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創作大賞-使用禁止道具7
「こ、これは…」僕は目を丸くした。「僕たちは入ることを禁じられているみたいだ。七海なら入れるんじゃない?」
七海がその壁に手を置くと、すり抜けた。彼女はここにいる人と同じだということはこれでわかった。
「先に行っててよ、僕たちはあとから入るから」だが、彼女は言うことを訊かなかった。
「ダメ!みんな一緒に行くの!」だが、いくら駄々をこねても答えは一切変わらない。入れない。それが現実だ。
もしも誰かが助けに来ない限り。
「よう、お前たち」向こうから一人の男性が現れた。
彼の手からはまだ血が垂れている。
「お前たち、ここを通れないのか?まあそりゃそうか。個々の人間じゃないのだから。まあ、お前は個々の人間か」
彼は七海を見た。その次には少女のほうを見た。まだ名前は聞いていないことに気づいていなかったけど。
「お前には完全に負けたよ、今度は買ってやる」彼らが握手しているのを見ると、初見は仲間のように見えるが、腕にかかっている力を見れば握手で喧嘩をしているかのように見える。
「まあ、とりあえずお前たちを中に入れてやろう」彼は鍵らしきものを取り出すと、透明な壁に触れた。
すると、その場所だけ少し反対側が明るくなった気がする。「この壁は少し暗くしていてな、どこに穴ができているのかを調べるためにな。一応ここは開けておくが誰かに見つかって閉められても知らないからな。せいぜい苦しみを楽しんで遅れ」
彼は笑いながら去っていった。「本当にいいんだ…」僕たちは頭が真っ白になったままの脳で中に入った。
町は本当に平和だった。小さな町だったが、それでもみんなちゃんとした服を着て、食べて、寝て、衣食住を全て果たしていた。
「もしかしてあったとき、行ってきた言葉ってこういうことだったの?あの「不幸な人は不幸な生き方をして、運のある人は運の良い生活をする。」って言葉。個々のことを覚えていたから僕たちの町が不平和すぎるんじゃないのかって不満に思ったんじゃないの?」
彼女は少しの間黙っていたが、しまいには頷いた。「本当にそうかはわからないけど…あの時のことはほとんど覚えていないけど、あの時は何かを覚えていたのかもしれない」
「やっと君が誰なのかわかったよ」僕はほっとした。彼女はここに住んでいる人だったんだ。ここには彼女の家があるかもしれない。
彼女は笑っている顔だったが、目だけは違った。何かに起こっているような、泣いているような、苦しんでいるような、複雑な目だった。
もしかしたら心の中に何かを隠しているのかもしれない。
「とりあえず次は彼女の問題だ。誰か彼女にあの『リアルボタン』を上げたのか、見つけ出すよ」
七海と少女は頷いて町の中を歩き始めた。
「それと聞きたかったんだけど名前って何?」彼女は答えなかった。「お~い?」
もう一度聞いてみると、今度は答えてくれた。「ハアナ」彼女はその一言で終わらした。
とても気まずい空気になってしまったので、僕は思いついたことを二人に訊いてみた。
「ねえ、二人ってどんな食べ物が好き?」すると、二人とも「「メロンパン」」と答えた。
彼女たちはいったい何だと聞いてきた。「いや、二人とも何か険しい顔をしていたからほぐそうと思ってね」
彼女たちはそのことに気づくと、元の二人に戻った。
まあ、ハアナの元は知らないけど。
街中を歩いていても「おはよう」と優しい声がかかってきた。
毎回返事するのは大変だったが、個々の平和さがすぐにわかった。
「何かがおかしい…」七海は何かを疑問に思っていた。
こんないい街の何がおかしいのだろうか。
わからないけど、気にしなかった。
街中を歩いていると、ある二人が目に入った。
普通の家族に見えるが、なぜか七海に似ていた。
「ねえ…」僕は七海のほうを見た。だが、そこにはもう七海という人物はいなかった。
気付けば、僕の真後ろにいた。「どうしたんだ?彼らは七海の親に見えるけど」彼女は頷いた。
「確かに彼らは私の親よ」だけど、何か様子がおかしかった。「こんなにやさしい顔じゃなかったはずなんだけど…」
僕は彼女の言っている意味が分からなかった。親は親、普通にやさしくてもおかしないだろう。
「話してきたら?」だが、気づいたのは彼らが先だった。
「ナナミ!どこに行ったのかと思ったらここにいたのか、今まで5年間どこで何をしていたんだ?」
七海の親は七海に駆け寄った。だが、七海は僕の後ろに隠れたままだ。
「ほら、親なんだからハグぐらいするだろう、普通」
だが、彼女は首を振った。「この人たちは私の親じゃない。」僕は目を丸くした。「私の親はもっと厳しかった」
七海の親は一瞬目を吊り上げたがまたにっこりとした。「何を言っているのかわからないよ、僕たちはいつも優しいよ、ナナミは僕たちの大切な娘なんだから」
だが、彼女は首を振った。「違う違う違う!もしも本当にそうならこれは何!」彼女は耳の手前に垂れ下がっている長い髪をめくりあげた。
そこにはあざが残っていた。「二千百十三年、二月の四日、私は私の父親にたたかれたのよ」七海の親は驚いて後ろに下がった。
「そんなわけないだろう、僕は君をたたかないし、怒らない。何かを勘違いしているんじゃないのかな?」
僕はわかっていた。どう考えてもおかしいことは。僕も十分承知だ。この親は何かがおかしい。
