[VCT 2022 JPN Stage1 Playoffs] 戦術的に面白かったラウンド [Day2 NTH vs RIG]
■前書き
VCT 2022 JPN Stage1 Playoffs Day2で行われたNortheption vs Reigniteの試合で戦術的に面白いラウンドがあったので備忘録的にまとめておく。
あくまで神視点でみているからこその部分もあるかもしれないが、とりあえず情報整理も兼ねて。
面白かったラウンドは以下のラウンド。
対戦組み合わせ : NTH vs RIG
マップ : HAVEN
何ラウンド目 : 第21ラウンド
取得ラウンド数 : NTH 12 - 8 RIG (NTH マッチポイント)
■エージェント構成
エージェント構成はそれぞれ
・Northeption
Meteor選手 : ジェット
BlackWiz選手 : オーメン
xnfri選手 : スカイ
JoxJo選手 : ブリーチ
Xandrite選手 : キルジョイ
・Reignite
Foxy9選手 : ジェット
eKo選手 : ソーヴァ
Dhimoruto選手 : オーメン
hyouka選手 : キルジョイ
kuro選手 : KAY/O
■ラウンド開始前状況
第20ラウンドをNTHが取得してNTHマッチポイントで迎えるラウンド。
RIGはこの第21ラウンドを落とすと自身のピックマップを落としてしまうことになるのでぜひともここから巻き返したいところだが、クレジットも厳しく全員が満足に武器は買えない状況。
ラウンド開始前にRIGはタイムアウトを取ることで何とか守り切りたいところだが、それに対してNTHは武器有利も活かしつつどのように攻めていくのかが注目のラウンド。
・NTH側のBUY状況とULT状況
クレジット状況が非常に良く、全員がきっちりBUYできる状況。場合によっては攻めでのオペレーター運用もできそうなほどクレジットは潤沢。
ただこのラウンドでは全員がヴァンダルまたはファントムのアサルトを選択し、アーマーもアビリティもフルでのBUYに。(下の画像のキルジョイのアラームボットは配置済み)
ULT状況としてはスカイを務めるxnfri選手のシーカーがあと1ポイントということもあり、1キルまたはオーブ取得後のULT発動も視野に入れることも可能。その他の選手はこのラウンドでのULT発動は厳しそう。
・RIG側のBUY状況とULT状況
クレジット状況が厳しい中でもチームのエースとしてジェットを務めるFoxy9選手にオペレーターを持たせる選択。その他の選手は武器やアーマー状況は良いとはいえず、その代わりアビリティはきっちり全てBUYする選択に。(下の画像のキルジョイのアビリティは配置済み)
加えてULT状況もあまり良いとはいえず、唯一Dhimoruto選手のオーメンのULTであるフロム・ザ・シャドウズがあるのみで、ラウンド中に他のULTが上がる見込みもなさそう。
・ラウンド開始時配置
RIGの守りの配置としてはA2、B1、ガレージ1、C1の割とベーシックな形。初動でソーヴァのリコンボルトやKAY/Oのゼロ/ポイントでA側の索敵が行える配置になっており、場合によってはガレージから飛び出してのオペレーターでのキルも狙える。
それに対してNTHはA側のアラームボットに加え、ミッドを3人、C側をオーメンで警戒、そしてどこへでもサポートできるようなブリーチの配置など、どちらかというと詰めを警戒した形。直前にタイムアウトを取ってきているというのもあり、詰めなどのRIGの積極的な動きへの警戒度が高そう。
■ラウンドの流れ
結果的にというところもあるかもしれないが、ラウンドの流れを簡単にまとめると以下の通り。
1. 初動の詰め警戒と情報取り
2. NTHによるガレージのエリア取りとRIGの対応
3. NTHがガレージに1人残して攻め直し
4. NTHによるAフェイクでRIGを釣る
5. NTHによるCサイト制圧かつスパイク設置
6. RIGによるCサイトリテイク開始
7. キルジョイのラークと合わせて囲い込むような形でNTHがRIGを殲滅
NTH側がどこまでもともと想定していたのかはわからないが、特に4と5によるNTHのAフェイクからの安全なCサイト取りがきれい。
以下、1つずつ詳しく見ていく。
・初動の詰め警戒と情報取り
守り側で武器状況が芳しくないときにHAVENではミッド詰めを行うことがあるため、まずNTH側は開幕してすぐにミッド警戒。
ラウンド開始直後にタレットをキルジョイが設置することで、RIGによるミッド詰めとガレージ飛び出しによるワンピックをケア。(実際ガレージにいたRIGのジェット(Foxy9選手)はタレットの設置音を聞いてガレージを飛び出すのをやめたかのような動きをしている。)
そして反応がなさそうだったので、NTHはそのままミッドを制圧。
その裏でRIGはソーヴァのリコンボルトとKAY/Oのゼロ/ポイントでA側を索敵。初動でのA側へのアクションはなさそうだと判断したのか、ソーヴァはすぐさまAリンクへと移動。
