普通に生きたい僕であった(35)
「そこにいるのは分かっているわよ、出てきなさい…」彼女は後ろも見ずに片手をあげた。「わ!」誰一人いないはずだった場所から声が聞こえてきた。少しするとその人物は姿を現した。「あなた、私をずっと追っていたわよね」彼女は目を光らせた。「そ、そんなわけないだろ」その人物は12歳ほどの少年だった。
「金成(かなり)、どうして私を追っていたの…?」彼女は彼の名を知っていた。「そ、それは…」彼は目をそらした。「私の力が欲しいというのなら私は引き受けない、こんな悪魔のような力は初めから持たなかった方がよかったわ」彼女は自分の手を眺めた。「悪魔のような力って…そんなわけないだろ!」僕は思わず声を吐き出してしまった。
「これでもそういえるの?」彼女は手の上に映像を映し出した。それは多分彼女の過去だ。
お前なんか出ていけ! 男性が女性をかばってこっちを見ていた。
お前は悪魔だ!呪われている!今すぐ消えろ! 男性は思いっきりドアを閉めて鍵をかけた。
いくらドアをたたいても応答は一切帰ってこなかった。
「この力の所為で私は居場所をなくしたのよ。これでこの力が悪魔じゃないというのなら何?」僕は答えることができなかった。「私はこの力をずっと恨み続けるわ」彼女はそういうと歩いて行こうとした。
《だれだ、超能力を悪魔の力といった者は》突然空中から心臓まで届く声が聞こえてきた。僕たちは本能的に膝をついた。《いったい誰だ》目の前にはバンダイルスが経っていた。しかし、見ただけで分かる。怒りにくるっていて、前に見た時より迫力が強い。僕たちは身動きをとれなかった。僕が感じ取ることができたのは僕の力、超能力が恐怖を感じ、震えていることだ。
「バ、バンダイルス…様…いったいどのような御用でここに…」彼女は言葉を選びながら話していた。彼女も同じだった。動けず、額には複数の汗を見せていた。《誰だ…誰だ…》バンダイルスは僕たちのことなどまるで気づいていないかのように動いていた。
「何かがおかしい」金成は普通に立っていた。「どうして普通に立つことができるんだ…」僕は意味が分からなかった。「僕は超能力を持っていないんだよ。だってまだ身に着けていないから」彼は照れくさく言った。「でも何かがおかしいってどういうこと?」僕は一瞬のスキを使って彼を見た。「いつもなら誰かに呼ばれるとすぐに反応するはずなんだ。でも今は彼女に声をかけられても反応しない。絶対何かがおかしいよ」「それは普通に聞こえていないだけなんじゃ?結構怒っているように見えるし」しかし、彼はその考えも粉々にした。「いや、そんなことは絶対にない。バンダイルス様は神だ。神が聞こえていないことなどないのだ。ということは考えれることはたった一つ、バンダイルス様は…」彼は違う意味で額に汗を流していた。
もしかすると呪われているのかもしれない。