【前編】離島の絶景を目指し、飛行機を乗り継いで五島列島に行った話
離島。アクセスするには船や飛行機での移動が必須になるため、到達難易度は高い。だからこそ独特の文化や歴史、そして手付かずの自然が数多く残されており、旅行先としては大変魅力的だ。今回はそんな離島の中でも比較的アクセスの良い五島列島の福江島に行ってみた話。
まずは福岡空港へ
アクセスが良いと言っても、五島列島が位置するのは長崎県。東京から向かう場合は福岡空港で乗り継ぐのが一般的だろう。というわけでさっそく羽田空港からスタート。
いつもよりもなが~~い保安検査証が出てくる。国内線でのトランジットは初めてなのでわくわく。
ちなみに今回は UA マイルの特典航空券を利用しており、かかった費用はトランジットがあるにも関わらず通常と同額の 5000 マイル。ANA マイルの場合、羽田~福岡の1区間だけでもローシーズンで 7000 マイル(最近値上げした)となっているため、UA マイルはなかなか神仕様。UA にはかつて空港に 24 時間置き去りの刑に処されたため二度と関わりたくないのだが、この時の詫びマイルがついに大活躍した。
羽田福岡便は大幹線ということで大型機の B787 国際線仕様。
D滑走路へとのんびりタキシングしていき……
東京湾を覆う曇り空からわずかに漏れ出す朝日を拝みながら離陸。
ちなみに季節は1月下旬という冬ど真ん中となっており、窓の外を見ると雪を被った山々が顔を覗かせていた。
いきなりトラブル
で、あっという間に福岡に到着……かと思いきや空港周辺の天候が悪く着陸できないとのこと。というわけでしばらく空港の周りをぐるぐるしながら待つことに。う~む、幸先悪いな……以前九州に初上陸した時は最初から最後までトラブルだらけのトラベルだったので、今回も同じルートを辿りそうな予感。
……などと百抹の不安を抱いているうちに天候が好転したらしく、普段と変わらぬ様子で着陸。陽の光も見える一方で真っ黒な雨雲もあるというゲリラ豪雨な空模様だ。真冬でもこんな天気になるのか。
ちなみに飛行機のドアが開いた時点で福江行きの離陸時刻 15 分前となっていたが、さすがに乗り継ぎ客のことは考慮されており職員さんに連れられて他の乗客とは別の出口から搭乗口へと向かった。
で、福江行きの便も離陸準備の作業が遅れているらしく、離陸時刻を過ぎてからようやく搭乗開始。
福江空港へ向かう飛行機はプロペラ機。当然ボーディングブリッジなんてものはなくバスで向かうが……
かなりの大雨!バスを出て機内に入るまでは雨ざらしなので、えいやぁと駆け抜けるも普通に濡れてしまった。
機内はこんな感じ。プロペラ機にしては比較的大きい機体だ。
で、さっそく離陸……といきたいところだが、雨が強くなり雷もどっかんどっかん落ちてきたため、またしても離陸準備が一時中断。結局 30 分以上遅れてようやく空へと舞い上がった。
福江島へ
ちなみにプロペラ機に乗るのは初めてだったため、なかなか新鮮な体験ができた。ジェット機の急激な加速に比べるとかなり控えめで、「これで飛べるの?」と不安になるような速度でふわっと離陸したのが印象に残った。離陸後にタイヤを格納する様子が見えるのも大変面白い。
空港を出て西へと向かうと、空港周辺の悪天候が嘘のような景色が広がっていた。
佐賀・佐世保あたりの上空を通過しながら東シナ海に突入。
あっという間に着陸態勢に入り、高度を下げてきたところで五島列島のメインアイランド・福江島が見えてくる。
小さな丘がいくつか見えるが、その中でも協調性の欠けた黄土色の丘が目に入ってきた。なんであんな色なんだろう。
で、タイヤがウイーンと出てきて……
さらに高度を下げていく。
地面めっちゃ近いな。
で、下方向にけっこうな勢いを付けて着陸。機体が軽い分、離陸はふわっと浮かぶが着陸は地面に落とす勢いでないと安定しないのだろう。
そんなわけでだいぶ遅れながらも無事に五島福江空港に到着。天気は良好。
で、今回は島内を反時計回りにぐるっと1周する旅程を組んだため、公共交通機関が大好きな私でもさすがにレンタカーを借りた。離島はレンタカーないと十分に観光するのは難しい。
堂崎天主堂へ
最初の訪問スポットは、福江中心部の市街地から北へ向かった堂崎天主堂。無料駐車場に車を放り込んで水辺の道を歩いていくと……
歴史を感じるレンガ造りの教会が出現。中は資料館となっており、300 円という良心的な入館料で見学できる。
教会の表に周るとこんな感じ。明治時代にキリスト教禁教令が廃止されてから最初に建てられた教会で、100 年以上もの長い歴史を持つ。
内部は残念ながら撮影禁止のため写真はないが、The カトリックの教会といった感じの内装に加え資料も充実しており、五島列島でのキリスト教徒の歴史や生活について理解を深めることができた。
五島列島にはキリスト教迫害の時代に多くの隠れキリシタンが潜伏していたという話は言及するまでもないだろう。現代においてもキリスト教徒の比率は高く、大小様々な規模の教会が随所に存在する。
