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オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第24回 苦難の農業経営③ 人件費を抑えるノウハウ(その2)

今回も引き続き、農業経営における重要な課題、人件費の抑制についてお話しします。近年、多くの農業生産者が売上低迷に悩まされる中、人件費の適切な管理は経営存続の鍵となっています。私は、オーストラリアで1日50人を超える多国籍の労働者をマネジメントした経験があります。その経験を基に、効果的な人件費抑制と労働者管理のノウハウをお伝えします。

オーストラリアの農業現場での作業労働者

  1. 多様な労働者: 主に東南アジア出身の出稼ぎ労働者を雇用しています。「Protection Visa」という特別なビザで来豪する人も多く、彼らの多くは英語でのコミュニケーションが困難です。

  2. 衛生管理の課題: 基本的な衛生管理(手洗いや清掃など)の知識がない労働者も少なくありません。食品安全の観点から、この教育も重要な課題です。

  3. 高い人件費: オーストラリアの人件費は日本の2倍以上です。そのため、効率的な労働管理が経営存続の鍵となります。

具体的な労働者管理方法

このような状況下で、以下の方法を採用しています:

  1. シンプルなコミュニケーション:

    • 言葉の壁を越えるため、必要最小限の情報のみを伝達します。

    • 掲示物は絵や記号を多用し、文字に頼らない情報伝達を心がけます ※例えば、「手洗い」は手を洗う絵、「マスク着用」はマスクをした顔の絵を使用します。

  2. ナンバー制度:

    • 毎朝、各労働者にナンバーカードを配布します。

    • 作業場所にはナンバーが掲示されており、労働者はそのナンバーに対応する場所で作業します。※これにより、言語に頼らず作業位置の指示が可能になり、また個人の責任感も高まります。

  3. 進捗管理:

    • スーパーバイザーは、各ナンバーの作業進捗をチェックします。※例えば、「No.5の作業が遅れている」「No.10の品質が良い」といった具合です。

  4. パフォーマンス管理:

    • 特に収穫作業では、各作業員の作業スピードと作業量(kg/時間)を厳密に記録します。

    • 基準未達の場合は、その場で人員の入れ替えを行います。※これは日本ではタブー視されることもありますが、高コスト環境(オーストラリアは日本に比べ人件費が2倍以上)では必要不可欠な措置です。

「見える化・仕組み化」の導入

ここで重要なのは、「見える化・仕組み化」の導入です。これにより、管理者が常に現場にいなくても、生産性を維持できるようになります。

  1. リアルタイムの作業スピード管理(チームリーダーは、各作業員の作業スピードをタブレットなどでリアルタイムに記録し、マネージャーに報告する):

    • 例:「No.7 ピッキング量 10kg/時間」「No.12 パッキング量 20kg/時間」といった具合です。

  2. 評価の可視化(毎朝の朝礼で、前日の作業スピードランキングを発表する):

    • 例:「1位:No.5 ピッカー 25kg/時間 、2位:No.8 パッカー 35kg/時間...」※トップ作業員には小さな褒賞(お菓子や飲み物など)を用意し、モチベーション向上を図ります。

  3. 作業管理ソフトの活用(単なる記録ではなく、作業効率の評価ツールとして活用する):

    • 例:時間帯別、作業種別の効率を分析し、最適な人員配置や作業計画に活用します。

日本で外国人労働者を管理する上で有益な情報

  1. 効率的な労働管理システムの構築(作業効率の可視化システムを導入):

    • 例:バーコードリーダーで作業開始・終了時間を記録し、収穫量と連動させて効率を自動計算するシステムなど。

  2. 多言語対応のコミュニケーションツール(絵文字や記号を活用した指示ボードの作成):

    • 例:AI通訳アプリ(スピーカー付き)の導入(話しかけると即座に多言語に翻訳してくれるもの)。

  3. モチベーション向上策(週間MVP制度の導入 [最も効率の良かった作業員を表彰] ):

    • 例:チーム制の導入と目標達成報酬(例:今週の目標収穫量を達成したチームに報奨金)。

高齢化が進み、増加する外国人労働者に対応する施策を考える

上述の施策により、管理者の負担軽減と同時に、作業員の生産性向上を図ることができます。高齢化が進み、増加する外国人労働者に対応する上で、これらの手法は非常に有効です。
効率的な労働管理は、持続可能な農業経営への第一歩となるはずです。皆様の農業経営の発展を心よりお祈りしております。

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