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俺は金に目がない。金のためなら何でもする。
神に毎日祈ったほどだ。無限に金を生み出せる力が欲しいと。
すると、ある日、小さな星が空から舞い降りてきた。体中が金でできていて、どう見ても高値で売れそうだった。
つかもうと手を伸ばしたが、ひらりと星はよけた。だが、逃げていくのではなく、逆に近づいてきた。
俺が伸ばした両手に触れ、そのまま消えた。
いったい何だったのかはわからなかったが、貴重な金儲けの機会を逃して腹が立っていた。
だが、家に帰り、食事をするためにスプーンを振れると夢かと思えることが起こった。スプーンが金に変わり、キラキラと光ったからだ。
フォークや皿を触ってみると、全てが金になった。これは高い値打ちで売れ、何でも金になるだろう。
俺は大喜びで何かもを触れ、金に変えてしまった。
勿論それは何万、何十万という値段がつけられ、俺は大儲けした。
だが、それでは気が済まなかった。こうなったらと思い、家じゅうを金に変えてしまった。
地面は少し滑るが、金のためならどうでもいい。
俺は満足していた。
周り全体が金に満ちていて、これで完璧な億万長者だ。
それでも足りなかったので庭も金に変えた。
全ての草は変わる前に刈っておいた。
もしも金になってしまえば刈れなくなるからだ。
これで庭の草を着る必要もなくなり、完璧な億万長者になった気分だった。
ちょうどそこへ、一人の少女が返ってきた。「パパー、ただいま~」彼女は今の状況に全く動揺していなかった。
勿論その理由はそれが普通だと彼女は思っているからだ。俺たちの家は大金持ちだと。
「今度は何をしたの~?こんな金の家にして」それで、少しは気になったようだ。
俺はうまくごまかして、それから数日の間は楽しく暮らした。
食べ物に触れることができなくなったが、金のためならこんな犠牲などなんてことない。
それから数日が立った。俺は金で作られた手袋をつけた。初めから金で作られているので指を動かすことができる。
だが、少し重いのは問題だった。だが、他のものを触るのと金のためならこれも気にしなかった。
また数週間が立ち、世界的に有名な大金持ちとして生き始めていた時、ある事件が起きた。
それは、金よりも大事なものをなくすということだった。
「ただいま~♪」娘が暢気に帰ってきた。
「ああ、お帰り。今日は何かあったか?」俺が訊くと、彼女は首を振った。
いつものようにだ。だが、何かがおかしいのはわかっていた。
といってもそれを俺がどうにかできるというものでもなかった。
なので、俺はとりあえずそのままそっとしておいた。
だが、ずっと気にしないわけにはいかなかった。
自分の娘も愛している。だから、彼女に何かあるとすれば気になってしかったない。
「どうして教えてくれない」俺が訊いたが、彼女は何でもないと身を引いていった。
どうしても気になったので、彼女の肩をつかんだ。「どうして教えてくれな…い…ん………だ……」目の前で起こったことが信じられなかった。
目の前で、娘がみるみると金に変わっていった。「お父さ…」彼女が言い終わる前に金として変わった。
「…」俺は跪き、うつむいた。「どうして…こんなことに…」その時から、俺は毎日のように手袋をつけるようになった。
だんだんと金に興味をなくし、大量の金を寄付し始めた。
それから数ヶ月が経った。彼はお金をほとんど寄付して、向こうからは結構親しまれていた。
だが、それだけでは彼の悲しみを覆いかぶせなかった。
「やっとわかったね」ある日、よろよろと家に帰っていた時、上からかわいらしい声が聞こえてきた。
もう上を見る力などなかった。腕がもげそうで、最近は車いすに座っている。今のところは金に変えていないが、いつ変わるかはわかったもんじゃない。
「お金はすべてじゃないんだよ、もっと大事なものはたくさんあるんだから」すると、上から前に出会った星が現れた。
こうなったのはすべてあの星が悪い。その瞬間、俺の心には怒りのようなものが心にともった。
俺は前のようにつかみかかろうとすると、星はまた同じようにひらりとよけた。
「今度からはちゃんと考えるようにね」星が俺の肩に触れると、何かが消えているのを感じ取った。
また恐る恐ると車いすを素手で触ってみると、もう金にならなかった。
いつも通りに戻ったのだ。だが、その時にはもう妹がいなかった。
車いすに乗ったままとぼとぼと家に帰ると、そこには信じられない人物がいた。
「あ、お父さん」そこにいた人物はにっこりと笑っていた。
その家も、庭も、すべて元通りに戻っていた。
その時、俺は思った。人生は金だけで楽しめるわけではないのだと。

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📖上鍵です『|上鍵《じょうかぎ》と呼んで』小説家🛜lvl目標1000フォロワー・わがままだけど欲しい