看護師は病院のナンデモ屋🦾
私は救命センターで勤務している看護師だ。
以前から看護師の業務量に関しては疑問があったが、現場が逼迫している状況でさらにそれが浮き彫りになってきたので考えを整理してみたい。
愚痴のように感じる人もいるかもしれないが、問題解決に向けてまず大切なのは解決するべき課題の洗い出しと問題に対する認識の共有であり、この記事はそうした目的で書いていることを理解してほしい。
また、個人的な考えがかなり入っているので最初に「これは個人の見解である」と述べておく。
これを書かないと最近は「じゃ辞めたら?」と仰る方が多いので、、、
看護師の業務は「療養上の世話」と「診療の補助」である。
看護師は間違いなくこの言葉に踊らされれている。
看護師とは病院のナンデモ屋さんのような存在であり、看護師へのしわ寄せはすごい。
ある程度大きな大学病院や市中病院に勤めている看護師でこのしわ寄せ理論に異論がある人はいないだろう。
「療養上の世話」と「診療の補助」
この中にとんでもない量の仕事が詰まっているのだ。
病院の採用者の業務内容についての欄には
「看護師業務に従事する」
としか書かれていない。
雑過ぎねぇか?
融通が効くのはいいのだが、融通を利かせ過ぎて現場は大変なことになっている。
度重なる診療報酬の改定や新しい加算の関係で、記入する書類は増えていく一方。
事故が起きれば全て看護師の責任となり、その分ルールが増えていく。
業務改善を訴えても人的資本に頼るばかり。
そもそも通常時ですらこんな感じで現場は120%の力で回っている。
ギリギリアウトだ。
そんな中でコロナときた。
もう終わりだと思った。
コロナではご存知の通り、今までの患者対応に加えて感染への対応を余儀なくされるからである。
これは思っている以上に大変なことで、コロナによる急激な重症化のリスクがあったり、感染対策のために人的資本が必要な関係上、救命センターがコロナ病棟として選ばれやすい。
ということは、救命センターがコロナの影響で潰れるということになる。
これが1箇所なら良いが、コロナが流行するとどこの病院もコロナ体制を始めるため、一気に救命センターの空きが少なくなる。
だからと言って患者が減るわけではない。
当院は断らない救急をモットーにしている。
うちの救命を潰すわけにはいかないとみんな本気で思っている。
こうした現状を踏まえ、私が働いている病院は救命センターを潰さずにフロアを改造して2つに分けた。
そのため、1箇所はコロナ専用の救命センター、もう一つは通常通り救命センターとして活用されるようになった。
私はこのコロナではない方の通常営業モードの救命センターで勤務しているのだが、マジで超絶忙しい。
私の勤務している病院周辺の地区はコロナで救命センターを一気に閉めてしまった。
その関係で、当院に患者が搬送されまくる。
もうひっきりなしに患者が搬送されてくる。
その結果、救命センターには人工呼吸器がつながれた重傷患者だらけになる。
また、救命センターがいっぱいになると、最も症状の軽い患者さんを一般病棟の重傷部屋に無理やり出す。
そしてまた入院を受け入れる。
外傷、熱傷、水難、OPE後、カテ、敗血症、なんでもありだ。
言葉にするのが難しいくらいめちゃくちゃ忙しい。
こんな時は普通にやっていたこともできなくなる。
その結果、当たり前に事故が起きる。
そのためいつもヒヤヒヤしながら仕事をするため心理的負担がとても大きい。
ちゃんと確認していても、常に何かを忘れているような気がする。
さらに、仕事が終わる頃にようやく落ち着いて確認ができるようになってきて「ハッ」と間違いに気づくことがある。
残業をしている途中に他のスタッフから「これどうなってますか?」と午前中に受けた指示の確認が入る。
仕事から帰って家にいる時でも申し送ったスタッフから確認の連絡が入る。そこで自分が事故を起こしたことに気づくことも多い。
こんな心理状況で仕事をしていること考えた上で、看護師の業務を少しでも減らせないか、また、病院で働いているもの同士、協力できるものがないか考えていきたい。
ただの愚痴のように聞こえてしまって気分を害してしまった方がいたら申し訳ない、これが現状なのである。
さて、ここからは私が思う
「看護師が行っているが、看護師以外にお願いできると思う業務」
を書き出してみる。
これを看護師以外にお願いすることができればいかに看護師の業務負担が減るだろうか。
まず、看護師以外の方々にお願いしたい仕事。
・書類整理、入院時の説明
・入院前の状況や家族の情報の聴取
・医師が患者家族に説明を行うときの時間調整
