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とりあえずソウルに頼んでスライムの姿に戻してもらった。
まだ自分で戻る方法はわからないので、その時までは毎回頼む必要があるだろう。
「光だ~!」一時間ほどしか洞窟の中にはいなかったのに、俺は太陽を何年も見ていなかったかのような気分だった。
「スライムは光を好みますからね」物知りな死狼シルフが教えてくれた。
物知りだったということはたった今知った。
「それで、これからどうするか?」俺はとりあえず村に帰りたかった。
「村に帰りましょうか」俺たちはとことこと村に向かって帰った。
村に戻ったときはもう2日ほどたっていた。
「ただいま、さっそくのことだけど、どうにか服を作れないか?」瘋癲フウテンに頼んでみると、彼はある家に入っていった。
それから1分もたっていないだろう。瘋癲フウテンが倉庫の中から現れた。「!?」彼の手には服が合った。
「一応町の人達が使っているものですけど、使ってください」俺は人間フォームに変えてもらうと、着替えてみた。
どうやら違う生き物が乗っ取ったからなのか、男性女性の性別がこの体から消えていた。
「はー、女だったらよかったのにな…」俺はため息をしつつ、着ていた。
完璧に着てみると、普通のニートに見えた。「これは…」少し白すぎたので瘋癲フウテンを見た。
「はい、それは誰かさんが倒したというデントスライムから入手していました」彼は俺をじろりと見てきた。
俺は少し目をそらすと、逃げ出していった。人間の足はスライムよりも確実に早かった。
だが、スライムが坂を転がればもっと早くなれるだろう。
「スライムが坂をって…」瘋癲フウテンがそのことを想像していた。
俺が坂を転げ落ちながら悲鳴を上げているというところを。
俺は慌ててその想像を吹き消した。
「と、とりあえず、人間の体をゲットできたんだからいいことか」俺たちがワイワイと話しているところに数人の人が現れた。
俺はさっと物陰に隠れた。いやな予感がしたからだ。
だが、瘋癲フウテンはなぜか普通ににこにこ立っていた。
「あら、誰かしら?見たことないわね」女性の声が聞こえてきた。
多分、俺が少しでも顔を影から出せば見つかるだろう。
「僕の名前は瘋癲フウテンという。ある人に名前を付けてもらった」その声を聴いた後には女性の焦る声が聞こえてきた。
「ま、まさかあなただとはね…じゃなくてわたくしはもちろん知っていましたわよ!」俺はリスクもとってそろそろと顔を出した。
「あら、やっと出ましたわね!不審者!」その声で顔を引っ込んだのが正解だった。
当たらなかったから運がいいのかわからないが、槍が飛んできた。
「ッ!」俺は口から出さずに悲鳴を出した。
「あら、よけられるとは、さすがだわね」足音がだんだんと近づいてくる。
多分これはああいうやつだ。説明できる前に殺されるやつ。
俺は戦うことができなかった。今は攻撃能力だとしても捕食者と毒しか使えない。装備をつけて武器を持っている人と何て戦えるわけがない。
「助けてー!」今度は本当に悲鳴を上げながら逃げ出した。
「待ちなさーい!」追ってくるが、俺は心の中で『待てと言われて待つ奴がどこにいるんだよ!』と突っ込みを入れた。
だが、一応逃げることを選んだ。
「とにかく見失うまで逃げるか」一瞬だけ冷静に考えたが、とりあえず逃げることに集中した。
逃げろー!

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📖上鍵です『|上鍵《じょうかぎ》と呼んで』小説家🛜lvl目標1000フォロワー・わがままだけど欲しい