晴れ男が油断してたら中国でずぶ濡れになった話
突然の自慢だが私は晴れ男だ。
もちろん科学的根拠はなく「認知バイアスでしょ」と言われれば話は終わってしまうわけだが、記憶にある限りでは大切な用事がある日に雨が降ったことはない。
その一方で、他の人にとって大切なイベントでも私がどうでもいいと思っているとガッツリ雨が降るという迷惑な性質を持っている。学校の入学式や卒業式では雨を降らせまくったし、高校の入学式では4月の東京にも関わらず雪が降るという異常事態を起こした。
そんな私にとって一番重要なイベントは、やはり旅行である。旅行を趣味にしている割には外に出る頻度が低いが、国内海外問わず旅行先で雨に濡れた経験はほとんどない。
そんなわけで、私の荷物には折りたたみ傘という概念が存在しない。傘は意外と重い上にかさばるため持ち歩かなくてすむのはとてもありがたい。
……と油断していたらガッツリ雨に濡れてしまったのが今回のお話。ちなみに、前回中国最古の橋を見に行った話の続きになる。
南京へ
一応全体の旅程についてまとめておくと、北京に5日間滞在し、そこから石家荘と南京を経由して上海まで移動、上海でも5日間滞在するといった感じだ。ちなみに石家荘と南京にわざわざ寄り道する理由は特にない。
石家荘東駅から夜行列車に乗る。
車内はこんな感じ。
切符は乗務員さんに預け、代わりにカードを受け取る。降車駅が近くなると今度はカードを渡し切符を返してもらうシステムで、降車駅を寝過ごしてしまう心配はない。
この列車は番号がKから始まる快速列車で、在来線の速達便の中では遅い部類にあたる。停車駅もかなり多く、駅に止まる度にほかの列車に抜かされていった。
車窓からの景色が明るくなる頃にはかなり南の方まで移動していた。
大きな川を渡る。黄河かと思ったが地理的に少しおかしい。
後で調べたところ、淮河(わいが)と呼ばれる川だった。長江、黄河に次ぐ長さを誇り、華北・華南の文化的境界線にもなっている重要な川だが、日本での知名度はあまりない気がする。
列車によって違いはあるのだろうが、この便は全車両が寝台車で食堂車などは連結していないみたいだ。散策しているとスパイ容疑で目をつけられてしまったため、あまりウロチョロすることはできなかった。車内の写真も撮りまくっていたのだが、半分くらいは消されてしまった。
そんなわけで食料の確保に悩んでいたところ、タイミング良くワゴンがやってきたため朝食を購入。寝台列車の狭い通路で食事をするのは旅の風情があってなかなか良い感じ。
ただ、残念なことに味はお世辞にも美味しいとは言えなかった。
南京駅に到着
どでかい川を渡る。これが長江か。
長江を渡るとすぐに都市部に入り、列車はゆっくりゆっくりピードを落としながら南京駅に滑り込んだ。
石家荘東駅から14時間過ごした車両に別れを告げる。
そして駅を出ると……ガッツリ雨。
実際、車窓を眺めている時点で天気が悪いのはわかっていたのだが、南京に到着すれば雨も止むだろうという謎すぎる自信があった。
とにかく雨に濡れないように街歩き……と思ったのだが、目の前にはバカでかい湖が立ちはだかり、徒歩で移動できない状態。
玄武湖という観光名所らしいが、百度百科によると面積は5.13平方千米(東京ドーム109個分)もあるらしい。観光地のアクセスが良いのはありがたいが、ジャンクション駅前の貴重な土地を丸々専有してるのはどうなんだろう。
ちなみに同じく駅前に広大な土地を持つ北大札幌キャンパスは1.77平方キロ。北大の約3倍もあるとは……。
結局地下鉄に乗り中心部に向かうことにした。南京地下鉄の切符はコイン式になっている。
ちなみに写真の指を見るとわかるが、中国北部の乾燥した空気に5日間晒されたことで肌が悲鳴を上げている。おそらくあともう1日北京にいたら、両手とも肌がバッキバキに割れていただろう。
街歩き