・医療機器の整理整頓、片付け
・物品の補充、数や使用期限の点検
・処置のコストを取る
こうした業務的なものは正直看護師ではなくてもできる。
特に入院時の説明なんかは、看護師によって説明の上手下手が出るし、スピードも全然違う。
むしろ医療従事者以外の患者家族対応を専門に行う方にお願いしたほうがクレームも少なくなるのではないかと思う。
また、ご高齢のご家族に対応するときなんかは15分で終わるところを1時間程度の時間を割くこともザラである。
そして最近はコロナで面会の方法もコロコロ変わっており、面会の方法についてちゃんと説明できる看護者いるのか?というレベルである。
薬剤師の方々にお願いしたい仕事。
・元々飲んでいる薬の情報収集
・処方された薬の数合わせ
・自己内服できない方の内服薬の準備
・なくなりそうな薬の処方依頼
薬は本当に大変だ。
正直看護師は病院で使われている薬以外のことはほとんどわからない。
最近はジェネリックが多く、違う名前で同じ内容の薬なんてものもあるからさらに間違いやすい。間違えたら速攻で看護師の責任だ。
薬剤師が準備した薬剤を看護師が確認し投与する。これはどうだろうか。
事故が起きたときのリスクも考えて、薬の管理は看護師が行うウエイトを少なくしたほうがいいと思う。
また、もっと言うなら
・点滴の混注
・シリンジ類の院内希釈液の準備
・同時に投与する点滴経路の選択(同時に投与すると配合変化を起こす薬は多い)
こうしたものも、看護師ではなく薬剤師に分業、もしくは確認を手伝っほしい。
救命センターでは十数種類の注射薬を同時に投与することだってある。
投与中の点滴の残量が無くなるのもとんでもないスピードだ。
1勤務で30本くらい薬剤を作っていることだってある。
この業務負担は正直かなり大きいし、責任が大きくのしかかるところである。
医療相談員(メディカルソーシャルワーカー)の方々にお願いしたい仕事。
・警察や交通事故の相手の対応
・反社会勢力の方々の対応
・ご家族の関係性が悪化しているときの病院での対応方法の検討
・待合室の家族への対応や声かけ
特に警察やヤ○ザ関係は厄介で、事件性がある時はマジでお願いしたい(切実)。
臨床工学技士の方々にお願いしたい仕事。
・病棟管理のシリンジや輸液ポンプ、呼吸器の使用状況、所在の確認
・機器の使用後の整備・整理・整頓
・医療機器が自然故障した時の原因検索
・機器がルール通りに正常に使用されているかの点検
特にシリンジや輸液ポンプの片付けや整理はお願いしたい。
「お前が使ったものはお前が片付けろ」
と思う人もいるかもしれないが、正直機器の操作にも慣れていないし、整備の方法もそれぞれ違う。
看護師が片付けてぐちゃぐちゃになっている機器たちを見てイライラしたことがあるかもしれないが、それはそもそもの原因が
「超絶忙しい看護師が片付けているから」
ではないだろうか。
我々もできることなら綺麗にしたいし壊したくない。
もう書き始めたら止まらないのでこれくらいにするが、とにかく看護師の仕事は多いから手伝って欲しい。
もう甘えられるところは全力で甘えさせて欲しい。もう限界だ。
あとはもうそろそろシステムでどうにかしたい。
例えば、バイタルサインの異常を伝える時
Ns「よし、報告しよう、え〜と、外科のあの先生の電話何番だっけ?これこれ!」
ピポパポ、、、プルルルル〜プルルルル〜
ガチャ
OPE室Ns「はい、OPE室です。〇〇先生のピッチです」
Ns「あ、先生OPE中ですか?」
OPE室Ns「いや、近くにます、ちょっと待ってくださいね」
Dr「はいはい?」
Ns「先生、報告です、今よろしいですか?」
Dr「いいよ」
Ns「〇〇のOPE後のAさんですが、30分前からAfになり、現在は150台の頻脈になっています。血圧は70台で、ノルアドレナリンを指示通り投与しています。抹消もかなり冷たいです。」
Dr「尿量は?」
Ns「尿量は1時間あたり10〜20くらいしか出ていません、ドレーンからの大量の出血は認めません。輸液は細胞外液が100ml/hで投与されています。」
Dr「呼吸とラボは?」
Ns「呼吸状態は安定していますが、血液ガス上ではアシドーシス が進行しており、ラクテート(乳酸)が上昇しています。」
Dr「わかった、輸液とりあえず200に増やして。1時間後またバイタル報告して、OPEに入るから何かあったら〇〇先生に連絡して」
Ns「わかりました」
報告はこんな感じなのだが、もうモニターと呼吸器の画面や検査データを医師のスマホに連携させてくれ。
そうするだけでこの報告いらねぇんだから。
