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「あいつー」僕は歯をきしませていた。
嫌なところだけが聞こえてきたからだ。
彼女の言っていたどうでもいいところは一切聞こえなかったのに、訊きたくないところはめちゃくちゃはっきりと聞こえたのだった。
「この耳めー!」僕は見えない耳を恨んだ。
だが、いくら恨んでも耳はひるまない。
まずひるむということができないからだ。
「一生恨んでやる!」僕は空に向かって思いっきり叫んだ。

数分後…
「おいしー!」僕はメロンパンのころころとしたところをおいしそうに食べていた。
このメロンパンはほっぺたがとろけそうなほどおいしかった。
「やっぱりメロンパンは最高だね~」めちゃくちゃ平和だった。
そこへ、アラームが響いてきた。
自分の部屋からだ。
僕はあることを思い出した。
「今日は約束の時間だ!」思い出したのだった。
今日はマリナと買い物に行く予定だったのだ。
彼女を許しているわけでもないが、約束を破るのは好きじゃない。
僕は仕方なく、アラームを止めて外に出ていった。
「やっぱり耳はいいものだな~」僕はさっきまで考えていたことを忘れてしまった。
多分、完全にだと思う。完全に。
「いるのかな…」少し不安だったが、あとりあえず行くことにした。
約束は破るわけにはいかなかったからだ。
だが、さっきから、後ろから気配を感じていた。
「そこにいるのは分かってるよ」僕についてくる人は一人しかいないはずだ。
「ホノカ」ただの良そうだったが、その予想は当たっていた。
電信柱からおそるおそるとホノカが現れたのだった。
「…」彼女は顔を半分赤くして半分青くして、恐る恐ると表れた。
僕は首をかしげた。別に隠れる必要などないからだ。
「ホノカも別についてきていいんだよ?」すると、ホノカが僕に飛びついてきた。
まるで親を見つけた子犬だった。彼女はルンルンと、うきうきとしていた。
「そこまでくっつかなくても…」僕は軽くため息をついた。
だが、心の底ではうれしかったのかもしれない。
「♪♪♪」彼女はさっきからずっとノリノリで鼻歌を歌っていた。
「一体どこで覚えたんだ?その鼻歌」そういわれ、彼女は首をかしげた。
「覚えていません。でも、昔に訊いたことがある気がして…」彼女は覚えていないということだ。
僕は少しだけ考えた。そして、多分わかったと思う。彼女の前世だということを。
だが、彼女に伝えることはなかった。彼女は多分、その情報を整理しきれずに気絶するだろうと思ったからだ。
僕は待ち合わせば、学校の近くまで来た。
後は曲がり角を曲がれば待ち合わせばだ。
そこを曲がると、僕は目を光らせた。
そこにはいたのだった。しかも、えらい服を整えているように見えた。
気のせいなのかもしれない。自分がファッションについての知識レベル0なので、わからないと思う。
だが、どうしてかわかる。その理由は多分、
勘だ。
彼女は僕に気づくと茫然と立ちすくんだ。
僕も同じことをしていた。
それから数分が立った。
「「本当に来た」」僕たちはおんなじことを言って、少し笑った。
多分、仲直りできたと思う。
「来てくれるとは思わなかった」マリナは少し顔を赤くしてつぶやいた。
「僕も。というか顔を赤くするなんて、マリナもやっぱり女の子だな」そうからかうと、彼女は顔をかッと赤くして追いかけてきた。
「待てー!」だが、僕は笑っていた。
多分、これがいつも通りなのだろうと思ったからだ。

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📖上鍵です『|上鍵《じょうかぎ》と呼んで』小説家🛜lvl目標1000フォロワー・わがままだけど欲しい