プロダクトマネジメント⑤〜プロダクト主導組織〜
前回に引き続き、『プロダクトマネジメント』のまとめを書いていきます。
今回は、アウトプットではなくアウトカムを中心に活動する、プロダクト主導組織に必要な要素について説明します。
プロダクト主導組織とは
プロダクト主導組織は、プロダクトの成功が事業成功と価値創出の原動力であることを理解し、プロダクトの成功に重点を置いて組織を構成し、戦略を立てます。プロダクト主導でない以下の3つの組織形態は、ビルドトラップにはまる可能性があります。
セールス主導組織では、プロダクトロードマップと方向性は、顧客との約束によって決まります。スタートアップの初期ステージでは、重要顧客と密にやり取りすることも必要ですが、大きくなってからもそれを続けていると、戦略を立てたり、組織を成長させる可能性に気付く余裕がなくなってしまいます。
ビジョナリー主導組織は、ビジョナリーがプロダクト戦略を考えて、組織の方向性を決めます。スティーブ・ジョブズのいたアップルが分かりやすい例ですが、適切なビジョナリーがいれば強力なものの、持続可能な組織形態ではありません。
テクノロジー主導組織は、最新のクールなテクノロジーを軸にして進みます。問題は、マーケットを踏まえた価値主導の戦略の欠如に悩まされることです。テクノロジーはソフトウェア企業の成功に不可欠ですが、それだけではプロダクト戦略を推進できません。
戦略レベルに応じた進捗共有の場をつくる
組織における透明性は非常に重要です。リーダーがチームの現状を理解できれば、一歩引いてチームに実行を任せられます。逆に進捗が不透明だと、リーダーは詳細な情報を求めるようになり、チームの動きも遅くなってしまいます。
健全な透明性を確保するためには、戦略フレームワークに沿ったコミュニケーションが必要です。4つの戦略レベル(ビジョン、戦略的意図、プロダクトイニシアティブ、オプション)は異なる時間軸を持っており、それに応じて進捗を共有すべきです。
進捗共有のやり方としては、ビジネスレビュー、プロダクトイニシアティブレビュー、リリースレビューの3つが推奨されています。
ビジネスレビューは4半期ごとに開催し、幹部レベルの人たちで、戦略的意図とアウトカムについて財務的な観点で進捗を議論します。
プロダクトイニシアティブレビューも4半期ごとに開催し、CPOやCTO、PdMなどで、プロダクトイニシアティブに対するオプションの進捗をレビューし、戦略を調整します。
リリースレビューは毎月開催し、機能がリリースされる前に何がリリース予定なのかを伝えます。
以上のレビューを行う主な目的は、目標達成に立ちはだかっているリスクを特定することにあります。
顧客に伝えられるロードマップを設定する
ロードマップというと、どの機能をいつまでにリリースするか、といった約束事のように捉えられがちです。そうではなく、プロダクトの戦略や現状を説明するものになっているべきです。
ロードマップは、開発チームに方向性を示したり、顧客に伝える機能についてセールスチームと話すのに使えますが、状況に合わせて常時更新されていくものなので、誤った期待を抱かせないよう、聞き手に合った伝え方が必要です。ソフトウェア開発は変化が激しいので、開発の状況を伝えるのは避けたくもなりますが、それでも顧客に伝えられるロードマップがなければ、セールス戦略とプロダクト戦略の整合が取れなくなってしまいます。
失敗の自由を与える
アウトカムで成功を計測するようにしても、失敗して学習できるだけの心理的安全性がなければ、チームは新しいことに挑戦できないでしょう。適切なプロダクトを作るためには、解決すべき問題と適切なソリューションを探索すべきで、そのためには実験と学習を繰り返す必要があります。時には突拍子もない挑戦をするかもしれませんが、そうした実験が許されなければ、チームは現状を変えようとはしません。
多くの企業はゆっくりと失敗します。プロダクトをリリースするものの、そのプロダクトがどれだけの価値を生み出したのか計測しません。それでは、長い時間をかけて徐々に資金を使い果たしたのに何も手に入らない、といった大きな失敗に繋がってしまします。
そうではなく、失敗の自由を与えて、早い段階から素早く、目立たず、低コストで小さな失敗を繰り返すようにしましょう。そこからうまくいきそうなことを学習することで、マーケットでの失敗リスクを減らせます。
顧客中心主義となる
本当の意味でプロダクト主導になるには、顧客に焦点を当てる文化も必要です。顧客の立場になって、「どうすれば顧客が喜んでくれて、ビジネスを前にすすめることができるか」と自問することが重要です。顧客中心でいることで、どんなプロダクトが顧客にとっての価値になるのか理解できるようになります。
まとめ
これまで、アウトカムで成功を計測することや、プロダクトマネージャーの役割、戦略展開、プロダクト開発プロセス、組織形態などについて紹介してきました。色々な要素がありすぎて、組織の現状とのギャップに途方に暮れる気持ちになるかもしれませんが、プロダクトのカタと同様に、次に目標とする状況に向けて地道に行動していくしかありません。まずは読者自身から始めて、周りを巻き込んでいき、最終的には組織全体を変えることが、ビルドトラップから抜け出すという活動なんだと思います。
『プロダクトマネジメント』のまとめは今回で終わりになります。個人的には非常に良書だったので、これからも何度も読み返して実践し、自分の口で語れるレベルになっていきたいと思います。その過程で新たな発見などがあれば、また本書を引用してnoteを書くかもしれません。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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