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「ワーワー!」校庭では男子たちが楽しそうに作家をしていた。
私はいつものように屋上から見下ろしていた。
フェンスが壁になっていたが、問題なかった。
普通にその穴から見ればいいのだから。
入りたかったが、運動音痴だった。
少し入りずらい。
しかも女子なので、男子のグループに入るのは少し恥ずかしい。
私はずっとさっきからサッカーを見ていた。
テレビや記事で見たりするので、少しは知っている。
例えば… ちょうどその時、後ろから誰かが首元を触ってきた。
その何かは冷たく、私は奇妙な悲鳴(キャン!)を上げて飛びのいた。
「お前は犬か!」後ろを振り向くと、そこには岸田先輩がいた。
先輩の手には鉄の棒があった。多分あれが私の首に触れたのだろう。
「いや、先輩が悪い!」私はぷんぷんと怒った。
だが、先輩は一切それをちゃんと聞き入れなかった。
「キー!」私が起こると、先輩の視線が少しずれた。
「サッカーでも気になるの?」私は素早く頷いた。
理由は特にない。ただ、すごいな、と思っただけだ。
「というかルールとかわかってるの?」私は少し考えてから、
とりあえずは頷くことにした。少しはわかる。
「分かる。例えば、足しか使わないとか、あのネットの中に入ったら1点ゲットできる」
先輩はそれを聞くと、ため息をついてしまった。いったいどうしてかはわからない。それは事実の情報だ。
「どうしたの?」私は気になって訊いた。
先輩はもう一度深くため息をつくと、ゆっくり答えた。
「あのね、それは常識の常識だよ。そりゃあ分かってるでしょ」私は不貞腐れた。
「だって訊いてきたのは先輩じゃん!」先輩は頷いた。だが、同意しているようには見えなかった。
先輩は目をそむけた。まるで、何かを言おうとしたがやめたかのようだった。
私は「先輩、先輩、先輩、先輩!」と、呼び続けたが体を震わせながらそっぽを向いていた。
それから少したって、先輩が笑いをこらえていたのだと分かったのだった。

「先輩の馬鹿!」私はそっぽを向いたまま怒っていた。
先輩は困っていたが、まだ笑いをこらえられないのか、笑みを隠しきれていなかった。
私はそのままいい考えをして、屋上から降りていった。
確かあの先輩は今、演劇部にいるはずだ。
私は教室に入ると、先輩はいた。
「あ、星乃さん、どうしたの?」私はそう言われ、驚いた。
「どうして若しの名前を知ってるの?」彼女は一瞬固まってから笑って答えた。
「だって部長だもの。みんなの名前は把握してるよ」私は先輩に目を輝かせた。
私は名前を覚えるのが得意ではなかった。大の苦手だったからだ。覚えようとしてもすぐに忘れてしまう。
星田先輩と岸田先輩はどうしてか名前を憶えてしまった。
今考えてみれば、とても不思議なことだった。
私は星田先輩に事情を放しだ。
「なるほどね、それで、どうしてほしいの?」私は彼女の目を真剣に見た。
「先輩の弱点を教えてください」それだけだった。
私は先輩の弱点を知って、笑ってやりたかった。
負けず嫌いの心だったのかもしれない。
「それなら、あれがあるね」先輩は言おうかと戸惑っていた。
何かやばいことでもあるのかと思ったが、知りたかった。
「教えてください」先輩は負けた、といっているかのようにため息をついた。
「まあ、あるとすれば…不運じゃない?」

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📖上鍵です『|上鍵《じょうかぎ》と呼んで』小説家🛜lvl目標1000フォロワー・わがままだけど欲しい