シャドウキラー(36)
「さすがだ、それなら私に追いついてみろ」ボスは彼の肩を軽くたたくと消えた。「「了解」」2人は猛スピードである方向へ走っていった。「?」ほかの333番、666番とデリルガは首をかしげた。彼たちからは真反対の方向へ走っていったようにしか見えなかったのだ。「あれは偽なの」近くで少女が声を出した。「え?」そこには一人の少女が立っていた。「!?」ほかの4人には彼女が来ることを予測できなかった。「彼は向こうに行くと思わせた、それだけ」彼女の声はまるで風のように透き通っていた。彼女はこちらに歩いてきた。やはり音は立てないし、気配もしない。まるでで幻覚を見ているかのようだ。
「どういうこと?」333番が一番最初に口を出した。「あの2人は彼と同じ場所で同じように訓練された。だから彼の考えていることはわかるの」彼女は2人が走っていった方向を向いた。
「そろそろ帰ってくることだわ」彼女がそう言い、少し横にずれると猛烈な風が起き、3人が通りかかった。それは一瞬のことでもあった。「いったいどうやって…」666番は真っ青になっていた。彼は自分が気づけなかったことに悔しがっているのか、彼女のことが不気味に思っているのかはわからない。しかし、驚いていることは確実だった。「簡単よ、彼たちの足音がこっちへ近づいていたから」彼女は3キロ先だといった。「さ、3キロ先!?」デリルガは声を張り上げた。「まさかわからないの?羽成(はなり)さん」3人は周りを見た。羽成という人はいないからだ。「あなたのことですよ」彼女は666番を指さした。「え?」彼は自分の手を見た。「僕には名前がない」彼はきっぱりと宣言した。「いいえ、名前は存在します。羽賀羽成、あなたの親がなずけた名です」彼女は666番をじっと眺めた。「そんなはずは…僕には親なんているわけがない」彼はなかなか受け入れなかった。
「いいえ、あなたには親がいます。いなければあなたはこの世にいません。あなたは母親からできました。ほかにどうやって生まれる方法があるというのですか?」それに666番は答えることができなかった。
彼女は666番の目をまっすぐに見た。「あなたは親がいます。それは何が起きたとしても事実です」彼女の目は一切うそをついていなかった。「…」666番はそのまま黙り込んでしまった。「フー、それよりまた来てるよ、まあ10キロ先だけど」デリルガは空中を見た。「は???」333番は目を丸くした。彼女もだ。どうやら彼女はまだがついていないらしい。「あと10秒でくるぞ」デリルガがそう言ってから10秒後、3人が空中から落ちてきた。「ほら」まだ2人はボスを追っていた。終わりにはここら辺が完全に壊れているかもしれないと333番は思った。「僕に…親がいるのか…?」666番の目は震えていた。興奮しているようにも絶望しているようにも見えた。彼女はきっぱりと答えた。「はい、親はいます」