現場では電話番号押して、医師に繋がるまでの時間すら惜しい。
指示もフリック入力でいいから速攻で残して欲しい。間違いの元やねん。
あと、例えば2時間おきに血糖値の測定があったり、4時間おきに尿量の測定があったりする。
そういう患者さんがたくさんいる。
もちろん覚えていれば良いのだが、緊急入院や検査・処置が入ると忘れる。
人の記憶に頼るとヒューマンエラーが起きるので、こういう時間処置に関してはカルテに処置がポップアップのように出て欲しい。
「〇〇の時間です!」と出してくれるだけでい。それに数字を入力するまでちっちゃくてもカルテ上でピコピコしててええから←もはや何言ってるかわからない笑
内服のオーダーもそう。
なくなりそうにな日を自動的にPCが判断して医師にメール飛ばしたらいい。
書類のサインやコピーも全部ペーパーレスにしたらいい。
iPad導入して全部電子にしたらいい。そしたら印刷する必要もない。後日まとめて自宅に送ったらいい。
患者のバイタルサインも、呼吸器やIABP、ECMOの設定も測定値も、輸液やシリンジポンプの流量や投与量も全て電子カルテに飛ぶようにしたらいい。
効率化できるところは全て効率化する。
看護師の人的資本に頼り過ぎていたらこれからもっと大変なことになる。
ここまで書きたい放題書いたが、ただ楽をしたいとうわけではない。
効率化により、看護師に余裕が生まれれば、患者さんの元に行って十分に看護ができる。
患者の回復も早くなり、入院期間の短縮が見込めるため収益増だ。
また、残業時間の短縮により、業務による精神的・肉体的ストレスの低下が見込めるため看護師が精神的にも肉体的にも健康に働ける。職員満足度も上がり、結果的に離職率が低下し看護師の定着率がアップ、口コミから病院の評判が上がり採用かけるコストが減る。
更に業務時間の空き時間に勉強会でも開催できれば患者アウトカムが向上する。今までより確認に割ける時間が増えて、事故が減ることで病院の評価も高くなることは間違いない。さらに受診者数は増える。更なる増収だ。
新しいシステムを導入し、理念もユニークな病院になれば、メディアの取材も来るだろうし、それにより勝手に宣伝効果も得られる。
良いことの無限ループだ。
導入コストがいくらかかろうと、必ず取り返せる。
現場は人で回っていることを忘れないでほしい。
話は変わるが、私は看護学生の時、入院中の祖母に毎日会いに行っていた。
その時言われた言葉が忘れられない。
「患者さんって心細いし寂しいのよ。だから忙しくても患者さんには優しい看護師になってね。」
私はこの言葉を胸に毎日仕事をしていたが、最近は患者さんに優しくどころか、忙しくて申し訳ない気持ちを持ちながらも無視してしまうことすらある。
また、看護師が看護業務をしている姿をしばらく見ていないようにも思う。
患者の爪が伸びていても切れない。
髪が洗えず、ベトベトになっていても洗えない。
外の空気を吸いたいと言っても散歩もできない。
手足が固まりつつあるのに、ベッドサイドでのリハビリも満足に行えない。
ご家族に連絡したいが、そんな余裕はない。
こんなの、看護をしていると言えるのか。
分業やシステムで看護師の業務を減らす目的はそこにある。
看護師として、シンプルに患者さんの療養上の世話、すなわち回復のお手伝いをしたい。
看護師なら皆思っていいることではないだろうか。
業務で押しつぶされそうになって攻撃的になっているお局様だって、間違いなく熱いハートを持っている。
患者さんの気持ちは回復にとても大きく影響するし、そこにこそ我々看護師が介入する必要があると考えている。
できることはやる。
でも、看護師は病院のナンデモ屋さんではない。
「疲れたら辞めてもらって、また新しい人を雇えばいい」
というような使い捨てのような考えはやめて欲しい。
とにかく今は忙すぎる。
また落ち着く時が来るが、その時に今回の経験を忘れてはならなと思い、自分の考えを書いてみた。
一人一人が考え、そして改善するためにはどうしたらよいか考えることで、少しずつ現場はよくなっていくと思う。
日々の業務に忙殺され、愚痴って終わりにせず、これからの患者さんや未来の看護師のために何か改善できることはないか常々考えてみると、少しは前向きな気持ちになれるのではないだろうか。
と言っても、この忙しさでは正直むずかしいが、、、
夜勤明けにまとめたから文章がぐちゃぐちゃだ、、、
でも気にしない笑
ではおやすみなさい。平日14時のマクドの端っこより(マクドに大迷惑笑)
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