拾った女の子は常識知らず‐ホノカ寝
「そういうことだったんだ」彼女は頷いた。
「ま、そういうことで昔にあってたんだ」僕は説明を終えると、ホノカを見た。
彼女はさっきから何かを手に持ったままちょこんと座っていた。
「!?」彼女の手にはどう見てもメロンパンがあった。
「本屋で食事はだめでしょ!」僕は慌てて彼女から奪い取ろうとした。
だが、触ったものはむにゅっとした感触だった。
「むニュ?」僕は手に取ったものを見た。
どう見てもメロンパンだったが、つかんだところがへこんでいる。
「本物じゃなかった…」僕はほっとして座り込んだ。
もしも本物だったら少しやばいことになっていたと思う。
だが、本物のほうがよかったと後で思った。
「メロパンちゃんが…」急にホノカがウルウルと涙を流し始めた。
手には僕がつかんだところがペッちゃんこになったメロンパンがあった。
「ウワーん!」彼女はついに泣き出してしまった。
「大丈夫だから、時間がたてばまた膨らむから、ね?」それは本当のことだった。
彼女の手にあるメロンパンはゆっくりとだが、膨らんでいた。
そういう風に作られているからだ。
だが、彼女はどうしてかそれを知らなかった。
彼女を納得させるのはめちゃくちゃ時間がかかったのだった。
「グスンッ」彼女は鼻をすすりながら僕の手にしがみついてきた。
結局今日のおやつを上げることで交渉が成功した。
「はめられたね」マリナが横にいた彼に向かって行った。
「だな」彼も納得していた。
「え?」僕は彼らを見た。
彼らはにやりと笑った。
僕はきとんとした。
「ヤッタッ!」ホノカはひっそりと喜びを上げた。
「フェ?」一瞬理解ができなかったが、すぐにできた。
どうやら彼女はもう知っていたようだった。
「なんでこうなるんだ!」だが、約束は契約のようだ。
破りたくはなかった。
僕はしぶしぶと彼女におやつを渡したのだった。
「…」次の日はめちゃくちゃ暇だった。
特に行くところもないし、学校もない。
「暇だな…」僕はベッドに寝転がった。
ホノカはまだ寝ていた。
胸にはあのメロンパンを抱えていた。
「確か…メロパンとか言ってたような…」多分そういってた。
と思う。
「とりあえず散歩でもしてくるか」僕が立ち上がると、腕を誰かにつかまれた。
まあ、つかみ主はホノカだったのはもうわかってたけど。
「仕方ないか…」彼女は疲れていたのか、昨日は外に出た服のまま寝てしまった。
今考えれば、まだよかったと思う。
無理やり起こす必要もないからだ。
僕は彼女が持っていたメロパンを取り外し、ベッドに寝かせた。
それから着替えて彼女を背中に背負い、家を出ていった。
歩いているときも彼女は寝たっきりだった。起きる気配もしない。
すると、向こうからある人が現れた。
「あ、マリナ。どうしたんだ?こんな時に」彼女も暇だったようだ。
僕は彼女を見て少し考えることにした。
「ま、とりあえず回るか?」僕はホノカを背負いなおした。
やっぱり彼女は起きる気配さえしなかった。
「どうする?僕はとりあえず回るつもりだけど」
彼女は頷いた。ということは、ついて行くということだろう。
僕は歩き始めた。
「というか、どうしてホノカは寝てるの?」返す言葉がなかった。
「ま、寝てるからじゃない?」「いや、それはわかってるよ」僕たちは顔を見合わせて笑った。
「ん…」ホノカが動き出したのだった。
それを見て、僕たちは驚いた。
「「起きた…」」