鉄オタ活動していたらアメリカの社会構造を実感した話
「人種のるつぼ」という言葉をご存知だろうか。
中学や高校の地理で扱う内容なので誰もが一度は習った言葉だと思う。Wikipediaによると……
"「人種のるつぼ」(じんしゅのるつぼ、英: melting pot)とは、多種多様な民族が混在して暮らしている都市、またはその状態を表す言葉。多民族国家アメリカ合衆国を象徴する言葉として有名である。それぞれの文化が互いに混じり合って同化し、結果として一つの独特な共通文化を形成していく社会(文化多元主義)を指す。"
( https://ja.wikipedia.org/wiki/人種のるつぼ より引用)
といった感じだ。
アメリカという国は世界各地から移民が集まることで成り立ってきた。私が留学中に実施した調査でも、一言に「アメリカ人」といっても、文化的、宗教的、人種的に様々であり、多様性を認識することは大変重要であるとほとんどの人が考えていた。
そのような多文化社会において、多種多様な人々がるつぼの様に混ざり合っているというのがアメリカであると彼らは自負している。
しかし、はたして本当にそうなのだろうか……?
今回は前回の続きで、留学先のフィラデルフィアでのお話。
前回の記事はコチラ。
フィラデルフィアについて
そもそもフィラデルフィアがどこにあるのかわからん!という人は多いと思う。名前すら聞いたことない人もいるかもしれない。
私がその名を初めて耳にしたのはまたしても中学の社会科の授業で、アメリカ独立宣言についての話だった。フィラデルフィアはアメリカ独立戦争の中心地であり、独立宣言もここで宣言されたのだ。
また、首都がワシントンDCに移行するまではフィラデルフィアに首都機能が置かれていたそうだ。
フィラデルフィアはアメリカの中でもトップクラスに長い歴史を持ち、歴史的建造物もそこら中にひしめき合っている。
日本の感覚で言うと奈良くらいの歴史の長さ。スケールは違うけど。
地理としては東海岸の北部に位置しており、ニューヨークからアムトラックで1時間半ほど。
留学生活
正直に言うと授業はめちゃくちゃ楽だった。課題の量は少し多めだが内容は簡単で、授業は早ければお昼過ぎには終わってしまうのだ。
実際のところ、教室の中で学ぶことよりも外で学べることのほうが多いため自由時間が多いのは有益だった。
クラスの国籍は半分ちょいが中国人、残りが韓国人と台湾人で半々といった感じだ。圧倒的東アジア率である。日本人はほとんどいなかった。
(大学構内にはリスがたくさんいた)
そんなわけで、いろいろと中国語を学んだし、日本語を教えたりもした。他にも日本語と韓国語で発音がほぼ同じ単語がいくつもあることも学び、なかなか充実した語学学習になった。英語を学びに来たというのに!
フィラデルフィアの鉄道
鉄道網があまり発展してないアメリカの中では珍しく、フィラデルフィアは鉄道路線が何本も走っており、鉄分補給はかなり充実していた。
(公式サイトより引用)
ちなみにこの路線図のほとんどは一ヶ月の内に乗りつぶしてしまった。私よりもフィラデルフィアの鉄道に乗った日本人はいないかもしれない。
市内は地下鉄2路線の他、路面電車もバリバリ走っておりラッシュ時には道路を占拠していた。
(さすがにこれは詰まり過ぎだと思う)
近郊路線も四方八方から集まるため中心部では複々線となっており、見ているだけでも楽しめる。
また、ニューヨーク~ワシントンDCという大動脈のど真ん中に位置するため長距離列車もバリバリ見られる。
乗り鉄活動ではわざわざ終点まで乗るため田舎も度々訪れた。
日本では田舎に行くと山がたくさん生えているが、ここでは一面見渡す限りの草原、もしくは森である。
ちなみにペンシルベニアの sylvania はラテン語の森(silva)由来なのだ。
市街地の移動はIndegoというシェアバイクを使い、圧倒的な機動力のもと撮り鉄スポット捜索や裏路地探索をしていた。やはり最強の移動手段はチャリである。
市内の移動は地下鉄もそこそこの本数で便利。私はほとんど使わなかった。
そんなこんなで、都心部から田舎まで様々な土地を訪れていたらなんとなくアメリカの社会構造を実感してしまったのである。
ちなみに私はかなりトラブルに巻き込まれる体質で、田舎の終着駅で電車に置いてけぼりにされたり、顔面をハチに刺されたりといろいろとハプニングに巻き込まれたのだが今回は触れないでおく。
市街地
フィラデルフィアの観光地は中心部に集まっており、観光は楽である。ニューヨークから日帰りで観光するのでも十分楽しめると思う。
市庁舎。市のど真ん中に位置する。やはり歴史の長さを感じる!
