技術向上や成功確率を上げるための「究極の鍛錬」
株式会社アイリッジ取締役の渡辺智也(わたなべともや)です。
※Twitterもやっています!
先日「習得への情熱」を紹介しましたが、引き続き、技術向上や成功確率を上げるためのポイントを知るべく「究極の鍛錬」も読んでみました。
こちらは2010年発刊と「習得への情熱」よりもさらに古いのですが、それでも内容から得られるエッセンスは、仕事はもちろんのこと、私生活にも活かせそうなことが多々ありましたのでご紹介します!
<目次>
1.モーツァルトとタイガー・ウッズに共通する原則を紹介する本
2.私が注目した「鍛錬」のポイント
3.プレゼンや部下へのフィードバックに活用するなら
1.モーツァルトとタイガー・ウッズに共通する原則を紹介する本
「究極の鍛錬」は、ジョフ・コルヴァンという、アメリカ「フォーチュン」誌の編集主幹として著名な人の本です。
彼はアメリカでもっとも尊敬を集めるジャーナリストの1人として広く講演・評論活動を行っており、経済会議「フォーチュン・グローバル・フォーラム」のレギュラー司会者も務めているのだそう。
ハーバード大学を最優秀学生として卒業し、ニューヨーク大学スターンビジネススクールでMBAを取得するなど、自身もビジネス界に精通しています。
この本では、世界的な業績をあげている人々は一般人とどこが違うのかを調べるため、彼が徹底的な調査を行い、その結果をまとめています。
モーツァルト、タイガー・ウッズ、ビル・ゲイツ、ジャック・ウェルチ、ウォーレン・バフェットなど、天才と呼ばれる人たちには共通する原則があったそうで、その原則に基づいて鍛錬を行っていたのだとか。
この「鍛錬」のポイントがまとめられている本、ということで、仕事での成果も追求したいし、趣味の卓球もうまくなりたい、という思いから手に取ったわけです。
鍛錬を重ねた人は通常の人が気づかない目印を理解したり、先が見えたりできると言いますが、それを活かすためには鍛錬を要するというのが著者の意見です。これはスポーツや音楽だけではなく、ビジネスでも通じていて、例えば、ビジネスに活かす例として「顧客満足度の理解」というのがあります。どの会社も顧客の満足度を向上させるためにどうすればいいか日々考えていますよね。ウォルマートを創業したサムウォルトンは、日々の観察から、顧客満足度を測る指標として従業員満足度が先行指標になると考え、従業員満足度を測定することで、お店の顧客満足度が下がっていないかを確認していたと言われています。
また、卓越した能力を持つ人は自分の専門分野の情報について驚異的な記憶力を持っています。私は昔、将棋の棋士を目指して毎日何時間も将棋を指していましたが、その当時は最初から中盤くらいまでどのような手筋で駒を指していったのかを覚えていました。将棋の駒をグループ単位で認識し、それが担う戦略的な役割まで記憶している・・・そんなイメージです。
英語の単語も同じですね。見慣れていればすぐに思い出しますが、でたらめなアルファベットだと単語は覚えられません。
こういった身近な例を見ても、鍛錬をすることで、情報をうまく引き出す構造を手に入れられるのだと思います。
2.私が注目した「鍛錬」のポイント
様々なポイントが紹介されているのですが、私が注目したのは次の3つのポイントです。
①自分の弱点を繰り返し練習する
②フィードバックを受ける
③決して面白くない訓練を続ける
ひとつずつ紹介してみますね。
①自分の弱点を繰り返し練習する
俗に、人間の技術の向上は累積練習時間に比例すると言われていますが、ただ闇雲に練習すれば上手くなるわけではありません。この本では、自分の置くポジションを3つのゾーンに分けています。すなわち「コンフォートゾーン」、「ラーニングゾーン」、「パニックゾーン」です。
「コンフォートゾーン」は常に技術を習得し、慣れ親しんだ状態です。このゾーンでの練習をすれば、自分はすでにできる技術の練習になるためストレスを感じませんが、技術が上達するわけではありません。一方で、「パニックゾーン」では技術レベルが高すぎて思考停止に陥ってしまい、技術向上以前にやる気を削がれます。技術レベルを上げるためには、「ラーニングゾーン」に身を置き、繰り返し練習することが大切だそうです。
