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『お前は…癌にかかってから1秒で死んだ』仏様は寒い目で彼を見た。「そうか…そうか…」彼はそのまま駆け出して行った。『願い事もかなえずに…』だが、賽銭箱の中に戻っていった。
忍座はそのまま走っていると壁にぶつかりそうになった。よけることは簡単だ。だが、試してみたいことがあった。突っ込むことだ。
突っ込んでみるとぶつかり後ろに吹っ飛んだ。だが、痛みを感じない。かすり傷すら見当たらない。猛スピードで走っていたはずだ。ということはこの体は痛みがないということだ。
天国に行こうかとも思った。だが、行き方を知らない。見つけようとしたが全く分からなかった。いったいどうすればいいんだ。
すると、いい考えをした。高層ビルの上に行くと思いっきりジャンプした。もう死んでいるのでもちろん地面は壊れなかった。だが、雲を突き抜けて空高く飛んでいった。まるで重力を壊しているかのようだ。仕舞いには宇宙まで行った。別に息をしなくても苦しくはなかった。ゆっくりと浮かんでいると光が現れた。目がくらむ。彼は目を閉じた。
目を開けた時には光が照らしてきた。さっきまでは黒い空間の続いた世界にいたが、今は地面が真っ白い雲で空が存在する場所に立っていた。「さあ、こちらへ」一人の男性が彼を手招きした。白い服を着ていて、頭の上には光る円が描かれていた。肌はとてもきれいあったが何年も日に当たっていないかのように白かった。
ついていくと雲の壁があった。だが、男はそこを突き抜けていった。その先には普通の世界があった。だが、一番目に入ったのはその平和さだ。「ここは夢なのだろうか」だが、夢には思えなかった。現実にも思えなかった。ここは現実じゃないのかと思った。だが、現実だった。いくら目をこすっても同じ光景だった。「ここはどこだ」彼に訊いたが返事は帰ってこない。
街中はきれいだった。ひとつ残らず建物が毎日磨かれているようだ。一番驚いたことは壁を壊しても勝手に修正されるということだ。まるで天国のような場所だと思った。
ちょうどその時思った。ここは天国じゃないのかと。考えてみればここは天のような場所だと思う。もしかすると…と思って角まで走っていくと壁があった。それ以上は進めないようだ。
雲の壁だった。さっきまでは簡単に通れたはずの壁だ。一度入ると出ることが不可のようだ。仕方なく街中を探検しまわった。といってもここは知っている場所だった。自分の住んでいた場所だ。ついさっきまでいたはずだったが懐かしく感じてしまった。町は静かだった。誰一人気配がしなかった。「3か月後に迎えに参ります」後ろから声がしてきた。パッと後ろを見ても誰一人いなかった。「3か月後…ね…」
その時心の中で一つだけが現れた。「3か月間をくつろぐ」なぜそんなことを考えたのかはわからない。3か月後には自分じゃなくなる気がしていたからかもしれない。だが、街中に走っていくとありったけなことをしまくった。「3か月…か…」忍座はありったけ遊びまくったが、地球に戻りたかった。忍差や金木などにまた会いたかった。だが、もうそんなことはできなかった。なぜかというと彼は…
もう死んだのだから