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彼は不気味な笑みを浮かべた。
「簡単に言えば脳が停止した」
私はそれを聞き、固まった。
「え?」彼はその反応を見て真剣なのかわからない顔になった。
「というかお前な!自分から飛び降りるって自殺しようと思ってるのかよ!」急に彼は大きな声を出した。
「自殺はしようと思ってないけど…」確かに考えてみれば、君にも止められたのに、飛び降りた。
これは自殺行為だといってもおかしくないだろう。
「まあ、これからお前はどうするんだ?」バンダイルスに訊かれて私は言葉に詰まった。
今はいったいどうなっているのかもわからないし、戻る方法もわからない。
「とりあえずついてこい」言葉に詰まっていると、彼は私の手を引いて歩き始めた。
抵抗しようともしたが、彼の手はまるでめちゃくちゃ大きな人だ。
普通のすらりとした人にしか見えないのに、腕がびくともしなかった。
私の抵抗で腕が動くことはなかったからだ。
強くつかんでいるわけでもなかった。なのに、外すことができなかった。
「どこに行くんですか?」私は怖いという気持ちを抑えて訊いてみた。
彼は前を向いたまま答えた。「お前の行くべきところだよ」それだけではわからなかったが、口を閉じておいた。
彼から何も話すなというようなオーラが感じ取れたからだ。
「ついたぞ」彼に言われて私は気づいた。さっきまでボーっと歩いていたのでその間何が起こったのかを覚えていない。
だが、目の前には扉があった。「ここを通ればお前の望みはかなう。だが、この扉を通ればすべてを忘れる」私はそれを聞き、ビクリとした。
「頭を打ったときから今までの記憶がすべて消えてしまう。それでもいいならここを通れ」私は数分考えてから答えを決めた。
私はドアノブをつかんだ。その姿を見て、どういう意味なのかは彼にもわかったようだった。
「それを選ぶか。それじゃあ、またいつか、また再開できると願っているよ」彼はくるりと振り返り、そのまま歩いていった。
私は彼にもう一言いいたかった。だが、それよりも前にドアノブが勝手に回り、ドアが開いた。
私はそのまま吸い込まれるように入っていった。

気が付くと、私はベッドに寝ていた。
「ここは…?」周りを見ると、そこは病院だった。
ああ、多分頭を打ったからなんだ…
私はジンジンする頭を撫でた。
結構いたかったからだ。
「あ!」ちょうど入ってきたのは君だった。
君は私に気づくと飛びついてきた。
今まで見たことないように君は泣いていた。
まるで幼い子供のようだ。
「別に1回頭を打ったぐらいで大げさだね」それを聞き、君は急に茫然と私を見てきた。
私は今言ったことを思い出した。別におかしなところはない。
「覚えてないの?」私は思い出そうとした。
地面に落ちる寸前までは覚えている。
別に、他にあったことはないと思う。
「何を?」私は君に訊いた。
その場は少しの間沈黙に落ちいた。
横を見てみると、そこには頭に包帯を巻いた女の子が寝そべっていた。
私と同じ時に頭を打ったのだろう。何かで。
『私は』
だが、君の言っているのとが全く理解できなかった。
『わからなかった』

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