2021年のOMOとその未来
こんにちは、株式会社アイリッジ取締役の渡辺智也(わたなべともや)です。
※Twitterもやっています!
秋から、「CHOOSEBASE SHIBUYA」や「TOUCH TO GO」、「b8ta Tokyo」といったOMO(Online Merges with Offline)店舗で実際に様々な体験をしてきました。
その後、古巣の楽天が「Rakuten Fashion」のOMO型ポップアップストアを渋谷スクランブルスクエアに出店していて立ち寄ったので、その内容もふまえつつ、今回はOMOに関わる業界で働く経営者としての2021年時点での気づきや未来についてまとめてみようと思います。
<目次>
1.楽天ファッションのOMO型ポップアップストアの特徴
2.2021年のOMOの進化
3.OMOの進化に向けたチャレンジとは
1.楽天ファッションのOMO型ポップアップストアの特徴
楽天のポップアップストアは、約2~3週間ごと2期にわたって「ニット」と「コート」に焦点があたり、Rakuten Fashionの商品が実際に試着できる、という試みで展開されていました。
楽天ならではのマーケティングデータとファッション誌や女性誌で活躍するスタイリストのノウハウを生かして、約30ブランドの秋冬ウィメンズアイテム約180点が展示・販売されていたとのこと。
OMOストアなので店頭にはカラー・サイズが異なる商品が1点ずつ飾られていて、ハンガーには名刺サイズのカードがかかっており、そこに掲載されているQRコードをスマートフォンで読み取って、Rakuten Fachionのサイトで購入する形式です。
このカードが持ち帰れることが「CHOOSEBASE SHIBUYA」や「b8ta Tokyo」とは異なるアプローチでした。
このカードは、時間のあるときにゆっくりアクセスでき、商品の購入に迷ったときにじっくり考えることをサポートしてくれるアイテムとして効果的だと感じました。
一方、「CHOOSEBASE SHIBUYA」や「b8ta Tokyo」は大通りに面している、いわゆる路面店ですから、通りすがりの人もふらりと店内をのぞけるのですが、こちらは5階まで上がらないとたどり着けません。そのため、試着という目的を明確に持っている人にはフィットするのですが、新規顧客の獲得は難しそうだなぁ、という感想を持ちました。
また、期間限定の店舗ということで、店内のコンセプトを統一して創り上げたり、試着しやすい雰囲気を作るということは難しそうだな、とも。
このあたりは、「体験」を売りにするOMO型をうたうとすると、さらなる工夫が求められるところかと思います。
2.2021年のOMOの進化
OMO、Online Merges with Offlineは、去年までは主だった事例の紹介は中国や米国のものが多く、日本はほんのわずかにとどまっていたところがありましたが、今年2021年に一気に日本の店舗型として具体化したように思います。
そもそも、OMOという言葉を最初に提唱したのは、中国のベンチャーキャピタルであるシノベーションベンチャーズの創業者、李開復(リ・カイフ)という人。Googleの中国部門のトップを務めたこともある方です。
このOMO戦略は2017年12月の「ザ・エコノミスト」誌で発表されたことがきっかけで、広く認知されるようになりました。
その後、OMOの事例というと中国のサービスが取り上げられています。アリババ傘下の生鮮スーパー「盒馬鮮生(フーマー)は3キロ圏内であれば、最短30分で配送するサービスとして現在のデリバリーサービスの先駆けとも呼べるものでした。また、「瑞幸咖啡(Luckin Coffee)」では、注文は全てアプリを用いて行うため、店頭で注文のための列を作ったりすることはありません。中国の都市部では、日本以上にスマホ決済などが広がっていますが、この動きをさらに企業が推し進めているように思います。
日本でOMOが進むには、
・オフラインの場でスマートフォンを通じた電子決済が広がること
・店舗側がデジタル化に対応していくこと
・店舗側が蓄積しているデータを活用していくこと
など、いくつかの課題がありました。
これらの課題が、2020年後半からのコロナ禍によって一気に進んだということもあり、2021年にOMO型店舗の開設が広がったのではないかな、と考えています。
ユーザーである私たちは買い物が手軽にでき、荷物は送ってもらえるため手ぶらで過ごすことができますし、企業はこれまでは別々だったオンラインとオフラインそれぞれの消費者行動をひとまとめのデータとして分析することができます。店舗がOMO型になっていけばいくほど、便利な生活を享受することができるようになっていくのではないかと思っています。
3.OMOの進化に向けたチャレンジとは
当然のことながら、2022年以降もOMOは進化し続けると思います。
ポイントとなってくるのは、
・店舗全体のコンセプト設計
・店舗のメディア化
・店舗内でのユーザ体験の向上
でしょう。
店舗全体のコンセプト設計は、「珍しさ」でユーザーが店に入ってきてくださる状態である現在から、「〇〇を探しにいこう」「あの店に行けば**が見つかる」といった目的提示や期待への対応に必要な取組みになりそうです。昨今のSDGsをテーマにしたような展示やメーカーが直接販売するD2C商品によって斬新な品揃えができたりとか、こうした取り組みは来年以降も増えそうです。
店舗のメディア化は、従来店舗は販売する場所だったところがOMOによって、商品やサービスをアピールする場所になっているということです。b8taや楽天のように商品を見て回り、買い物はネットでさせるようなサービスであれば、店舗内でいかにその商品のことを知ってもらうか、また、CHOOSEBASE SHIBUYAのようにSNSで拡散しやすい仕掛けになっているのかが重要になってきます。屋外の壁が広告化していったように今後は店舗内がメディア化していってその空間の中で色々なアプローチで商品を紹介するシーンが増えてくると思います。
ユーザ体験の向上は、見たい情報が即時に確認できるようなネット環境や回線速度を店内でどのように担保するか、価格や素材といった購入に直結する情報をどのように提供するか(ユーザーの便利さと企業として獲得したい情報とのバランスをどう設計するか)、アプリを使うのかWEBサイトへのアクセスとするのか、など、ユーザーの声をベースに改善を続けることが重要になるでしょう。
あくまでもOMOは「体験」を通して顧客と接点を持つ、ということですから、「体験」そのものの質を上げていくことが重要で、そのためにもサービスを提供する側である企業やマーケティング担当者が、ユーザー目線を持ち続けることが大切だな、と今回実際に自分で街に出て体験したことで再認識しました。
私も、OMO業界に関わる一員として、来年以降も盛り上げていきたいな、と思っています!