無名小説スライム編(26)
「おはよう!」俺はもぞもぞとベッドからはい出た。
あれから数日が立ち、村の人たちからも知られた。
有名になった理由は一つだ。かつて日本人だった人がスライムに転生したということだ。
そこまで気にしなかったが、いつまでも気にしないことはできそうになかった。
毎回外に出ると皆にじろじろと見られる。
いつ研究実験に使われてもおかしくなさそうだ。
俺は少しの間、この村から出てこの世界を探検してみたかった。
その間にほかの転生者にも会えるかもしれないからだ。
俺は暗闇狼とホノと一緒に村から立ち去った。
だが、少し行ってからマップを見てみると、近くに巨大な丸があった。
猛獣でも俺たちを追っているのかと思っていたが、どうやらあの狼だった。
「なんでついてきてるんだ?」俺は狼を見た。「い、いや…その…な、暇だったもので」
俺はため息をついてから質問したかったことを訊いた。「それで、名前はあるのか?」
すると、狼は胸を張って答えた。「勿論だ、死狼と呼んでくれ」俺が考えたのは
『死(ル)』ではなく、『汁』だった。「汁狼?」死狼は素早く修正した。「死狼だ!」
死狼は結局そのまま俺たちについてきた。
だが、確かに強さは本当だった。
どんな敵が現れても一撃で倒していた。
その後死狼も倒れていたが。
少し進むと俺はまた訊いてみた。「誰がその名前を付けたんだ?」
あまりにも急な質問だったのだろう。死狼はきょとんと俺をお見下ろした。
「お前の名前だよ、汁狼っていう」死狼はきっぱりと修正してから答えた。
「数百年前、…」俺はその一言目で突っ込んでしまった。「数百!?ってか今までで何年生きてきたの!?」
彼は少しの間考えてから答えた。「大体5万年ほどだ」俺は死狼がここまで大きかった理由が少しわかった気がした。
そのまま歩き出すことにした。
少し進むと1匹のアリが歩いてきた。転生前なら気付きもしなかっただろうが、このアリは気付かないほうがおかしい。俺の10倍はあったからだ。
だが、特に俺たちのことを気にしている風ではなかったので掘っておくつもりだった。
だが、死狼は少し違う考えだったようだ。ウルフもそうだ。大好物なのか、見たとたんに飛びついた。
俺とホノはゆっくりと昼飯にされていく何もできないアリを眺めていた。「なんかかわいそうだね…」俺がホノに問いかけると同意したようだ。
俺はの話だが、どうにもすることはできなかった。
仕舞いには何も残らず、折れた木がアリの形をしていただけだった。
「ハハハ…」俺はただただ、苦笑いをするしかなかった。
とりあえず一件落着ということでそのまま進み始めた。
探検といえば不思議なことがたくさん起こるというのが普通に考えたことだが、今回はどうやらはずれのようだ。
何も起こらなかったからだ。普通に歩き回り、時々現れる魔物を倒すだけだった。
どうやら暗闇狼と死狼は満足にしていたが。
俺は疲れ果てて仕舞いには暗闇狼の背中でペッちゃんこになっていた。
帰るわけには行けないしこれからいったいどうすればいいのか、嫌な予感しかしなかった。
それか、ただつまらない日々になるだけかもしれないが。