自由の鐘。独立戦争のシンボルだが、最初に鳴らした際にヒビがはいったそうだ。想像していたものよりもかなり小さくて驚いた。
東州立刑務所(Eastern State Penitentiary)。映画「12モンキーズ」の聖地。
フィラデルフィア美術館。こちらは映画「ロッキー」の聖地。
「ロッキー」といえばこちらも有名。イタリアンマーケット。
20世紀にはイタリアの移民がここにやって来て商売をしていたためイタリアンマーケットと呼ばれるようになったそうだ。一方で近年ではメキシコの移民の数が増えているようで、スペイン語が飛び交っていた。
イタリアンマーケットの隣にはリトルサイゴンと呼ばれるベトナム移民系のエリアがあるが、こちらは寂れまくりで絶賛閑古鳥大合唱状態。写真すら撮らなかった。
一方で、市の中心部に位置するレディングターミナルマーケットは人が大量でわいわい賑わっていた。
鉄道のターミナル駅(30th Street Station)。めちゃくちゃでかい。
中心部からは少しだけ離れているので注意!
郊外
郊外も西欧風の歴史的な建物が多く、散歩しているだけでも楽しい。
かなり広範囲に家が並んでおり、人口の多さを実感できる。
米国の国勢調査(2018)によると、フィラデルフィアの人口は約158万人で、米国で6番目に大きい。
さらに、人種構成は、白人が41.2%、アフリカ系アメリカ人が42.3%、アジア系が7.2%となっている。
大学周辺や都心部の近くなど比較的地価の高い地域では白人比率が非常に高いが、より郊外へ行くにつれて黒人の比率が高まってくる。
……と同時に、治安もものすごい勢いで悪くなっていく。
人種差別を助長する意図は全く無いが、黒人の多い場所は治安悪いので気をつけるべき。道路にゴミが散らかってたりするし、窓には鉄格子がはめられていたりする。
田舎
郊外からさらに田舎へ行くと人種構成はガラッと変わる。田舎には白人しか住んでいないのだ。
普通観光客なんてこない場所ということもあり親切に話しかけてくれる人が多かった。やはりローカルなエリアの方が好みだ。
ド田舎というよりは、まさにアメリカの家!といった感じの広々とした家が並んでいる住宅地が多かった。
まとめ
都市の人種構成について、マクロに見ると市街地は多種多様な人種が集まり様々な文化が混ざり合っているというのがわかった。
しかしミクロに見てみると、人種ごとに異なる地区に住んでいることがわかる。イタリア系の移民とか、アイルランド系の移民とか、東南アジアやメキシコなど、特定の地域からの移民が特定の地域に固まって生活を送っているのだ。
郊外や田舎ではこの現象はより顕著で、都市部から少し離れた郊外には黒人が多く住んでいる一方で、田舎には白人ばかりが住んでいる。
そう考えると、「人種のるつぼ」という言葉は少し不適切な気がする。多様な人々が完全に溶け合い混ざり合っているわけではないからだ。近年では「人種のサラダボウル」という表現がされているようだ。
サラダボウルはキャベツやトマトが同じ皿に盛られるが、溶け合わずに個々が形を保って存在している。こちらのほうがよりアメリカの実態に近い気がする。
アメリカは多様性の国だ。でも、多様性とは「溶け合って一体となる」ことを意味しない。自分とは違う人種、文化、宗教の人々がいる。そういったことを認識する「寛容性」を持つことが真の意味での多様性なのだろう。
結論:アメリカは人種のサラダボウル
……といったところで今回はここまで。
次回は留学を終えてから日本に帰るまでの寄り道の話をしたい。
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