②フィードバックを受ける
フィードバックといっても、口頭で誰かからもらうものに限定されてはいません。
たとえば、自分の動きを動画に撮影し、直後に見返してみる、ということもフィードバックの手法のひとつです。
自分のプレゼンテーションを撮影して見返すことほど苦行はないな、と思いますが、こうした即時の気づきと改善のための情報を得ることは、成長速度を早めていきます。特にビジネスでのスキルアップは相手を伴うことが多いため、フィードバックをもらうことが重要ですよね。スポーツや音楽ではやっていることをビジネス上ではできていないと自分も痛感します。
どんな偉人も成功者も、自分の課題に向き合い続けてきた、ということに非常に納得感がありました。
③決して面白くない訓練を続ける
①で紹介したとおり、自分の能力向上のためにはコンフォートゾーンを抜け出し、徐々に高くなる課題設定をしていくことが必要です。
その課題となる特定部分に何度も何度も働きかけるとどうしても「飽き」がきてしまう、という難点がありました。
「飽き」が生まれる背景には、繰り返しの練習によって「この動きが〇〇の成果・変化につながっている」という実感が持てなくなったときに起こるのかもしれません。
この本では一定の累積練習量を保つためのモチベーションはどれだけ自分を信じられるかだと言われています。そのため、乗数効果ということを紹介していました。究極の鍛錬に耐えられる、そうすると、練習が能力を生み出し、また今度は高まった能力が練習を耐えられるようになる、それを繰り返していくことでモチベーションを保ちながら累積練習量を増やし、技術を向上させていくということです。
先のモーツァルトやタイガーウッズも同世代と比べて早く鍛錬することで、小さな優位性が生まれ、それが繰り返されることでより大きな優位性になり、自信とスキルアップにつながっていったということです。紹介されているほかの事例でも、「地道な反復練習は結果に必ずつながる」と自信を持っている人物があとあと大成するものがあり、納得感が得やすくなっているように思います。
総じていうと、
・仕事でも卓球でも、事前の練習=鍛錬が必要で、
・鍛錬のポイントは自分の弱点を継続して繰り返し練習し、
・フィードバックを得ることでさらなる課題を見つけ出し、
・地道に面白くない練習を一定量繰り返すこと
が、成果の秘訣である、ということと理解しました。
3.プレゼンや部下へのフィードバックに活用するなら
この本を読んで思い返していたのが、先日の卓球の試合前のスピーチ(?)です。
スピーチに上手く笑いを取り込むことははうまくいきましたが、多少冗長してしまい、最後には飽きがでてしまったことには課題が残る結果となりました。
この課題をどう乗り越えていくのか。
「究極の鍛錬」からの学びを活かすとすると、
・プレゼンが上手だなぁ、と思う人ーーー孫正義さんのプレゼンテーションなどーーーをいろいろな観点からメモを取り、忘れた頃にそのメモに基づく講演原稿を組み立ててみる。
・そして実際に自分で話してみて、その様子を録画し、第三者からフィードバックをうける。
これを繰り返せば、自分のプレゼンテーションが加速度的に上達しそうです。
ほかにも、立場的に部下に厳しいことを伝えなければならないとき。
伝えるメッセージを意図ごとに分け、繰り返し伝え方の練習をして、録画を見ながら改善すると、より伝わりやすく、相手の行動を変えることのできる対話になりそうです。
趣味の卓球はもっとわかりやすく、サーブならば、ボールの高さ、ラケットの速度、面の角度などそれぞれに分けて練習したうえで、動画にとって改善ポイントをすぐにフィードバックしてもらう、といった工夫につなげられそうです。
シンプルで基礎的な動作ほど、自分自身での納得感がなければ続かないので、こうした取組みを俯瞰して見ながら気づき得ていくことも同時に計画できるとよさそう、そんなふうに思いました。