見出し画像

提案書の神は細部に宿る~情報を削ぎ落す~

株式会社アイリッジ取締役の渡辺智也(わたなべともや)です。

以前、現場に近いことも久しぶりにしっかりと時間を取りながらマネジメントしているなかで、提案書作成について自分なりのこだわりがあることに気づきました。
今回はその「こだわり」についてまとめてみます。


1.よい提案書と悪い提案書の違いとは?

みなさんは、「よい提案書」と「悪い提案書」について考えたことはありますか?
私の経験から言うと、「よい提案書」とは 相手が求める情報を適切に伝え、納得感を持たせるもの です。逆に、「悪い提案書」は 相手の関心に触れず、読み手が「これで何を言いたいの?」と迷ってしまうもの だと考えています。

ビジネスでは、提案書を見ない日はないといっても過言ではないほど、日々様々な提案書を目にしますよね。
自分が作るときもあれば、部下や同僚が作った提案書をレビューすることもあります。
部下や後輩の提案書のレビューの機会があったときに、そこでいくつか気づいたことがあります。

例えば、社内向けの資料と社外向けの提案書が同じような仕上がりになっていたり、相手のニーズを捉えきれておらず、一方的な内容に終始していたりするケースです。「これは誰に向けた資料なんだろう?」と思うような提案書を目にするたび、つい「惜しいな」と感じることが増えてきました。

そこで、改めて 「よい提案書」とは何か? を考え直したのですが、結局のところ、それは 細部にこだわり、必要な情報だけをシンプルに整理すること に尽きるのではないかと思うのです。

2.提案書の神は細部に宿る

「提案書の神は細部に宿る」
これは、前職の上司が私によく口にしていた言葉です。

社内向けの資料であれば、多少体裁が崩れていたり、説明が足りなかったりしても問題にならないかもしれません。しかし、社外向けの提案書は、場合によっては「名刺代わり」になる ものです。つまり、提案書そのものが自分たちの印象を左右するのです。

このことを意識して作ると、「相手にとって読みやすいか?」「違和感を与えていないか?」「欲しい情報がスムーズに伝わるか?」といった視点が自然と生まれてきます。しかし、実際にはそれらのポイントが欠けている提案書も少なくありません。

しかし、提案書のなかにはこれらのポイントを外してしまっているものもあります。
・1枚のスライドの中に複数のフォントが混じっている
・表組やグラフを使っているのにレイアウトがページによって異なる
・ページ番号の位置がずれている
・色味が統一されていない
などなど、枚挙にいとまがありません。こうした些細な違いが積み重なると、無意識のうちに「なんだか雑な資料だな…」という印象を与えてしまうのです。

「よい提案書」にしていくためには、
・情報が整理されている
・見やすい/違和感のないレイアウト
・視覚情報が多すぎない
など、細かなところまで意識を高める必要があります。それだけで「この提案はしっかり考えられている」と思わせる効果があります。つまり、提案書の完成度は内容だけでなく、細部の統一感 によっても決まるのです。

3.情報を削ぎ落す勇気が必要

では、細部に神を宿らせるために、何をしたらよいのでしょうか。

私が最も大切だと思うのは、「削ぎ落とす勇気を持つこと」 です。
さらに付け加えるならば、「相手が欲しい情報のみが書かれているか」ということにこだわること。

忙しい決裁者が提案書に目を通すとしたら、せいぜい10枚程度でしょう。
もしも100枚を越える枚数になっているとしたら、1,2枚の自己紹介のあと、すぐにエグゼクティブサマリーを添付して、その提案書で伝えたい要旨を明確に提示しておく。
そのエグゼクティブサマリーを見たら、全体で何を伝えようとしているのか、どのポイントだけは見るべきなのか、を適確にとらえてもらえるでしょう。
(自社の成果や事例を何枚も冒頭で紹介することは、相手にとっては欲しい情報ではないので、むしろ心象を悪くすることすらあるかもしれません

だからこそ、まずは 「相手が本当に知りたいことは何か?」 を考え抜き、その情報を軸に提案書を構成することが大切です。

例えば、
• 自社の紹介は1〜2枚にとどめ、長々と実績を語るのは避ける
• 提案の要点を エグゼクティブサマリー にまとめ、冒頭で明確に提示する
• 1つのスライドに複数のメッセージを詰め込むのではなく、キーメッセージごとにスライドを分ける

こうすることで、読み手が瞬時に要点を理解でき、伝えたいことがブレることもなくなります。

また、情報の詰め込みすぎによってスライドのレイアウトが崩れることもあります。文字数が多い・言いたいことがまとめきれていないため、文章が長くなりスペースをとってしまった結果、表やグラフが少しずつ右や下に押し出されている、ということが起こっています。
これでは、読み手はレイアウトのずれから生まれる違和感や気持ち悪さを感じながら読むことになりますので、せっかくの提案もよい結果につながらなくなります。

あくまでも「相手が知りたいこと」に関する情報を、できるだけ削ぎ落して、キーメッセージとして伝えていく。
ときには削ぎ落す勇気が必要かもしれませんが、「よい提案書」に進化していくために必要なトレーニングだと考えています。


提案書は単なる資料ではなく、自分たちの価値を伝える重要なツール です。そのためには、細部までこだわり、相手の視点で整理し、必要な情報だけをシンプルに伝えることが求められます。

私自身、提案書については何度も鍛えられ、そのたびに「もっとシンプルに」「もっと伝わりやすく」と試行錯誤してきました。今でも完璧な答えはありませんが、ひとつ確信しているのは、「よい提案書は細部の積み重ねで決まる」ということ。

もし、みなさんが「もっと提案書のクオリティを上げたい」と思うなら、まずは 余計な情報を削ぎ落とし、見やすさにこだわること を意識してみてください。

提案書は、工夫次第でどこまでも進化させられるもの。私もまだまだ鍛えられ続けていますが(笑)、また機会があれば、さらに実践的なテクニックやTipsを紹介したいと思います!

いいなと思ったら応援しよう!