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「それじゃあ僕はこれで…」岸田先輩はそのまま出ていこうとした。
「ちょっと待て!」星田先輩が大声で叫んだため、岸田先輩は足元を注意しなかった。
私は注意しようとはした。さっき、バナナがゴミ箱の中に貼らなかったということを。だが、少し遅かったようだ。
「フンギャッ!」彼はまた地面にずっこけてしまった。
そこまでは別によかった。だが、そこからおかしくなってしまったのだった。
「白だ」その声を聴き、私はびっくりした。
どういう意味かはすぐに分かり、私はその場から飛びのいた。
「変態!」それを聞き、彼は地面で笑い始めた。
「ご、ごめん。そういうところはあるんだなって」私はほおを膨らませた。
「私は何者だと思われてるんですか!」彼はまた笑いだし、それにつられて私も笑ってしまった。
やっぱり彼といれば面白うと、私は心の中で思った。

「あ~、づがれだ…」岸田先輩は屋上のフェンスにもたれかかってため息をついた。
私は過去で起こった彼の不運のことを考えて一応忠告しておいた。「もたれかかっていれば落ちるかもしれませんよ」
初めはそこまで本当には思わなかった。だが、忠告しておいてよかったと後で思った。
「あ」パキッと音が聞こえて私は彼の方向に振り向いた。
彼の手にはフェンスのかけらがあった。
「折れた」やはり彼は不運の持ち主だった。結構強い、不運の持ち主だと。多分ただ単におっちょこちょいなだけかもしれないけど。
彼は私の顔を見ると、口を尖らせた。「今、僕の文句を言ってたよな」私は首をぶんぶんと振った。まあ、本当だけど。
「まあ、いいけどさ」彼は違うところのフェンスにもたれかかると、そっちも折れた。だが、私がどのフェンスにもたれかかっても折れなかった。
「やっぱり僕、不運の持ち主なのかな」心の中では確実に同意したが、顔には出さなかった。
私は彼に手を差し出した。本来は手をつなぐために差し出した手だったが、先輩はわからなかったようだ。先輩は手の上でつかむ仕草をした。
「あれ?何もないけど」その場は少しおかしな雰囲気になってしまった。「と、とりあえず部活に戻らないと」私達はまた屋上から降りていった。

「センパーイ…」私は廊下でよろよろと岸田先輩のもとに駆け寄った。
少し元気がない。「どうしたんだ?そんな顔して」私はため息をついた。「この問題がわからないんです、教えてくれますか?」
私は彼に問題を見せた。「どれどれ、えっと……その…これはだな……ちょっと待ってくれ」彼はそのまま駆け出していった。
「まさか…」その時思った。「わからない…?」彼は今、高校3年だ。私が今していることは高校1年レベル、彼はもうやったはずだ。
少しすると、星田先輩が岸田先輩と表れた。「わからない問題があるって?どれどれ」星田先輩は細かく説明をしてくれた。
彼女の説明はとても分かりやすかった。どんどんわからなかったところがわかるようになっていった。
「ありがとうございます!」私は頭を深く下げた。「僕だってそこまで言われたことはないぞ…」岸田先輩は拗ねていた。
だが、星田先輩の一言により、その感所はどうにもできなくなってしまった。
「それじゃあこれ、説明できる?」彼女はさっき説明した問題を見せた。
もしもちゃんと聞いていればわかったものの、彼は聞いていなかったようだ。
「クッ…」彼は負けた仕草をした。

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