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春の服装で雪の弘前に行ってしまった話

旅先の気候は事前に調べておくべき。

フリーきっぷの「鉄道開業150年記念ファイナル JR東日本パス」を利用して北陸から東北を巡る旅行記その3、最終回。前回山形県の酒田市を観光した後に日本海を北上し、秋田を経由して弘前に到着したところまでを書いた。今回はその続きから。

この日は平日ということもあり、特急つがるの乗車率はあまり高くなく自由席も通路側はほぼ全て空いていた……が、弘前から大量の乗車があり自由席はぎゅう詰め状態に。弘前は東京へ直通するメインルートを有していないとはいえ、人の行き来はかなり多いようだ。

駅周辺をぶらぶら

まずは宿にチェックインするため、ぶらぶら寄り道しながら市街中心部へ向かっていく。毎度のごとく国鉄の駅は旧市街の外れにできるパターンで、現在でも弘南鉄道大鰐線中央弘前駅あたりが繁華街となっているようだ。ちなみに弘南鉄道のもう1つの路線である弘南線は弘前駅の方に乗り入れている。

駅構内にはりんごのオブジェが。さすが青森県。

Suica 利用開始の案内が大々的に宣伝されていた。逆にいままで IC 非対応だったのか……。

ところで駅の外に出てまず感じたのが服装の選択ミス。寒い。寒すぎる。3月中旬だから普通に春の服装で来てしまったのだが、まだ余裕で雪が残っているという。

まあ青森県に入ったあたりで車窓が銀世界だったので嫌な予感はしていたが……想像よりもだいぶ寒かった。

とはいえ人や車が通行するスペースは基本的に雪が退けられているため、歩く分には特に問題ない。寒いけど。

観光地巡り

宿にチェックイン後はひたすら観光地巡り。私はあまり観光地が好きではなくローカルなエリアを街歩きするケースが多いのだが、弘前は観光スポットが点在しているためぶらぶら街歩きしながら巡っていくことにした。

まず向かったのが赤レンガ倉庫。観光スポットと言うよりは普通に美術館として使われており、この時も美術展が開催されていた。

すぐ近くの土淵川では中央弘前駅を発着する弘南鉄道を拝むことができる。

最勝院。五重塔が特徴的で、国の重要文化財に指定されているものとしては日本最北らしい。

禅林街。曹洞宗の寺院三十三ヶ寺が立ち並ぶ通りとなっている。

直線的に続く杉並木が圧巻。道路の交通量は少ないが、直線ゆえにスピードを出している自動車がいるため注意。

禅林街から北西側は岩木川に向かって大きく標高が下がっており見晴らしが良い。そんな場所に忠霊塔が設置されていた。雪に閉ざされており近づいたら何かイベントが発生しそうな雰囲気が漂っていた。

旧弘前市立図書館。ルネッサンス様式を取り入れた木造建築という、なかなか趣のある建物だ。内部も見学できるらしいがこの日は残念ながら閉館時間となっていた。

すぐ近くのミニチュア建造物。弘前市内の歴史的建造物が 10 の1スケールで再現されているという、東武ワールドスクウェア的なスポット。冬季は雪対策のため囲いが建てられていた。

旧第五十九銀行本店本館。こちらもルネッサンス様式の木造建築となっており、国の重要文化財にも指定されている。

そんなこんなであっという間に日が暮れ、手袋をしているにも関わらず手の感覚がなくなりはじめる事態に。歩いていれば体は温まるが手はどうしようもない。というわけでこの日の街歩きは終了し夕食を取って宿に戻った。

翌日

で、翌朝。快晴となったため気分良く観光地巡りを再開する。

それにしてもすごい雪だなあ。

一番やばかったのがこの歩道。先程ほとんどの道は雪が退けられていると言ったが、日当たりの影響で完全に凍結した状態のままとなっている道もある。雪国の民ならこれくらい余裕なのだろうが、雪国スキル0の私はゆっくりゆっくり通過した。

弘前城へ。桜で有名だが、もちろんこの時期に咲いている桜などない。

それにしても、こんなに雪まみれの状態から1ヶ月ほどで桜が満開になるなんて信じがたいな……。

天守閣。残念ながら冬季は中にはいれないとのこと。

前述の通り岩木川に向かって標高が下がるため、城からの眺望は大変良い。

岩木山がくっきりと見える。富士山と同じく周りに高い山のない独立峰であるためよく目立つ。

ちなみに写真だとあまり存在感がないかもしれないが、実際にはかなり迫力があった。

普通の街中でも少しひらけていればぐっと視界に入ってくる。なかなか印象に残る光景だ。

城下町にはほぼ必ず残ってる観光スポット、武家屋敷町へ。

「弘前市仲町伝統的建造物群保存地区」として整備されているらしいが、観光地というよりは住宅街という感じ。普通の民家も立ち並び、通りは住民の自動車が走っていた。

昭和に取り残された建物も。

保存地区の中には一般公開されている武家屋敷が4軒あり、そのうちの1軒を見学させていただいた。

観光地化された武家屋敷と違い派手なものはないが、当時の暮らしを思わせる形でそのまま残されているのは大変良い。

縁側と同じ高さまで雪積もってるのすごいな。

完全に無料開放されており満足度はかなり高かった。

続いて向かったのは津軽藩ねぷた村

ねぷたの展示だけでなく太鼓や三味線の実演なども行われていた。解説していた職員さんの絶妙な訛口調が心地良い。

ねぷたデカい!!

