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「あのぬいぐるみを買っていいですか?」
「「へ?」」私と店員さんは同じことを考えていたらしく、声が漏れ出てきた。
岸田先輩は私たちを見てきょとんとした。「え?何か変なことでも言った?」私は首を横に振った。
私達は先輩をみて頷いた。別に変なことを言ったわけではないが、言い方がおかしかったと思う。
私達は先輩が指さしたぬいぐるみを買うと、店を出ていった。
「本当に大丈夫だったの?何も買わないで」先輩は私を心配そうに見てきた。
私は勿論大丈夫だといった。だが、安心させるためではない。また今度にしようと思った理由は違うのだった。
ただ、先輩のあんなに焦った表情を見るのが楽しかったからだ。私はルンルンと上機嫌だった。
それを見てなのか、先輩も穏やかな笑みで見守ってきた。
「何ですか?」あまりにもじろじろ見られたので少し恥ずかしくなった。
「あ、いや、何でもない」先輩はパッと目をそらした。
だが、別に顔色が変わってもいなかった。気付いていないようだ。
「それで、これからどうするの?」先輩に訊かれて私は考えた。
特に用事がないからだ。どこに行くこともないし。
「多分家でゴロゴロしてます」勿論本当だ。
「いいのなら、家、行く」急に足りない情報で言われたので私は動揺した。
「どういうことですか?」それを聞いて先輩は笑い出した。
「いや、長くていうのが面倒だっただけ。本当に言いたかったことは…」どうしてかはわからないが、真が開いていた。
「えっと…確か…その…」どうやらこの短期間で忘れてしまったようだった。
「私の家に来る話だったのでは?」先輩は拳を手に当てた。「ああ、そうだった」
その後に何かを考えていた。何かが違うような…というような顔に見えたが、私は気にしなかった。
恥ずかしかったのは事実だ。そこは認める。だけど、私はうきうきしていたのだった。
先輩が家に来るのだ、とてもうれしいことだった。
だが、問題はその手前にあった。親だ。

「お邪魔します…」結局重いつっく前に家まで来てしまった。
私は焦った。親に一体ようやって説明すればいいのかがわからなかったからだ。
すると、親が現れた。
「誰だ?その子は」お父さんが不思議そうにいた。
「その…」私はどう説明すればいいのかわからなくて戸惑っているところへ、お母さんの声がした。
「まさか、彼氏なの!?」私は慌てて首を振ったが、親の視界には入らなかったようだ。
「そうか、もうそんな年なのか」お父さんは完全に彼氏説を信用してしまった。
「えっと…」先輩も否定しようとしたが、親がめんどくさかった。
「それなら早く言ってくれればよかったのに」お母さんが私の手を引いた。
お父さんは先輩の腕を引いて私の部屋へ一直線。
私はそこにちょこんと座らされ、先輩はその反対側に座らされた。
「それじゃあ、お茶を持ってくるわね」お母さんとお父さんはその場を立ち去った。
親にどうやって説明すればいいのだろうかと悩んでいたけど、こうなるとは想像していなかった。
出ていったのは私のためだろうけど、逆高価だった。
私はその場に座り込んでどうすることもできなかった。
「…」私達はそこに座り込んで黙ったままだった。
「…どういう状況?」先輩が告げた。
「さ、さぁ…」私もため息をついた。
お母さんとお父さんめー! 私は空に向かって心の中で叫んだ。

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