拾った女の子は常識知らず‐エアホッケー
「というか…」僕はホノカを見た。
彼女はぐったりと背中にのしかかったままだった。
「また寝てるし…」僕はため息をついた。
そのまま歩いていると、ホノカはぼそぼそと何かを言っていた。
「お兄…」自分のことを言っているのか、違う誰かのことを言っているのかがわからなかった。
「ホノカっていったい何を考えているのやら…」彼女もため息をついた。
僕たちはお互いを見て笑った。
「まあ、とりあえずどこに行く?」そこは全く考えていなかったので、どうにかしないといけなかった。
僕は立ち上がり、マリナの手を引いてあるところに行った。
彼女は驚いていたが、おとなしくついてきた。
「やっぱり行くとすれば…」目の前からはにぎやかな音楽がめちゃくちゃ流れてきた。
「ゲーセンでしょ!」背中にホノカがいたが、彼女はこんな売るさの中でもすやすやと寝ていた。
「本当にどこまで寝れるんだよ…」僕は彼女を背負ったまま、片手でやることにした。
遊ぶゲームはエアホッケーだ。
だが、彼女は僕が片手を放すと起きた。びっくりしたので、彼女を落としそうになった。
彼女はそのまま落ちたが、頭からではなく、足から落ちて見事に着地した。
尻から落ちたのは予想外だったが、ホノカではなく僕だったのだ。
「いたタタ…」僕は立ち上がり、コインを入れるとゲームを始めた。
「負けないよ!」「こっちこそ!」僕はにらみ合い、マレットを手に取った。
パックを置くと、僕がまずは打った。
「まだまだ!」飛んできたパックを打ち返した。
飛んできたのを僕が打ち、壁に当たり、反対側に行き、それをマリナが打つ。
それがずっと続いていた。ホノカはずっと興味深そうに見ていた。
「私も…やりたい」ホノカは僕に言ってきた。
「そうなの?」僕が少し気をそらすと、マリナはにやりと笑った。
「隙あり!」彼女はパックを思いっきり打つと、見事に優勝した。
今度はホノカが僕の立場をとった。
「ルールを説明しようか?」だが、彼女は首を振った。
「多分わかる」さっき見ていたことでルールを分かったのだろうか。
だが、今まであんな環境にいたホノカがわかるのかが気になった。
「昔にやったことがあると思う」
急に彼女の目つきが変わった。まるで、真剣のようだ。
「容赦はしないよ!」マリナもにやりと笑った。
楽しそうだった。
彼女たちはずっとやり続けていた。
2人ともずっと続けていたが、確実にわかることが一つあった。
「押されてる…」ホノカは確実にマリナを押していた。
マリナの表情には焦りが見えた。
一方、ホノカの顔には一切の焦りが見えなかった。
まるで裏技などを知っているかのようだった。
結局ホノカが勝った。だが、マリナはまだ負けていなかったようだ。
「もう一試合!」だが、それはある者で止められた。
「今の、すごかった。一試合だけしてくれ」
一人の男が現れた。今までで見たこともないが、強そうだ。
間違えた方向に話が進めば、やばいだろう。
「不審者には警戒すべき」ホノカは目を細めた。
「あらら、大人みたいだ。いいだろう。それなら、負けないとこれを賭けよう」彼は千円札を一つ差し出した。
「俺は楽しむためにここに来た。千円なんぞ、使ってもいいさ。もちろんお前は何も出さなくていい」
これで、試合は成立したのだった。