マイアミの奇跡を起こしたブラジル人ゴールキーパーコーチから学んだ本当のコーチング
以前、中学校のサッカー部コーチをやっていたころ、三重県代表Uー14コーチも兼任していました。
東海地区の代表チームが集まって東海代表のセレクションも兼ねた練習会が行われる機会に、日本代表ゴールキーパーの川口能活さんの当時コーチであったド・プラドジョゼ・マリオ・ソアレスという(以下マリオ)というゴールキーパーコーチに指導してもらうことがありました。
ブラジルに勝つという奇跡を起こした全日本代表のゴールキーパーを教えている人ですから、どんな練習をするのかとても興味がありました。
さぞかし、面白い、変わった練習をするのかと思いきや、見てびっくり、
全ての練習がとてもシンプルな練習方法でした。
その日に行ったトレーニングは
・キャッチボール
・ゴールセービング
・ランニング
例えばキャッチボールは、投げて取る。
たった、それだけ。
でも、3回ぐらい投げるだけで、練習していたゴールキーパー達は
みるみるうまくなっていきます。
「えー、なんでー?」
と思ったのですが、彼の行動を見ているとだんだん、その秘密がわかってきました。
それは、彼の承認がすごかったのです。
彼は、キャッチできたら、力を込めて「オッケー」とか「グッド」とか
必ず、何らかの承認の言葉を言って歩き回っていました。
で、うまくできていない選手がいると、そこまで全力で走っていて、
こうやって取るんだよと自分で具体的にやって見せます。
ここはティーチングします。
そして、もう一回やらせてみて、取れたら「グッド」と承認します。
たったそれだけ。
でも、その時にあることに気づいて「ガーン」となりました。
何に気づいたかというと、その時に見た、選手のパフォーマンスを一瞬で変えたマリオの指導法と、当時の日本の指導者の指導方法は真逆だったということです。
当時の日本の指導者は、きちんとキャッチできたときは、当たり前なので、何も言いません。
取れなかったときは、「なぜ取れないんだー!」と激を飛ばします。
マリオはきちんとできた時にはきちんとオッケーのサインを伝えます。できない時は、きっちり教えます。なので選手も安心して思い切って自分自身を出すことができます。
ここで、学んだことは、私たち人間は「これでいいのだろうか?」と常に不安に思っているということです。
それに対して何らかのフィードバックをだしてあげることで、その不安に行っているエネルギーが前に向くエネルギーに変わる。
教育で一番有効な指導方法はフィードバックだという研究結果もあります。相手の動きに対して適切なフィードバックをこまめに出していくこと、特にポジティブな部分を多く出しているのがマリオの指導の特長でした。
ポジティブなフィードバックは、コーチングのスキルでは承認と呼ばれます。それを1回行っただけでは、変わらないかもしれませんが、これが何個かつみあがることで、相手に安心感を与え、勇気がわき、行動が変わるのかも知れません。
承認とは相手の素晴らしいところを褒めることだと思っていましたが、何気ない行動にオッケーを出してあげること、そのことで、相手の不安を減らしていくことが承認の本質だと気づかされた出来事でした。
そのような活動が、徐々に相手の才能を開花させるベースになっているのだと気づきました。
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