「彼女は僕の彼女だから手を出さないでほしいね」僕は彼らの前に立ちはだかった。その前にはハアナが。
「彼らは私の恩人だから手を出さないで」彼らの笑みは今からすれば悪魔の笑みにしか見えない。
「ここはいったい何が起こったんだ…とりあえず逃げるよ!」僕たちは道のど真ん中を駆け出した。
後ろから追ってくる人たちはどんどん増えていった。「私に言い考えがある!」七海は小声で叫んだ。
「あそこまで行って」彼女が指さしていたところは入ってきたあの穴だった。
彼女はそれ以上何も言わなかったが、考えていることは少しだけ分かった気がする。
ハアナは先頭を走っていた。
彼女は僕たちの速度についてきてくれて、最後にはあの穴へと飛び込んだ。
運よくまだだれも見つけていないらしく、壁の反対側に転げ落ちた。
うしょろから負ってくる人は、一人一人通れば追ってくることなど簡単だろう。
だが、七海が考えたことは簡単だ。彼らは親切になるように脳をいじられている。
だから、『譲り合い』というものが現れる。
「どうぞどうぞ、」「いや、そちらがお先に」
彼らは譲り合いというものをしてしまい、いつまでたっても通り抜けてこなかった。
もしもこの壁がもっと大きかったらやばかったかもしれない。
だが、人がちょうど一人通れるほどだったので運がよかったと僕はほっとした。
そのまま逃げていくと、一瞬は彼らも優しさをなくした。
だが、お互いにぶつかるとまた譲り合いが始まった。
そのすきに僕たちは遠くへと逃げていた。
「危なかった~…」僕は腰を下ろしてため息をついた。
もう走れる気がしない。「とりあえず遠くまでは逃げれたみたいだ」もう木々で彼らは見えなくなっている。追ってくることはもうないだろう。
「とりあえず逃げるよ、ここから」僕たちがまた走り出そうとしたとき、地面に何かが見えた。
睡眠ガスだ! だが、その時にはもう遅かった。
睡眠ガスが爆発して、僕たちの周りにはガスが舞った。
「何…で…」目の前には僕たちを見つめる七海が残っていた。
いつもとは、違う、七海が。
「んン…」僕が気付くと、身動きが取れなかった。
周りを見てみると腕は両方電気のようなもので縛られていた。足もそうだ。
僕の横にはハアナがぐったりと眠っていた。
目の前には七海が立っていた。「七海!」
すると、声が聞こえてきた。「ハ、ハ、ハ。声をかけても無駄だ、彼女は私のは以下だからな」
ドアが開くと、知っている男が現れた。あの時、ハアナと争った男だ。
「なんであな…お前が!」暴れたが、電気らしいもので作られた鎖はびくともしなかった。
「無駄だ、その鎖は尋常の力では破れない。あきらめるんだな」彼がポケットの中に手を突っ込むと、バッジが現れた。
見たことがあるバッジだ。
すると、彼の姿がみるみると悪党にぴったりな姿に変わっていった。
その時思い出した。あのバッジは僕たちが警備員の姿に変装した時、使ったものだ。
「貴様!」力いっぱい鎖を引っ張ったが、引きちぎれることはなかった。
ちょうどその時、ハアナが起きた。「…ここはどこ!?」
彼女は今の状況を理解するまで4秒以上かかった。
「あんた、あの『リアルボタン』を渡してきた人!?」
彼女は暴れたが、なかなか外れなかった。
「じっとしていろ!」彼がボタンを押すと…
「キャ!」急に彼女が悲鳴を上げた。
「ハアナ!」男は悪魔のような笑みを浮かべた。
「このボタンを押せば一ボルトの電流が流れる。じっとしていな」
僕は歯を食いしばったが、どうにもできない。
「何が目的だ!」俺が怒りをたっぷりと含んだ質問をした。
彼はよくぞ訊いた、という表情で答えた。
「この世界を成句賦するためだ!この世界は私にふさわしい!私が支配すべき世界だ!だがここが邪魔だった!お前たちが邪魔だった!何もかもが邪魔だった!だから私は決めた」彼はにやりと笑った。
「この世界を破壊しようと」
ちょうどその時、向こうから警部が三人やってきた。
「誰だ!手を上げろ!」彼らは拳銃らしきものを男に向けたが、男は一切の戸惑いも見せずにポケットからピストルを取り出して三度、発砲した。
「グハ!」「ヴッ」「ギャ!」三人は地面に倒れ、彼らからは赤い血が流れ出してきた。
「ㇶッ!」僕の目の前が真っ暗になった。
チ…血だ…血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ血だ! あまりのショックのあまりに僕は気を失った。
「なんだ、それだけで気絶するとは、最近の人間どもは弱いな」すると、三回 バキ! と音が聞こえてきた。
「オマエナー…!」男は僕たちのほうを見てにやりと笑った。「まだましな奴はいたな」彼はハアナのほうに何度か発砲した。
「!」銃弾が銃弾の速さ、一ミリ秒もたっていなかっただろう。彼女は消えた。「どこに行った!?」
男は周りを見た。だが、見過ごしていた場所があった。「上だ」ハアナは上から男に突っ込み、彼の頭を地面に落とした。
「グハッ!」地面は砕け、一瞬男の目が白めになった。
その時、ナナミは部屋のど真ん中で突っ立っていた。周りで起こっていることはお構いなしだ。
「ナナミ!こいつを…」だが、男は七海に指示を出す時間などなかった。「敵はとらせてもらう」
彼女は仕舞いには壁を突き抜けた。「さようなら」男は壁を突き抜けて、100メートルの高さを落ちていった。
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