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原初のファンタジー体験をもう一度 『最果てのパラディン』
今回、久々に胸躍るファンタジー作品に出会えたのでご紹介します。
それが本日10/16から各種動画サイトでも配信開始されました
異世界転生ファンタジー作品
「最果てのパラディン」
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異世界転生、とみて「うわ」と思った方いました?
わかりますその気持ち。
自分も異世界転生ファンタジーと聞いてうんざりすることも多々。
しかし安心してください。異世界転生ものと侮るなかれ。
ここには原初のファンタジー体験がありました。
異世界転生ものが嫌いなひと、うんざりしている人、ファンタジーをこよなく愛する人はぜひ。
そしてなによりこれからファンタジー世界に入ろうとしている方へ、
ぜひ贈りたい一冊です。
0.作品概要
原作は小説家になろう発の小説。オーバーラップ文庫から発刊。
https://www.amazon.co.jp/dp/B01DF0O1N8/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1
著者は柳野かなた先生。
またコミックガルドでも漫画が連載中です。
https://comic-gardo.com/episode/10834108156661710626
滅びた街で一人の生きた子供、ウィルがいた。
少年を育てるのは三人のアンデッド。豪快な骸骨の剣士のブラッド。淑やかな神官ミイラのマリー。偏屈な魔法使いの幽霊のガス。
彼ら三人に教えを受け、愛を注がれ少年は育てられる。
なぜウィルはアンデッドに育てられているのか? 滅びた街の謎とは?
そうしてブラッドから善なる神と悪なる神、彼ら生前からの物語が語られる。
といったあらすじとなります。
1.原初のファンタジー体験
あなたの最初に呼んだハイファンタジー作品はなんだったでしょう?
指輪物語?ロードス島?精霊の守り人?デルトラクエスト?
僕はブレイブ・ストーリーからでしたが、多くのファンタジー好きは原初のファンタジー体験を持っているかと思います。
つまり、雄大な大地や文化に想いを馳せ、主人公と共に現実とは異なる異世界を旅する。美しくも時に過酷な世界を歩みながら、勇気とは愛とは何かを学んでいく。
そのわくわくドキドキ感に興奮し、時間を忘れて読みふける。気が付けば夜が明けて朝日が昇っていた、なんて経験もあったり。
最初にいいます、最果てのパラディンは久々にその原初のファンタジー体験を思い出しました。
まず、世界観の成り立ちが丁寧かつ緻密。
J・R・R・トールキンが指輪物語の作品を言語や文化から創造したように。
最果てのパラディンでも世界の成り立ちや文化背景、魔法の体系などが丁寧に緻密に描かれます。
『昔昔のそのまた昔
世界は大いなるマナが形を保たず渦巻くどろどろの混沌じゃった。
そこに最初の神が現れた。
神は一言"大地あれ"と言った。
すると神の足元にはマナが凝り大地となり
神の頭上はマナが薄れ天空となった』――彷徨賢者ガスの神話語りより
神のことばによって創造された世界。
ことばが力を持ち、文字を描けばそれがたちどころに現れる。
原初の創造神が生み出した世界には善や悪の神が現れ……、と世界が広がっていきます。
そうした神話がその世界の文化や社会、価値観につながっている。
まさしく異世界がそこにはあったのです。
久々にこの語りには惹きこまれました。
一気に没入し、気分はもう最初に小説をしっかり読み始めた中学生時代。
読み進めるたびに主人公のウィルと一緒になって世界を追っている。
そうして読み進め、気が付けば夜が明け、読み終えてもしばらく高揚感が体を満たし、鼓動が早鐘を打っている。
これからファンタジーに入る人は楽しみにしていてください。
2.転生とは何か、異世界転生する意味とは?
いや、そんなこと言っても異世界転生、なろう系なんでしょ?
そう思うのもわかります。
さて、ここからは異世界転生やなろう系が嫌いな人にも最果てのパラディンをオススメする理由です。
そもそも転生とは何か?
古代ギリシャ思想や仏教など世界中でみられる思想ですが、ざっくばらんに言えば「死んだ後に、別の生を受けて生まれ変わる」ことと言えます。
現世で善き行いを積み重ね、来世ではよりよい生を受けるという考えもあります。
では異世界転生とは何か?
