無名小説スライム編(32)
「なるほど、そういうことがあったのか」ホノは喜んでいるというか感心していた。
「なんでそこは感心してるの!俺が返って来たんだから」それを聞き、ホノは首をかしげた。
「どうせ帰ってくるんだから、いいじゃない?」それに俺は素早く突っ込みを入れた。「お前は俺が何だと思ってる」
彼女は少し…というか5分ほど考えてから答えた。「まあ、言うといえば化け物スライム」「は!?」俺は彼女の声をかき消した。
「とりあえず、この体をゲットしたんだし、俺は自由だー!」俺はスライムから人間の体に変わって両手を空高く上げた。
「まあ、人間の姿にならないと自由じゃないというわけではないと思うんだけどね」確かにそうだ。
「だけどね~!スライムだったら追い回されるや追い回されるや、追い回されるんだよ!」その中には追い回される以外一つも入っていなかった。
まあ、事実だからだ。魔物であればずっと追い回されるだろう。できればこのまま一生人間で居たいほどだ。
「ま、もしもこれがアニメとか漫画だったらこういういいところでデカい魔物が現れる…」
その時、遠くから大きな音が聞こえてきた。音にしてきた方向を見てみると、そこには蜘蛛がいた。
「よね…って本当に出たし!」俺は暗闇狼に乗ると、雲にめがけて駆け出していった。
「捕食者でどうにかするか…」あの蜘蛛はうまそうだったので、捕食するつもりだったのだ。
の、はずだった。
「おい」捕食する数秒前に呼び止められた。
後ろを見てみると、そこには瘋癲がいた。
「こいつは衣服を作る重要な生き物だ。まさか~、食べようとしたわけじゃないよな?」
見てみると、雲の首には縄が巻かれていた。「ああ…そういうことね…」久しぶりにおいしそうな食事を食べれ層だったが、あきらめた。
確かに元人間しかここにはいない。さすがに裸で済ます奴はいないだろう。
まあ、ここにほとんどの時裸のスライムがいるけど。
「というか、スライム用の服って作れるのか?」訊いてみると、彼は頷いた。
「まあ作れるかといわれれば作れるが…そもそもスライムって服がいるのか?人間に変身しているときはわかるが…」
俺は瘋癲と一緒に考えた。だが、別にいらなさそうだったので作らせるのはやめた。
「ま、そういうことだ。それじゃあまた」瘋癲は蜘蛛を持っている人に向かって行った。
もう一度雲を見上げると、俺はホノを見た。「あれってさ…あの時俺が捕食した蜘蛛だよね…」確かあそこのボスだったような…
「そうですけど」ホノは頷いた。どうやらどこかからか、この蜘蛛をとってきたようだ。
「…」まじか… 俺は口に出さず、心の中で呟いた。
「まじかって、普通もっといいコメントつけろよ」後ろからかわいらしい声が聞こえてきた。
前に訊いたことがある声だ。どこかは覚えていないが、見るとすぐにわかった。
そこにいたのは多分世界で恐れられている生き物だった。
「よ♪」彼は暢気に浮かびながら手を振ってきた。
「竜だ!」「だから龍だって!」