オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第51回 オーストラリアで農産物のブランド盗用を防ぐには? 〜その3:品種を守る〜
前回まではオーストラリアで農作物のブランドの名前を守る「商標:Trademark」について解説してきましたが、今回は農作物の品種自体(部位や細胞等含む)を守る「特許:PBR:Plant Breeder's Rights (植物品種権)」について詳しく説明します。これは新しい植物などの品種を保護するための知的財産です。オーストラリアで栽培するために日本品種の農作物を導入する場合など、品種の盗用を防ぐためにPBRを取得することが有効となります。
海外の事例では、同様の登録の怠りにより、他国が日本のイチゴ品種や、シャインマスカットの苗木を 許可なく持ち出して利益を得ています。このことで生じた損失は数百億円以上で、 日本のフルーツ産業に大きな被害をもたらしています。 登録には高いハードルと時間、費用がかかりますが、将来の品種の保護、流出防止には必要不可欠です。
PBRの利点
PBRの所有者は、新しい品種の保護によって得られるビジネス上の利益を享受する権利(独占権)を持ちます。PBRによる保護が認められると、競合他社が権利を勝手に利用してを栽培をしたりして利益を得ることを防ぐことが可能です。つまり、PBRで守られた新しい品種を販売してその利益を独占する権利は、PBR所有者に帰属します。
PBRの登録には平均して約$2,300(2023年の時点)の費用がかかり、登録までの期間は植物の種類によって異なり、約2. 5年ほどかかることがあります。保護期間も植物の種類によって異なりますが、多くの植物種については20年間、木やブドウの蔓(Vitis vinifera)については25年間適用されます(延長も可能)。ただ、保護期間中は毎年の更新手続きが必要となります。
ライセンスを活用して収入を増やすチャンス
PBRは、新しい品種の製造・販売だけでなく、他の方法でも「ライセンス」を通じて経済的な利益を得ることができます。PBRをライセンス提供することで、他社に品種を使う権利を与えることができます。これにより、新たなビジネスチャンスが広がります。また、ライセンス契約によって新しい品種を製造・販売する際には、ロイヤルティ(権利の使用料)を受け取ることも可能です。ライセンス提供による追加収入を得ることで、ビジネスの収益を最大化する一助となるでしょう。
PBRの認証を得るには?
PBRの認証取得するためには、資格を持つ専門家と育成試験を行うことが必須条件です。
まとめ(日本の農業者の皆様へ)
PBR取得のプロセスは複雑ですが、 資格を持つ専門家と連携し、綿密な育成試験を行うことで認証を得ることができます。 日本の農業者にとって、PBRはオーストラリア市場での成功への道を開く重要なツールとなります。 多様なニーズを持つオーストラリアの消費者に、 高品質な日本品種を安心して提供するためにも、PBR取得を真剣に検討する価値があるかもしれません。
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