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「グヘ…」僕は食事の席に着くとテーブルに倒れこんだ。
それは王女として、してはいけないことだろう。
「こら、やめなさい」だが、僕は顔を上げることができなかった。
「夢が悪い…」僕はブツブツとつぶやいた。「今、何と言ったのだ?」お父さんに訊かれて僕は口を閉じた。
お父さんの目がめちゃくちゃ鋭かったからだ。鋭いというか怖かった。それだけだ。
「なんでもありません…」お父さんは言葉遣いをめちゃくちゃ気にする。
時々はウザいと思ったことだってあるが、お父さんなのはお父さんだ。逆らえない。
前世の記憶があっても十何年も一緒に暮らしていれば家族も同然だ。
食事を見て顔を真っ青にしたまま恐る恐ると食べてからほっぺたがとろけそうになりながらも食べ終わると外に出ていった。
外から見て改めて思ったのだ。
今までは路地でずっと過ごして、毎日今日を生きるのに必死だった。
だから、そこら辺を見る暇などなかった。

綺麗だ。

僕は改めて思う。
この世界はここまで綺麗だったなんて。
「どうしたの?」真横に妹が現れた。
あまりにも脅かされすぎてしまい、彼女が急に現れるのは慣れてしまった。
「いや、綺麗だなって思って」彼女も村を見下ろして頷いた。
ちょうどその時、僕は気づいた。
遠くで起こっていた出来事に。
僕の魔法を使うと、遠くのものでも軽々と見えてしまう。
見えていなくても視界にさえあれば操れるからだ。
たとえ、その操るものが光だとしても。
そこには男の人たちがいた。
彼らは強そうだった。
悪者にも見えた。
そこには一人、違う感じの男性がいた。
ひょろひょろで弱そうだった。
だが、どうしてか感じ取ることができた。
これはやばいのだと。
「助けないと!」私は飛び上がると、その現場に向かって飛んでいった。
そこに着くころには、一人の悪者が殴りかかろうとしていたところだった。
男性は避ける仕草もしなかった。
「待てー!」私が目でとらえると、男の動きが止まり、宙に浮きあがった。
「な、なんだ!?」仲間も驚いているみたいだったが、気にしなかった。
僕は仲間もすべてつまみ上げ、そのままほおっておいた。
「ありがとう、助かったよ…」彼にお礼を言われたが、僕は心の中で思った。
助けようと思ったのはこいつらなんだけどな…そして、悪者を見た。
多分このまま掘っておけばやばいことになっていたと思う。
「お礼に、手下になろうか?」僕は一瞬で断った。
「失礼しますが、私は一人で十分です」彼はもうわかっているようだった。
私が誰なのかを。それでもアプローチしてくるというのは少し驚きのことだった。
私が女王だと知った普通の人ならどうしてか逃げていったからだ。
「貴方、何者?」私は訊いた。私は少しだけ警戒した。
彼は「ほう?」というように眉を上げてから答えた。
「わたくしは名乗る物でありません」礼儀正しかった。
殺気の一言が嘘だったかのようだ。
嫌な予感がしてその場を立ち去った。
その後思い知ったのだが、その時感じた嫌な予感は本当だったらしい。
彼はその日から、どこにいてもどうしてかついてきていた。
たとえダンジョンの20階にいたとしてもだ。
普通ならダンジョンの10回に行けてすごいということなのに、彼はどうしてかついてきていた。
私はモンスターを全て粉々にできるが、彼は何もしていない。
「もうわかった!手下にすればいいんでしょ!」僕は彼の推しに負けてしまったのだった。

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