「日本政府ワクチン分科会、ワクチン接種中止を検討」はミスリード 実際は4回目基準のみ慎重化
検証対象
判定
ミスリード (判定の基準について)
厚労省ワクチン分科会の脇田隆字会長は、4回目のワクチン接種に関して、コロナ対策におけるワクチンの位置づけを大きな視点で考える必要があると発言しているが、分科会においてワクチン接種自体の中止を検討しているとは言っていない。
ファクトチェック
3回目の新型コロナワクチンの接種率は2回目までの接種に比べ、伸び悩んでいる。こうしたなか、4月12日にまとめサイト「Tweeter Breaking News-ツイッ速!」(以下「ツイッ速」)が「日本政府ワクチン分科会、ワクチン接種中止を検討」と題する記事を公開。本稿執筆時現在、記事はTwitterアカウントからの投稿で約4800RTを獲得している。
産経新聞記事の内容
「ツイッ速」の記事では、2022年4月9日の産経新聞の「度重なる追加接種で懸念も 4回目接種に専門家『立ち止まり検討を』」と題する記事のYahoo!ニュース版が引用されている。
産経新聞の記事の中では「ワクチンは感染や重症化予防策の一つであり、ほかの感染症対策の徹底が重要なことは言うまでもない」と触れた上で、厚生労働省予防接種・ワクチン分科会の脇田隆字会長の「コロナ対策におけるワクチンの位置づけを大きな視点で考える必要がある」という発言が取り上げられている。
3月24日に行なわれたワクチン分科会で脇田氏は次のように述べており、産経新聞の記事で取り上げられている発言はこれを要約したものであるようだ。
誤解を招きかねないタイトル
「ツイッ速」記事への反応としてTwitter上では、3回目を含む現在進行中の全てのワクチン接種について中止が検討されていると誤解した声が散見された。
しかし、実際には上述のように、今後行われ得る4回目接種について、3回目までと比べて議論が必要であるという声があがっただけである。
脇田氏以外の分科会の委員も、3回目までの接種に関して見直しを求めるような発言はしていない。また、4回目接種に関しても、「寸前にやめることを恐れない」(産経新聞論説委員・佐藤好美氏)や「4回目接種する準備はしても、しないという選択肢も考えなくてはいけない」(国立感染症研究所主任研究官・信澤枝里氏)といった意見が出たものの、「準備に関しては進めていく」という方針については異議なしとしていて、3回目を含めた全てのワクチン接種を直ちに中止するというような意味ではない(議事録参照)。
産経新聞の記事内では、埼玉医科大学の松下祥教授の「4回目以降についてはいったん立ち止まり、検討すべきだ」という意見も取り上げられている。「ツイッ速」がヘッダー画像に用いているのも松下氏の写真だが、これも4回目に限った話である上、松下氏は分科会メンバーではない。
従って、「日本政府ワクチン分科会、ワクチン接種中止を検討」という「ツイッ速」の記事タイトルは、分科会で実際に出た意見を過剰に解釈したものであり「ミスリード」であると判定した。
4回目接種は当面特定の人のみ
厚生労働省は4月27日の分科会で、5月末から全国で4回目の接種を始める方針を決定した。対象は当面、60歳以上の人や、18歳以上で基礎疾患があるか医師が重症化リスクが高いと判断した人に限定するとしている。
(森青花、大谷友也)
謝辞
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