中国最古の橋を見にバスを乗り継ぎ田舎へ行った話
鉄道旅に比べて、地方の路線バスを使った旅というのは難易度が高い。
というのも、鉄道ならマップに駅や路線がガッツリ見える上に時刻もある程度正確だが、バスだとそもそもバス停がどこにあるのかもわからず、時間も不正確。さらにバスの乗り継ぎがあると難易度は爆上がりになる。
そんなハードコアなバス旅だが、歴史的建造物の中には観光地として整備されず、鉄道も直通バスもないという強制サバイバルモードなものも存在する。今回はそんな観光地化されていない中国最古の橋、安済橋へ行った際のお話。ちなみに前回の北京観光の続きになる。
安済橋について
おそらく安済橋と聞いて「あ~……あれか!」となる人はほとんどいないと思うのでWikipediaの説明を載せておく。
安済橋(あんさいはし、Ānjì Qiáo、Anji Bridge)は、中華人民共和国河北省趙県にある隋朝の595年-605年頃に架橋された石造アーチ橋。趙州橋、大石橋などの別名で知られる中国現存最古の橋で、730年の間、アーチの長さは世界一だった。
1400年以上も雨風に耐えながら現存しているのはすごい。しかも普通の橋として上をバスやらトラックやらが通行していた時期もあったらしい。このあたりの雑さ加減と歴史の長さはさすが中国!といった感じ。
安済橋のある石家荘市は河北省の省都になっており、都市圏人口は約354万人となかなかの大都市。地下鉄も走っている。
チケット発券
まずは北京から石家荘に向かうため高速鉄道(高鉄)のチケットを発券する。日本から直で行く場合は飛行機も選択肢に入るかもしれないが、東京からは直行便がない。
予約状況がこんな感じでわかるようになっていた。
窓口で発券することになるが、事前にtrip.comで予約しておけばとてもスムーズに受け取れる。
外国人用の窓口に並び、予約番号をメモった紙を手渡す。今回の旅では長距離列車をちょくちょく使うため一気に5枚発券することに。受付のお姉さんも嫌な顔をしながら一枚一枚発券してくれた。
ちなみにチケットを発券したのは北京駅だが、高鉄に乗車するのは北京西駅。以前の記事でも少し触れたが、高鉄のターミナルは北京西駅で、一部が在来線に乗り入れて北京駅まで来る形になっている。
高鉄に乗車
翌日に北京西駅へ。
駅に入る際には荷物検査がある。乗車券とパスポート(中国人の場合マイナンバーカードのような物)も必要になるためすぐに出せるようにしておくべき。
想像よりもどでかいターミナルだった。
発車案内板のごちゃごちゃ感がいい感じ。
各乗り場には待合室があり、発車時刻が迫るとゲートが開きホームに降りられるシステムとなっている。感覚としては飛行機に近い(アメリカのアムトラックなども同じような感じだった)。
ゲートが開くと列をなして一斉に入っていく。高鉄でも在来線でも、列に割り込むような輩はいなかった。
始発駅のため、ホームにはすでに列車が待機している。左の方には在来線も見えテンションも鰻登り。
石家荘へ
最速達列車(列車番号がGで始まる便)は北京西から一駅で石家荘に到着する。
最高速度は300km/h。わずか1時間ちょいで着いてしまうのだから驚き。
石家荘観光
石家荘駅。地方のジャンクション駅っぽさが出てる。
駅が街の中心というわけではなく、都心部のビル群が遠くに見えるものの周りは空き地だらけ。まあ中国だから数年後には高層ビル郡に生まれ変わっているかもしれないが。
前述の通り石家荘市は大都市なのだが、特に観光地もなくローカルな地域となっている。北京は外国人向けに整備されていた部分もあったが、こちらは完全にありのままの姿。
ちなみにこの時点では安済橋に行くことはまだ確定してなく、時間が余れば寄っていきたいなあという感じだった。
そもそもうまくバスに乗れるかわからない上、中心部から片道2時間以上かかるらしくあまり乗り気ではなかった。
街歩き自体はかなり楽しい。巨大なマーケットがあったり、
放置された転車台があったりした。
何の変哲もない地方都市の風景だけれど、中国らしさがにじみ出てる。
内陸の方だからか、全体的に砂で汚れている印象。
結局5kmほど歩き、長距離バスターミナルに到着。もちろん市内のバスも乗り入れているためわざわざ歩く必要は全くない。
予約なしで乗れるか心配だったが、窓口で「赵州桥」(安済橋の別名)と書いたメモ用紙を見せると普通に発券してくれた。
ちなみに私は中国語が全くわからないため石家荘も趙州橋も発音できない。中国で英語を喋れる人はほとんどいないため、筆談かGoogle翻訳で乗り切るしかなかった。
いざ安済橋へ
もう発車時刻間際だったらしく、すぐにバスへ案内される。
結構オンボロなバスに乗車。ガッタンガッタン揺れて急に東南アジア感出てきた。
車内はこんな感じ。意外と需要があるのか、平日にも関わらず満員。窮屈な思いをしながら車窓を眺めていた。
バス停が近づくと運転手が大声で教えてくれるシステムで、割と乗り降りする乗客は多かった。百度地図で確認した際には、目的地まで3つしかバス停がなかったのだが、明らかに10箇所以上で乗り降りしていた。ローカルルールがあるのだろうか。もう意味がわからない。
しかも時間調整のためか、途中で長時間停まることもあった。冷や汗が止まらないからやめてほしい。
国道を1時間半ほど走り、趙(ちょう)県に到着。趙県中心部のバス停で乗り換える。中国は市の中に県があるから少し不思議な感じ。
乗り換え先のバスが本当に来るのか、またしても冷や汗を流しながら待つ。
「バス来なかったら生きて帰れないかも」とブルブルしていたが、運転間隔は比較的短いらしく、10分ちょいでコミュニティバスのようなものがやってきた。
安済橋に到着
2kmほどのんびり走ると終点の安済橋に到着。ついに来た!