地下鉄で中心部に着いてからは気合で街歩き。傘を買うという手もあったのだが、無駄な荷物が増えることを考えると結局びしょ濡れになってもいいやと判断。
カメラにはタオルを巻き付け、頭にはジャケットをかぶればどうにか乗り切れる。「上着がコートだけだと暑くなった時困るなあ」とのんきに考えて持ってきたジャケットがここに初めて来て役に立った。ちなみに旅行中、ジャケットに腕を通すことは一度もなかった。
南京は北京と同様に長い歴史を持ち、ワクワクする歴史的建造物がうじゃうじゃと生えているのだがその色味は北京と大きく異なる。
北京では赤と緑で派手に塗られた建物ばかりだったが、南京はどちらかというと茶色に近いシックな色合いを基調としていた。
中華建築というと思い浮かぶのはやはり北京の色合いのため、日本建築に近い南京の建物は新鮮な感じ。
また、色合いが日本に近いと言ってもそこかしこに中国らしさは散りばめられており、なかなか面白い光景。
南京は市内に川や水路が多く、整備された川沿いの景色を堪能することができた。橋の形状もいい感じ。
こんなオブジェがあったり、
もっと大きく公園の中に湖と船がセットであったりした。
南の方に歩いていくと、急に大きな城壁が現れる。南京は城塞都市だったのか。全くリサーチを入れていなかった。
調べてみると明の時代に建設された城壁で、その長さは35kmにも及ぶらしい。しかもその半分以上が今でも壊れずに残っているのだからすごい。
城壁がそびえ立っていると移動が不便になるだろうと思ったが、実際城壁の内外を結ぶ道路は限られていた。しかもどの道路もうまーく門の下を通るように造られており、利便性を犠牲にしながらも貴重な歴史的建造物と共存していく姿勢が感じられた。素晴らしいなあ。
そんなこんなで雨の中を10km程歩いてしまった。人間、頑張ればどうにかなるものである。
街歩きの中で少し気になったのだが、すれ違う人々がやたら私の方をチラ見している気がした。傘をささないのがそんなにおかしなことだろうか。それに加え街中のショーウィンドウの前を通る度に、幽霊もしくは逮捕された凶悪犯罪者のようなものが写り込んでいた。一体何なんだろう。
上海へ向かう
予約した列車に乗るためまずは南京南駅に向かう。南京駅は在来線と一部の高鉄(高速鉄道)が乗り入れていたが、南京南駅は高鉄専用の駅となっている。どちらの駅からも上海へ向かう便は多い。
南京南駅に到着し、地下鉄ホームから地上にでるとびっくり。
とにかくバカみたいにでかい。前後も左右も、おまけに天井までめちゃくちゃ広々としている。南京駅が比較的コンパクトな作りだっただけに余計に驚かされた。
ホームもこんな感じ。天井の高さもおかしいし、吹き抜けになっているのはもはや意味がわからない。そして心細すぎる柱。大丈夫なのだろうか。
そんな心配をしていると、すぐに高鉄がやってきた。
上海虹橋行きの最速達列車で、所要時間は1時間ほど。ただ、南京~上海間はどの種別の高鉄でもあまり時間は変わらないようだった。
上海に到着
日も落ちており車窓からの景色は一切見れずに上海に到着した。正直なところ、車内で過ごした記憶が全く無い。もしかしたらずっと爆睡していたのかもしれない。
おわりに
そんなわけで晴れ男がずぶ濡れになった話だった。これに懲りて次の旅行では折りたたみ傘を持っていこうと決意した……が、結局次回以降も持っていくことはなかった。後悔はするけど反省はしないタイプ。
今回、北京と南京を連続して観光することで両都市をじっくり比較でき、南北の文化の違いを実感できた。
そもそも中国全体で考えると南京は南というよりは中心寄りのため、もっと南へ行けばまた違った文化が見られるだろうし、西に向かうのも面白いかもしれない。「中国文化」とひとくくりにされてしまいがちだが、広大な土地には多様な文化が存在するわけだ。
……といったところで今回はここまで。
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