を見出し語とせずに、基語のみを見出し語にしています。派生語はその基語の説明の中で記述されています。
 例をあげますと、berpakaian やpakaian を辞書でひこうとして、B やP の項目をひいても見出し語としては載っていません。基語であるpakai をひくとpakai の派生語として「berpakaian 服を着ている」「pakaian 衣服」という説明がされています。
 つまり、基語がわからなければ辞書がひけないので、文章を読むことはもちろん、自習で単語を増やすことができないのです。
 なので、繰り返しになりますが、基語は必ず意識して学習するようにしないといけません。

 とはいえ、最近のインドネシア語辞典では、派生語も見出し語として立項していることが多くなっていますから、以前ほど基語を意識しなくても学習することができます。
 例えば小学館の『プログレッシブ インドネシア語辞典』では、berpakaian やpakaian はberpakaian → pakai 、pakaian → pakai というように派生語から基語に誘導し、基語のpakai の項目でberpakaian やpakaian の説明をしているという方法をとっています。

 また、電子辞書やインターネット上の辞書などは、検索機能がついていることが普通です。派生語を検索すれば、その派生語の書かれている項目に誘導してくれますので、やはり、以前ほどは基語を意識する必要性は少なくなっています。

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