昨今のなろう系、特に異世界転生ものといわれるジャンルにおいては「どうしようもない人生から死んで、くそみたいな現実からおさらば。幸運なことに神が異世界へ転生させてくれた。すばらしい力を与えてくれ、世界をエンジョイしてやる!」というものが多く見受けられます。
それ自体の是非は別にここで語りませんが、多くのアンチを生んでいることも確かです。
ここではさらに踏み込んでみましょう。
なぜアンチが生まれるか?
1で語った原初のファンタジー体験にもつながりますが、その体験との差異があまりにも大きいからだと考えます。
・なぜ何もしていない主人公を神は特別扱いするのか? 神はそもそも特別扱いしないのでは?
・主人公に仲間が増えていくが、そんなに主人公に魅力があるか?
・神から与えられた力を考えなしに奮い過ぎでは?
上げていけばキリがありませんが、そうした小さな疑問点が積み重なって結果としてアンチが生まれている。
その疑問点はもっともだし、逆に異世界転生ファンからすればそんなこと気にせず楽しい世界を謳歌したいと考えるのも最もです。
少し話が逸れますが、勘違いしないで頂きたいのは対立煽りとかは意図していないのでご留意を。どちらも意見としては正しいと考えています。1人のクリエイターとしてはそうした様々な意見があるからこそ創造の世界は広がると考えています。
閑話休題。
さて、ではこの最果てのパラディンはどうなのか?というところ。
結論から言えば、この話は『そうした疑問に真っ向から描いている作品』『異世界転生したこと、それそのものに意味がある作品』です。
ここが自分が惹かれた点です。
ウィルは曖昧な生を終えて死んでしまい、異世界へと転生しました。
美しい世界を見て、転生が神から与えられた恩寵だと考えます。
しかし本当にそうでしょうか。往々にして神から寵が与えられるには理由、もしくは対価が要ります。
決意は行動で示さなければ何の意味もありません。
無為に生を終えただけの青年が恩寵を戴くには何を差し出せばいいのか。
曖昧に生きてきた青年が、決意を示すには何を行えばいいのか。
転生者にとって生きること、死ぬことの意味とは?
生々流転を司る神に、主人公ウィルはどう答えを出すのか。必見です。
3.世界の在り方、己の在り方
世界の描かれ方、在り方ですが冒頭にも述べたようにこの世界はことばによって創造されました。
しかし創造のことばは力を持ちます。手紙なんて書こうものなら大変なことになります。
そのため、善の神の一柱である知識神エンライトがくずし文字、俗用言語を生み出しました。
人間たちの間では文字が安全に取り交わされるようになったのです。
ただし一部の人間たちは創造のことばを用いて、現象を生み出す――すなわち魔法を使いとなりました。
ここが面白いポイント。世界の成り立ちが言語が基になってるんですね。
言語学は疎いのですが、これには舌を巻きました。
ことばとは曖昧で、受け取り方でいかようにも変化する。
つまり魔法もさまざまな形で変化します。
取り扱いを間違えれば暴発し、危険をさらします。
さらには普段、嘘をついたり取り交わした約束を破るなど軽い言動を行えばことばはその重みを失って、魔法も効力を失います。
ことばの持つ意味や、真意がそのままその人の在り方にもつながっているのです。
ガス曰く、だからこそ賢者と呼ばれる人になるのはごく少数だと。この理屈には参りました。
なるほど、常に誠実たらんとして実行できるのは賢者の行いだと。
実際作中、ウィルは神官でもありますが一人の魔法使いでもあります。
神官として人を助ける、尊い行いをする一方で決して人に嘘をつかず誠実であろうとします。
健気に人助けを行い、誠実である。根底に優しさと愛がある。
それこそ、主人公を応援したくなるってもんです。
4.生きること、死ぬこと、そして神への誓い
総括して、この物語はまさしくウィルを軸に描かれる壮大な英雄譚といえるでしょう。ウィルが何を決意し、どう行動するか。何を為すか。目が離せません。
かいつまんで紹介しましたが、最果てのパラディンは心からオススメできる一冊です。
かならずあなたを心躍る異世界へと連れて行ってくれるでしょう。
アニメは全12話、各種配信サイトでも放送していくそうなので楽しみです。下記に公式サイトURLを載せておきます。もし興味がわいた方いらっしゃいましたらぜひご覧いただけますと幸いです。
https://farawaypaladin.com/