……といった感じで堂崎天主堂の観光を終え、次は水ノ浦教会へ向かう。
水ノ浦教会へ
堂崎天主堂から水ノ浦教会へ向かうルートは、普通に検索すると一旦市街の方へ戻ってから国道 384 号で北西へ行くルートがヒットする。
……が、私は来た道を戻りたくない原理主義者。海岸沿いに道が伸びていることに目をつけ、物理的な最短ルートを突き進むことにした。なお、所要時間は全く変わらないという……。
この道はカーブも多く高低差が激しいため普通に運転するならオススメできない……が、ハードな運転や景色を楽しむという目的ならけっこうアリ。
ただし、こんな感じのすれ違いが大変&先の見通しも悪い道路が延々と続くので、運転に自信がない場合は要注意。ちなみに道中、対向車に3台遭遇したが奇跡的にも全て待避所付近でのすれ違いだった。マジで運が良かった。
で、水ノ浦教会に到着。駐車場から長い階段を登っていくと真っ白な建物が顔を出す。
青い空とのコントラストが大変美しい。
内部は玄関部分までは公開されており内装を眺めることはできるものの、それ以上中には立ち入れないようになっていた。
ちなみに写真には収めていないがけっこう奥行きがあり、なかなか規模の大きい教会だった。
城岳展望台へ
水ノ浦教会は坂の上に建っているが、車でさらに坂を登っていくと城岳展望所にたどり着く。
景色はこんな感じ。
もうこの時点で「おお~!いい景色!」と思っていたが、実はさらに上へ登る階段が存在する。
で、登りきったところには電波塔があり、城岳展望台としての役割も担っている。ここからは 360° の景色を楽しむことができるわけだ。
写真だとなかなか感動が伝わりづらいが、眼前に広がる絶景を遮るものなく存分に味わうことができた。階段の傾斜はキツイが、駐車場からの距離はあまりないためオススメだ。
それにしても福江島の海岸線はだいぶ複雑な形をしているな……。
といった感じで景色を楽しみ、駐車場へと戻った。
ちなみに現在の地点を時計で言うと 12 時のあたり。スタート地点の福江中心部が3時くらいなので、今の移動距離は π/2 くらいだ。ここからは一気に西の方へ向かっていく。
魚籃観音展望所へ
というわけで車をぶっ飛ばして、10 時くらいの場所に位置する魚籃観音展望所に到着。駐車場はないため路駐した。
東シナ海に向けて切り立った崖の上に位置するため景色は大変良い。
魚籃観音は三十三観音の1つ。東シナ海の大漁と航海安全を祈願して建立されたらしい。
北西に目を向けると見えるひょうたん島のような島は嵯峨ノ島。五島列島とは言うもののメインの5島のみならず小さな島々も無数に存在するわけだ。手前に見える貝津港からは定期船が1日3往復運行しており、ちょうど出港していく様子を眺めることができた。
南側を見ると高浜海水浴場。白く輝く砂浜とエメラルドグリーンに染まった海が息を呑む美しさだ。
なお前述した通り展望所は断崖絶壁の上に位置するため、景色に惹かれてうっかり滑り落ちないよう注意が必要だ。
で、このまま地平線へ沈んでいく夕日を眺める……のもありだったが、他に目をつけていた夕日スポットがあるため再び車をぶっ飛ばして南下。
大瀬崎灯台へ
向かった先は大瀬崎灯台。時計で言うと7時半くらいの位置だ。だいぶ日が傾いていたので焦ったが、結果的にはかなりナイスなタイミングで到着。
このあたり一帯の海岸線は全て断崖絶壁。西日に照らされる大自然の風景があまりにも美しく、思わず「え、すっご……」と独り言が漏れだすレベル。
大瀬崎灯台は福江島の最西端に位置し、灯台が建てられるだけあって周囲に視界を遮るものはなにもない。
海とは反対の東側に目を向けるとこんな感じ。島の内陸側ではあるものの、玉之浦湾という湾が食い込んでおり大変複雑な地形を織りなしている。
ところで、灯台と言いつつ全く灯台の写った写真が出てこないことを疑問に思った方がいるかもしれない。
と、ここで望遠してみると……。
はい、灯台。
実は崖の上の駐車場から岬の灯台まではけっこうな距離と高低差があるため、今回の旅程では灯台下まで行くのは諦めた。まあ夕日を拝むのであれば灯台"も"セットで見える展望台から撮影するのが無難だろう。
展望台で一緒に海を臨んでいるのは祈りの女神像。太平洋戦争で大瀬崎を見納めの地として多くの将兵が南方へ赴いたらしく、帰らぬ人となった彼らの鎮魂と平和を願って建てられたとのこと。
女神像の横にある鐘は鳴らすと願い事を叶えてくれるとか。大変美しい絶景を拝めたことに感謝しつつ、欲深く鐘を鳴らした。
といった感じで女神像とともに沈んでいく夕日を見届けた。
その後は階段を下りて駐車場へ。実は展望台まで行くのにもそれなりの位置エネルギーを稼がなければならないので注意。
で、日も沈み真っ暗になった田舎道を恐る恐る走り抜け本日の宿に到着。この日はこれにて終了である。
……といったところでキリが良いので前編はここまで。後編に続く!