シャドウキラー(21)
「神田神木(かんだこうぎ)…神田神木…神田神木…聞いたことない名前だわね」333番が言うと、「そりゃあシャドウキラーの名前は誰も知らない、彼が知っているのは偽物の名前かもしれないし数週間前に入ったばかりじゃないか、俺らは」彼が言っていることは真実だった。確かにここにいた人の名前はすべて聞いたことがない。ボスの名前さえ。デリルガはただ自分の名前で呼んでほしいから本命を言っただけだ。333番の本名は誰もわからないというか知らないが、彼女が333番と呼んでほしいといっているので皆はそう呼んでいる。
「それで、どうするんだ?」デリルガは333番を見た。「何が?」ふと333番はデリルガを見て言った。「666番から場所、聞いてないぞ?」そういえばそうだった。本名かも分からない名前は分かったものの、彼がどこに住んでいるのかは教えてもらっていなかった。「んで、待つか?666番が起きるまで」2人は待つことしかできなかったが、なかなか起きないので何か起こす方法はないかと考えた。2人は報酬を1番最初に見つけるには彼が必要だからだ。まあ元仲間なら言わせるのも大変だろうけど、そのころの2人には報酬しかなかった。
「そうだ」デリルガは少しおかしな顔をしながら走り始めた。「?」それを333番はぼーっと見ていた。
「戻ったどー!」デリルガがレジ袋を手にして突っ走ってきた。「それは何?」333番はデリルガが手に持っているレジ袋を眺めていた。「ああこれ?これは…」デリルガは中に入っていたものを取り出した。「これ、メロンパン!」デリルガは手にまたもや袋に入ったメロンパンを取り出した。「何でそんなもんで聞くと思った?」333番はあきれて聞いた。「俺が好きだから」デリルガはピッシリとで答えた。「それはあんたが好んでるからでしょうが!それにそれをきちんとちゃんと聞くようにいうんじゃない…」そう言いかけると、誰かが動く音がした。「誰?」333番はくるりと周り、後ろを見ると、666番がむくりと起き上がっているところだった。「本気で起きた!」333番はまさかと思い、もしかするとまた体力が戻ってただこんな変な時に起き上がったのかと思うと、666番が何かおかしいのに気が付いた。目は光っていて、つばを飲み込んでいた。まるで…食事に時間だ。
「キャ!」666番は333番に突っ込み、押しのけた。そしてサッとデリルガからメロンパンをとり、バクバクと食べ始めた。「本気で食べ始めた…」地面で転んでいる333番は目を丸くしていた。「だってずっと探していたんだよ?そりゃあ腹が減るだろ。多分半日ほど探しただろ。だって偽物(彼の師匠)にも頼んだんだしね」彼は彼を涼しげに見ていた。
「あの~…」333番はふわふわとデリルガまで歩いて行った。「私も実はメロンパン好き…だからくれる?」デリルガはにやりと笑った。「胸を触らしてくれたらあげるよ」333番は顔を赤く染めて飛び下がった。「それはダメ!」「冗談だよ、冗談。ほい」3人はバクバクとメロンパンを食い始めた。