入場料を払い中へ。
観光客がチラホラいたものの、基本的にはガラーンとしている。夕焼け空も相まって少しさみしげな雰囲気が漂っておりとてもいい感じ。
そしてついに安済橋とご対面。
渡ってみる。
1400年もの間、幾度の災害にも戦にも耐え抜いて人々を渡し続けていたのだと思うと感動せずにはいられない。
人がいないと写真もじっくり撮れて良いなあ。
橋以外に見るものは特にないため、サクッと回っておしまい。滞在時間は30分ほどとなった。2時間かけて来たというのに!
先程のコミュニティバスのようなものに乗車。……と、ここでちょうど1元札を切らしてしまっており、運賃(2元)が払えない問題が発生。お釣りという概念は存在しないらしい。
結局、バス停近くにあったお店で軽食を買い5元札を崩すことで解決した。
そして石家荘中心部行きの長距離バスに乗車。ここの乗り継ぎが懸念事項だったが、実はこの路線は10分間隔で走る高密度路線だったことが後から判明した。
行きのバスよりもさらにオンボロで、なぜか冷えると思ったら窓に穴が空いていた。
車内もなんかほこりっぽい。掃除してないだろこれ。
先程購入した軽食を食す。
焼餅(シャオビン)と呼ばれるもので、サクサクした甘みのあるパンみたいなもの(バスの揺れが激しくてブレまくり)。北京の屋台でも食べたが、こちらの方が美味しい気がする。
わりとボロボロ崩れるため、揺れる車内で手先に神経を集中して食べた。いくら汚れているからといっても、食べ散らかすのはアウト。
もしゃもしゃ食べているといきなりバスが停車し、乗客が全員降りだした。
やばい!置いていかれる!と焼餅を喉につまらせながら荷物をまとめ他の乗客についていく。
外に出ると全員が横に停まっているバスに乗り換えていた。どうやらバスを変えて石家荘まで向かうらしい。オンボロすぎる車両は中心部への運行をさせないのだろうか。とにかく、設備はアップグレードされた。
そんなこんなでいろいろと不安の多いバス旅だったが、あとはのんびり車窓を眺めるだけで中心部まで運んでくれる。バスの揺れも激しくなく、安心して瞼を閉じた。
。
。。
。。。
どかーん!
激しい音で目が覚める。下の方から何かとぶつかったような衝撃もあった。
もし人を轢いていたのであれば、前回の北京に続き二日連続という恐ろしい事態になる。
運転手がバスを路肩に停め、外に出てチェック。
北京の時は中心部で足止めだったため勝手に降りて観光再開できたが、今回は自力で戻るには辛い距離。しかも時間に余裕があるとはいえ夜行列車の予約をしているため、間に合わないとかなりピンチ。
……と、いろいろ考えていたが、すぐに運転手が戻ってきた。
「特に不具合が見当たらないので運転再開します」
たぶんこんな感じのことを言っていたのだと思う。そんな雑でいいのだろうか。その後はなんの問題もなくバスターミナルに到着した。
結局音と衝撃の正体は分からなかったが、おそらく道路を横切った小動物を轢いてしまったのだろう。
バスターミナルで市内のバスに乗り継ぎ、さらに中心部へ。
やはり石家荘駅からは少し離れた地区が都心部になっているようだ。
地下鉄で石家荘東駅へ。
設備はかなりピカピカだが、今まで見てきた駅のような活気は全くない。
列車の本数も極端に少なかった。石家荘から東に向かう需要はあまりないのかもしれない。
ゲートが開くのを待っている間、間違えて水筒にお湯を入れてしまい、悲しいまでにボッコボコに変形した。留学先で貰い、地球を半周して持ち帰ってきたものだがあっけなく死亡。
水筒の死を悲しむ暇もなく発車時刻になり、夜行列車に乗車。この列車でもトラブルを起こしてしまうのだが、詳しくはコチラの記事で見てほしい。
おわりに
そんなこんなでバスで田舎に行った話だった。やはり鉄道旅に比べると難易度は非常に高く、嫌な汗も滝のように流れるためサバイバルモードを体験したい方にはオススメだ。
一応言っておくと、今回使った路線は運転密度がかなり高いためバス旅としての難易度は低い方になる。そのうち地方路線バスでの国境越えにも挑戦したいところだ。
……といったところで今回はここまで。
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