かつキルジョイに1人でAロングを抑えてもらうことでAへのアクションがあればすぐ察知できるように。(もし一気にきてもある程度キルジョイのアビリティと遠距離でのオーメンのサイト内スモークで時間が稼げる。)
・NTHによるガレージのエリア取りとRIGの対応
センター制圧後、ガレージのエリア取りを行うためにNTH側はスカイのトレイルブレイザーをガレージへと流していく。
ここでRIG側がオペレーターを持っているジェットをガレージに配置しているのをNTHが把握。続けてブリーチのフラッシュポイントとスカイのガイディングライト、ガレージ窓へのスモークで、オペレーター潰しとガレージの制圧にかかる。
これでNTH側はガレージでRIGのジェットをキルすることはできなかったものの、RIGはガレージをNTHへと渡す形に。(ただしここでFoxy9選手は簡単にテイルウィンドを使わずに下がり切ったのは個人的にすごい判断だと思った。)
加えて、同時にNTHのジェットがBサイト前からスモークとテイルウィンドでCリンクへと一気に侵入。これによりガレージ窓やCリンクにいるRIGの選手がガレージへのカバーをしづらい状況になっていた。
そしてスモークから飛び出たNTHのジェットがCリンクにいたRIGのKAY/Oをキル。その後すぐにRIGのソーヴァがカバーキルを取り1-1トレード。
ただし、CリンクにKAY/Oがいて戦闘が起きたという情報からガレージ窓にはRIGの選手がいないと思ったのか、すぐさまNTHのキルジョイがガレージ窓のスモークにイン。
先にスモーク内に入れたことで後からガレージ窓のスモーク内へとやってきたRIGのソーヴァがキルされて人数状況はNTH 4-3 RIGに。
ちなみにスカイとキルジョイがガレージ奥まで入るときに、Cロング側にいたNTHのオーメンが引いて行ったジェットにむけてパラノイアを入れて安全に入れるようにしている。
それに伴いCロングとガレージからのC制圧の可能性に対応すべくRIGのオーメンもスモークとパラノイアを返していた。
戦闘が起きていないところなので注目されなさそうなポイントかもしれないが、オーメン同士の駆け引き感があって非常に良い。
ただここでパラノイアを使わされたこと、ソーヴァのキルを取られたことによりRIG側が人数的にも残りアビリティ的にも厳しいことになる。
・NTH 残りエージェントとアビリティ
オーメン:シュラウドステップ×2、ダークカヴァー(クールダウン有り)
スカイ:リグロウス、ガイディングライト(クールダウン有り)
ブリーチ:アフターショック、フラッシュポイント×1、フォールトライン(クールダウン有り)
キルジョイ:ナノスワーム×2、アラームボット(設置済み)、タレット(設置済み)
・RIG 残りエージェントとアビリティ
ジェット:アップドラフト×1、テイルウィンド
オーメン:シュラウドステップ×2、ダークカヴァー(クールダウン有り)、フロム・ザ・シャドウズ
キルジョイ:ナノスワーム×2(設置済み)、アラームボット(設置済み)、タレット(設置済み)
・NTHがガレージに1人残して攻め直し
NTHはガレージ制圧後、スカイを1人ガレージに残して一度引いていく。
ただ、そのまま全員が引くのではなく1人残すことで取ったエリアを簡単に渡さないようにしたり、Cサイトから他のサイトへの寄りの足音などが聞けるところが非常に強そうだなと思った。
引いた理由としてはRIGが残り3人でジェットがCサイトに引いて行ったのが分かっていること、パラノイアがCサイトからCロングへと返されたことから最低でも2人はCにいることが確定しているため、このままC攻めをするより一度仕切り直した方がいいと考えたのかもしれないと個人的には思う。
また、RIG側としてはソーヴァとKAY/Oという索敵ができるエージェントを失ってしまったため、一度情報をリセットされると体で相手の位置を探らなくてはならないのが非常に厳しい。
実際このNTH側が引いて行ったタイミングでRIG側はオーメンがCロングを詰めて行って相手のいるエリアを限定しようとしているほか、ミッドもジェットで直接見て索敵している。
・NTHによるAフェイクでRIGを釣る
NTHはスカイをガレージに残して引いたのちに、C詰めを少し警戒しながらA側へとフェイクを行っていく。
なおこのフェイクについては推測多め。
状況としてはそもそもA側に配置したアラームボットが壊されておらず、ガレージ取りをしてすぐに裏を見に行ったNTHのブリーチやオーメンも敵と出会っていないことからRIGのA詰めはないと判断できる。
かつNTH側からすると、RIGが2人Cサイト側に配置していることが分かっていること、そもそもここまでRIGのキルジョイの姿どころかアラームボットやタレットも全く見えていないことからAサイトはアラームボットやタレットに任せてAリンクあたりにキルジョイがいることももしかしたら予想できていたかもしれない。
そうなるとAロングやAショートで戦闘が起きる可能性も低いので、一人でキルジョイがA側を進行して相手のタレットやアラームボットを壊したり、わざと反応させて相手を釣る(ここでNTHの人数有利も効いてくる)戦略が出てくるのかなといったところ。
