見出し画像

私は多分、数秒間だけマネージャーのことを見直したと思う。
なぜかというと、今はマネージャーと口喧嘩をしていたからだ。
「誰が最高よ!やっぱり小説こせつのほうがよかった!」
『は?そんなわけないだろ!』
「もう知らない!」
私達は分かれると、プンプンその場を離れていった。
「あいつのことなんか知らない!」だが、その後はおかしなことばかりしか起こらなくなってしまった。
私が家に帰ると、一度滑った。その時はどうも思わなかったが、少しすれば何かがおかしいと思うはずだ。
なぜかというと、一時間の間で歩いていると3回こけたのだから。私はここまでおっちょこちょいではなかった。
「やっぱりやばかったかな…」その予感はしていた。マネージャーや小説こせつを敵に回してしまえば、やばいことしか起こらないと。
だが、そうしてしまったのは仕方がない。私はため息をつきながらベッドでゴロゴロとしていた。「やばかったかもね…」だが、巻き戻ることはもうできない。このまま過ごすしかないのだった。
「どうしようか…」そう考えることしかできなかった。
私がベッドでゴロゴロとしているところへある人物が現れた。
小説こせつでもマネージャーでもなかった。そこに立っていたのは…
私だった。「だ、誰?」勿論私だ。見れば普通にわかるし、とても馬鹿な質問だった。
だが、自分の目が信じられなかったのだった。私はじっとしたまま目だけをこっちに向けてきた。
その動きはぞっとするほどだった。「僕はあなた、本来の、あなた」だが、話し方も変わっていた。
「いやいや、私は自分のことを僕って言わないけど」だが、彼女は無表情のまま続けた。
「僕は本来のあなた、小説として書かれたあなたよ」彼女は無表情で自分のことを僕というし、あんたじゃなくてあなたといっていた。
変装して、ちょっと声を変えれば完全の別人だ。「…」私はもう情報が多すぎて頭がパンクしそうだった。
「あなたを乗っ取りに来た」その言葉を聞いたとたんに頭が治った。「ちょ!?」私は私の肩をつかんだ。
これだけは少し許しがたいことだった。「私を乗っ取るって…あんた、何をする気!?」
私はまだ無表情のままで答えた。「あなたは本来の小説をけなしている」私は固まった。
今までやってきたことを思い出した。マネージャーにめちゃくちゃ止められて、めちゃくちゃいらだっていたが、あれにはもしかすると理由があったのかもしれない。
本来のストーリーがそういう風にいかないという、理由が。
「あなたは僕が乗っ取らせてもらう。僕は本来の小説に戻すという使命を受けて生まれてきた。ある人物によって」
私は私をぎろりと見た。「ある人っていうのは誰のことよ」だが、それの答えをもらうことはなかった。
「さようなら」彼女がその言葉を終わらせると、私の下に暗闇が現れた。
私は抵抗できることなく、その中へと飲み込まれていった。
「奈津美~、晩御飯よー」遠くから声が聞こえてきた。
「はーい」私はそのまま家を出ていった。

「…」私は暗闇の中で浮かんでいた。
まるで水の中にいるかのようだった。
だが、行きはできる。
目を開けると、やはりそこは真っ暗だった。
だが、遠くに光が見えた。
それは私の家だった。
その中には小説版の私とお母さんがいた。
「お母さん!」私はもがいたが、その場から動けなかった。
「お母さん!そこにいるのは私じゃない!お願い!気づいて!」
だが、いくら叫んでもその声はお母さんに届かなかった。

ろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!