またしても写真だとあまりスケール感が伝わらないパターン。

この写真が一番伝わりやすいだろうか。

その後再び旧第五十九銀行本店本館の前を通り写真だけ撮影。完全に逆光になってしまった。

そして最後の観光スポットがこちら。

太宰治まなびの家。旧制高校時代の3年間を過ごした住宅がそのまま保存されている。

なんと入館料は無料という大盤振る舞い。

資料などはあまり多くなく、当時の光景をそのまま再現している様子。

居住区画の中には廊下を設けず、襖で6畳間程度の小部屋に区切っていくという建築様式。なかなか興味深い。

2階に上がると太宰の部屋。この空間で過ごした太宰の青春時代に思いを馳せることができる。

昔の建物というだけあって階段が大変急なので上り下りの際は注意。

……といった感じで観光地巡りは終了。

弘南鉄道乗りつぶし

旅先での重要なミッションが鉄分補給。弘南鉄道の2路線を乗りつぶすため1日乗車券を購入した。

まずは弘前駅を発着する弘南線から。弘南鉄道の改札口が位置する東口は近代化されているものの寂しい景色だった。

観光地巡りと時系列が前後するが、弘前2日目の朝である。ラッシュと逆方向なので車内はスカスカ。

あれ?先頭車両には青い帯がないな。

のんびりと車窓を眺めながら終点の黒石まで揺られていく。すれ違う反対方向の列車は通勤通学客でそれなりに混雑していた。

黒石到着。ラッシュ時間帯ということで1時間に2本の便があるため(通常時は1本)、折り返しの列車は見送って次の便までに軽く街歩きをする。

弘前市内よりも岩木山が遠くなる位置関係だが、相変わらず目立っていた。

で、いかにも昭和な通りを抜けていくと……

中町こみせ通りに到着。江戸時代から続くアーケード状の通りだ。

「日本の道100選」にも選ばれているらしく、造り酒屋や蔵などの伝統建築が立ち並ぶ。

江戸時代にアーケード街という概念が存在したことが驚きだが、雪を防ぐための工夫だと言われれば納得。

ちなみに朝の時間帯というのが関係しているかはわからないが、自動車の交通量はそれなりに多かった。

バスも通っているという。

そんなわけでぶらぶら散歩する際には車に注意が必要。あと自動車が映らない良い感じの写真を撮るのもタイミングを見計らわないといけない。

これはちょうど他の観光客もいないベストなタイミングで撮れた写真。風情があって大変良い光景だ。

そんなこんなで黒石駅に戻る。待合室で少し暖を取った後に通勤通学客と一緒に改札を抜ける。

弘前行きの電車に乗車。今度は赤い帯だ。

ラッシュ時間帯とはいえピークは過ぎていたこともあり、立ち客がでない程度の乗車率。再び車窓を眺めながら弘前へ戻っていく。

その後、観光地巡りを再開して太宰治まなびの家から戻ってきたところまで飛ぶ。今度は大鰐線を乗りつぶすため中央弘前駅へ。

弘南鉄道は元東急 7000 系で統一されているっぽいな。

車内にはりんごのつり革が。

で、どんぶらこと揺られて終点の大鰐駅に到着。JR の大鰐温泉駅と一体になっている。

跨線橋を渡って JR 側の出口へ。駅前はあまり「The 温泉街!」という感じはしなかった。

そして謎のオブジェ。大鰐だからワニなのだろうが、あじゃりんという名前は由来がよくわからんな。

東京へ帰る

で、しばらく待っていると特急つがるが到着。大鰐温泉駅には特急も停車するため、JR 側のフリーきっぷがあるならわざわざ大鰐線を折り返して弘前へ戻る必要はない。今回の旅程では大鰐温泉~弘前を2回乗車するため、普通の乗車券で乗る場合は追加課金が必要になるがフリーきっぷなら問題ない。フリーきっぷ大感謝案件だ。

自由席で窓側を確保し、弘前で乗ってくるであろう大量の乗客に備えた……が、今日はあまり乗車してこなかった。隣の席も空いたまま快適に新青森まで揺られる。新青森駅はまさしく新幹線のためだけに作った駅という感じで、建物は大変立派だが周りは特に賑わっていない。

乗り継ぎ先の便まで時間があるためぶらぶらしていると、今までで一番大きい雪の塊を発見!!……したものの、こんなにどっさり積む意味がないので元々盛り土があった場所に積もっているだけだろう。

で、時間になったのでホームへ。乗車するのははやぶさ青森から大宮まで3時間かからないというのはすごい。

はやぶさが北海道から青函トンネルを超え、新青森駅に滑り込んできた。

乗車2週間ほど前に予約したタイミングではそこそこの空席があったのだが、なんと今日は満席とのこと。盛岡から合流するこまちも同様だ。150 周年パスの影響だろう……恐るべし。

時速 320km という爆速で揺られながら、山の向こうへ少しずつ沈んでいく夕日を眺める。

仙台あたりで完全に日没。ここからはあっという間に大宮へ……といきたいところだが、けっこう時間がかかった。青森~東京だと仙台あたりがちょうど折り返し地点ということで、いかに東北が大きいかよくわかる。

そんなわけで仙台からさらに1時間ほど揺られて大宮に到着。ちょうどむさしの号に接続したためサクッと帰宅することができた。

おわりに

というわけで、150 周年パスによる北陸・東北を巡る旅行記もこれにて完結。今回の旅を振り返ってみると、新幹線・特急に乗車可能なフリーきっぷのオトクさを改めて実感できる。指定席が4回までというのも戦略的に旅程を組む良いスパイスになっていた。今後このようなきっぷが発売されるかはわからないが、もし出たら積極的に活用したいところだ。

また、弘前の観光も全体的に満足度が高く大変充実していた。正直なところここまで観光資源が豊富だとは思っていなかったため、良い意味で予想を裏切られる形となった。まあ予想外という話だとあまりの寒さに震え上がったのも予想外だったが。もし弘前に興味が湧いた方がいればぜひ訪れてみてほしい。

……といったところで今回はここまで。


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