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コリジョンルールによる捕手の受難

2016年に導入されたこのコリジョンルールは、公認野球規則6.01(i)項に規定されている。
規則の大要は本塁での衝突プレイについて
①得点しようとしている走者が、走路をブロックしていない捕手または野手に接触しようとして、または避けられたにもかかわらず最初から接触をもくろんで、走路を外れることを禁じる
②ボールを保持していない捕手が、得点しようとしている走者の走路をブロックする行為を禁じる

MLBでは
捕手がボールを持っていない状態で本塁をブロックしたとしても、意図的に走路を妨害した明らかな証拠がなければ、走者をセーフにしない
ともされている。

まず①についてだが、そもそもベース付近にいた捕手めがけて衝突する事を避けるために生まれたルールなので、ルールに則って走路を空けている捕手に対してわざわざぶつかりに行く選手などもういない。
②について。ではボールを保持していれば走路上でブロックしても良いことにならないのか?

非常にわかりにくく本当に首をかしげたくなるルールなのである。

検証⑴

コリジョン3

コリジョン2

コリジョン4

ここで上の三枚について考えてみる。これは二塁塁上での盗塁時のクロスプレーだが野手はベースをまたいで捕球姿勢に入っている。この走者はアウトになったがこれが本塁で行われた場合きっとコリジョンが適用されセーフになるだろう。
極端な話、本当に極論だがこの走者にスライディングする義務は無く走っている状態のまま二塁ベースを踏んで駆け抜けてもいいので、そうなるとこの野手は完全に走路を妨害していることになるのだ。
要するに何が違うかというと、この場合はベースで止まるスライディングをしているので野手とぶつからないが本塁では止まるスライディングをする必要がないので、この状態が本塁の場合確実に衝突するという事なのだ。
よって本塁ではホームベースの前方で捕手が捕球せざるを得なくなるという弊害が生まれた。

検証⑵

検証⑴を踏まえて以下の三枚を見てほしい。9/7の横浜戦で菅野がスクイズを決められた場面。

コリジョンa

コリジョンc

コリジョンb

捕手が捕球した時点と走者との位置関係を見てもらいたい。先程の盗塁の場面よりまだ全然ベースまで余裕がある。しかし捕球からタッチの間に生還され得点されているのである。
このように本塁ではコリジョンルールがあるために捕手はベース前方での捕球を余儀なくされ、ほぼ全てのクロスプレーは追いタッチになりタイミングはアウトに見えても殆どの場合セーフになってしまうのだ。なぜセーフになってしまうかというと、本塁以外ではたとえ追いタッチになっても走者は止まるスライディングをするので多少スピードが落ちタッチが間に合う場合もある。しかしどうだろう。本塁以外で一枚目の走者の勢いでスライディングをしたら確実に怪我をする。本塁ならほぼ走っているスピードのまま突っ込めるので追いタッチでは時間的に間に合わないのである。
ましてや冒頭のルール②を当てはめれば、捕球時に(ボールを所持しているので)これだけの余裕があれば捕手が走路上にいても何も問題がないようにも思える。

本塁での得点シーンこそ試合を左右する局面なのに、各塁上におけるすべてのタッチプレーにおいて一番セーフになる確率が高いのが本塁になってしまっているのだ。

今後のコリジョンに対する対策

しかしこれをルール上仕方ないと諦めていて良いのだろうか。
ルールブックというのは野球の試合で表裏があるように、表だけでなく裏からも読む必要がある。
例えば守備妨害と走塁妨害は背中合わせであり、ギリギリのところで上手くやった方に軍配が上がることもあるからだ。これはプレーがキレイ汚いという話ではなくルールを熟知しているか否かの問題なのだ。

コリジョンについてもそうだ。本塁上での走路というのは三塁とホームを結んだ線上という事になり、ホームより後方なら走路とは言えないのではないだろうか。
そこで以下の写真を見ながら提案してみたい。

コリジョンa

コリジョン対策

二枚目は一枚目を加工したものだが捕球時のミットは同じ位置に合わせてある。二枚目のようにホーム後方で捕球すれば走路の妨害はしていないしタッチも真下になり無駄がない。二枚目なら確実にアウトにできる。

次は9月15日巨人がサヨナラ勝ちをした試合での9表DeNAの得点シーンである。

岸田1

岸田2

このシーンは代走森が素晴らしい好走を見せたのでどんな一塁手でも補殺は無理だと思うが、一枚目の実際のプレーより二枚目の加工写真の方がアウトにできる可能性は秘めていると思うのだ。

まとめ


本塁でのタッチプレー時の捕手というのはアマからの経験上、ホームベースの前方でプレーするというように身体に染みついてしまっているところはある。これをまずクリアにして一番タッチしやすい位置というのをもっと追及すべきだ。
コリジョンルールは捕手の怪我防止のために作られたルールと私は認識していて、事実MLBで捕手の怪我が多発したために出来たルールでもある。
なのに現状では捕手側の妨害ばかりに論点が移り、警告を出されるのは捕手の方という本末転倒なルールになってしまっている。ただ冒頭で書いた通りコリジョンルールによって走者がわざわざ捕手にぶつかっていくという状況は無くなったのだからこうなる事は必然ともいえる。

このようにコリジョンは走者の悪質な衝突を防ぐ為に作ったものの、いつの間にか走者に有利なルールとなってしまっているのが現状だ。
ボールを所持しない捕手がブロックするのは論外だが、冒頭の盗塁シーンのようにホームベースをまたいで捕球するのは全く妨害には当たらないと思う。この時に走者がスライディングではなく体当たりしてきた時にこそ、走者にコリジョンルールが適用されるべきであり、捕手を守るための安全な方法を捕手だけに課すのは不公平と感じてしまうのだ。
1点を争う好ゲームでコリジョンルールが明暗を分けてしまっては、あまりにもつまらない野球になってしまわないだろうか。

このまま現行のルールで行くのなら捕手側が何か対策を練らなければならない時だと私は感じている。

スリリングでフェアなスポーツであるために。


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