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私+君‐私からすればまるで…自分のことみたいだった

これからどうしよう…
これ…どうやったら帰れるのかな…
私はため息をついた。
ここにいる原因はわからない。なぜか、誰か男性と出会った気がする。目が赤く、白い服装をしていたので多分医者だろう。
だが、なにも思い出すことができなかったのだ。
「とりあえず訊くけど、名前は何?」私は本名を名乗った。
それを聞き、そこにいた人たちは全員なるほど、と首を縦に振った。
「やっぱり誰かと入れ替わったんだ…まあ、どのぐらいになるかわからないけど、これからはよろしくね!」彼らはにっこりとしてきた。
いつ戻れるのかはわからないが、それまでは安全に過ごせそうだと思った。
「なるほどね…」私はこの体のに連れて行ってもらうと、一人の少女がお母さんに説明した。
一時的なものだが、今はお母さん言っておく。
お母さんはとてもやさしい人で、すぐに今の状況を受け入れてくれた。
「お邪魔します…」本来なら自分が住む家のはずだが、やはり、自分が知らない家に入るのはとても気まずい。
私が台所の椅子に腰かけると、彼女は反対側に座った。「その態度からして、多分都会だよね?」私は一瞬ぎくりと反応してしまった。
「な、なんでわかったのですか?」彼女は一瞬鼻で笑った。「そりゃ、分かるわよ。都会には時々言ってるし、田舎者の口答えや態度は都会とめちゃくちゃ違うからね。田舎はどちらかというと…どう表現しようか…堂々としている、かな?」
それを聞き、私は首をかしげた。「どういうことですか?堂々としているとは…?」彼女はめちゃくちゃ長い説明をしてきたが、口に出していない者の、その中には普通に態度が悪いという言葉が飛び回っていた。
「人の家には堂々と入ってくるのが一番いけないところなんだよね…」彼女はため息をついた。「まあ、君が誰なのかはわからない。どこから来たのかも、どうして来たのかもわからないし、訊く気もない。まあ、本来の君について一言でいうとすれば、普通に感情という言葉が辞書に載っていないということかな」それを聞き、私はポカーンとした。少し驚きすぎたのだ。
「彼女はある出来事で感情を全て捨てたのよ」
彼女は話し始めた。私からすれば、これを聞いていていいのかと心の中で思ったほどだ。
「彼女は5年前まで普通の少女だったのよ。普通に友達と遊んで笑って、いつもが楽しそうだった。家に帰ってくれば学校で起こったことを全て話してくれた。いやなことがあれば飛びついてきてかわいかったし、いいことがあればにっこりと笑ってかわいかった。ちょっと怒ってるときは怖かったけどね…」彼女は昔を振り返るかのように遠くを眺めていた。
私はただ、その話を聞くことしかできなかった。口から言葉を出すことができなかった。
「でもね…5年前、ある事件が起こった。世間には何も思わなかったことだが、彼女からすれば世界が終わったかのような出来事だった。」彼女の目からは一粒、二粒と涙が流れ出した。
私はどうしたらいいのかわからず、慌てていた。
「そんな顔を見るのも何年ぶりだろうね…まあ、話に戻ろうか」彼女は涙を拭くと、話をつづけた。
『私からすればまるで…』
「彼女の大事なペットの犬が死んだのよ」
『自分のことみたいだった』

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