オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第38回 未曾有の「生産(肥料)コスト」上昇の対策(その2) 〜生産者側の視点から考える〜
前回比較した「生産コスト」の中でも、際立ってコストが上昇していた「肥料コスト」を削減することは、生産者にとって、最優先事項と言えます。また、肥料減を実現しても今までの収量をどう維持できるかが、焦点です。
輸入に頼るオーストラリアの「肥料」
植物の生育には、品種、栽培条件により、約13−17種類もの肥料要素が必要とされますが、三大要素と呼ばれる窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)以外は、微〜中量要素と呼ばれ、施肥量が少なく済み、生産コスト上昇に然程影響が出ません。一方で三大要素は約5割を輸入に依存しており、それが肥料コスト増大の要因となっています。
肥料三大要素の効果の分析
また、植物内での三大要素の働きを理解することも重要と言えるでしょう。三大要素の大まかな働きについては、「バカね!:窒素『葉(ば)』、リン酸『果・花(か)』、カリウム『根(ね)』」と覚えると、栽培管理で役に立ちます。例えば、作物の葉の生長が遅い場合、窒素成分の不適切な施肥量が一要因と考えられ、直ぐ対策を考えることができます。
適量のみ施肥する(減肥)技術の確立
肥料コスト上昇を契機とし、施肥量、施肥方法を見直す動きが活発になり、農業試験場が定める適切な施肥方法「4R=Right product、Right rate、Right time、Right place(適切な肥料・量・時間・場所)」に基くR&Dが各州で実施されています。
まとめ(日本の農業者の皆様へ)
土壌分析の徹底: まずは自分の畑の土壌状態を正確に把握することから始めます。過剰な施肥を避け、必要最小限の肥料で最大の効果を得るためには、土壌分析が不可欠です。
精密農業技術の導入: ドローンやセンサーを活用した可変施肥技術を導入することで、畑の各部分に必要な量だけ肥料を施すことができます。これにより、肥料の無駄を減らし、コスト削減と環境負荷軽減の両立が可能になります。
有機農法の検討: 化学肥料の代替として、堆肥や緑肥の活用ができます。これらは土壌の質を改善し、長期的には肥料コストの削減につながります。
輪作システムの導入: 異なる作物を順番に栽培することで、土壌の栄養バランスを保ち、特定の肥料成分の過剰な消費を抑えることができます。
最新の研究成果の活用: 農業試験場や大学との連携を強化し、最新の施肥技術や品種改良の成果を積極的に取り入れます。
日本の強みである緻密な管理技術と高品質生産を活かした独自の減肥モデルを構築することで、コスト削減と環境保全の両立を実現できるはずです。変化を恐れず、データと科学に基づいた冷静な判断と柔軟な対応が、日本農業の更なる発展につながるでしょう。