実際キルジョイがAショートを進行しているとき、ミニマップを見る限りNTHの他の選手はAに行く素振りは全くなさそうに見える。
その後、RIGのキルジョイが設置したAショートを見るタレットの反応やAショート進行の足音、AサイトのヘブンにたかれたNTHのオーメンによるスモークに合わせて、AリンクにいたRIGのジェットは走ってAへ合流、オーメンがULTのフロム・ザ・シャドウズでAに寄っていく。
この時点でラウンド残り時間30秒ほど。RIG側からすると人数不利状況というのも相まって、この時間帯でこういったアクションをかけられたらA攻めが来たと思ってAに寄らなくてはと思うのも仕方ないのかなという感じ。(NTH側のオーメンのスモークのクールダウン的にもスパイクプラント前で使うならこのスモーク1つがラストになる。)
それに対しNTHのキルジョイはRIG側のAリンクでのAサイトへ寄る足音やオーメンのULT音を聞いて、一気に引き返していく。これで完全にRIGの3人をAサイトへと釣る結果となった。
ちなみにNTH目線だとこの時点ではさっきまでCにいたオーメンがULTを発動したこと、Aリンクの音がキルジョイかもしれないことを考慮すると最低でも2名はA側にいる算段がついていそう。(それ以外でも広くエリアを取れているために、相手のいるエリアはかなり限られる。)
・NTHによるCサイト制圧かつスパイク設置
Aフェイク後、ブリーチはガレージに残ったスカイとガレージで合流。
フェイクでRIGをAサイトへと釣ったことでCサイトを安全に制圧して、スカイのガイディングライトでCリンクを索敵。Cロング詰めが残っている可能性をケアしてサイト裏側にスパイクをプラント。(一応ブリーチのスタンも入れることで、Cリンクに敵がいた場合に後からガレージに来たオーメンによるキルチャンスも作っている。)
設置後NTHはCロングの射線を切るようにオーメンのスモークを設置。これによりフラッシュがないRIG側にNTHが有利なCロングでの打ち合いの形をつくる。そして基本はCリンクを警戒する形としてRIGのCサイトリテイクに備える。
その間にAサイトフェイクから引いたNTHのキルジョイはAサイトからの裏詰めとミッドを警戒し、程よいタイミングでのラークに備える。(これが後に効いてくる。)
・RIGによるCサイトリテイク開始
その一方でRIGはAフェイクの可能性を考慮してBサイトにいたジェットがCサイトでのスパイク設置音を聞いて、全員がCサイト側へと寄っていく。
まずはガレージの取返しからということで、ジェットが単独でガレージへと勝負。NTH側はブリーチのアフターショックによるサポートも行ったものの、Foxy9選手の純粋な撃ち合いの上手さでオーメンをキルしてRIGはガレージ取りを成功させる。
これで人数状況は3on3かつ取り返しにオペレーターは使いにくいものの武器状況もほぼイーブンに。
ただここで効いたのが次のNTHのキルジョイのラーク。
・キルジョイのラークと合わせて囲い込むような形でNTHがRIGを殲滅
人数状況3on3かつ武器状況もほぼイーブンとなり、RIG側の取返しにワンチャンスあるかという場面だったが、ここでNTHのキルジョイラークが刺さっていく。
Aフェイク後ミッド窓でA詰め警戒をしていたNTHのキルジョイがガレージでの交戦に合わせてミッドからBサイト中へと進行。
1人失ってしまったNTH側はこのラークを通すためにサイト中でガイディングライトとフラッシュポイントを使って時間を稼ぐ。
稼いだ時間でキルジョイがBサイトを抜けてCリンクまで進行したところで、サイト中にいる味方と挟んでCTリス側からCサイトへ入ろうとするRIGのキルジョイをキル。これで3on2。
かつ、この後進行することでCTリス側にRIGの選手がいないことを完全にクリア。この情報がかなり大きい。これで残りのRIGの選手がいる場所はCロングかガレージに絞れることに。
またおそらくではあるが、ガレージでの交戦時にRIG側のオーメンがCロングにスモークを炊いたことでNTHのスカイはCロング側にRIGの選手がいないことを察知しているように見える。(実際Cロングに炊かれたスモークにインすることで、逆に利用してガイディングライトを使用している。)
それゆえNTH側からするとほぼ100%ガレージにRIGの残り2人がいるという情報がつかめており、かなり情報のアドバンテージが大きい。
対するRIGはスパイク解除の時間であったり、索敵系エージェントが全くおらずサイト中の配置が分からない中での取返しというところを考えると、かなり不利な状況の中で急いでCサイトへと入っていかなくてはいけない状況。
ゆえにあとはRIG側がサイトへと入っていったところを、3方向からの射線を使って囲い込んで殲滅といった形でゲームエンドでNTHの勝利。
■まとめ
やはり細かく見ていくと全体的にNTHの攻めの丁寧さやエリアコントロールの上手さを感じられる。初動でミッド制圧からガレージ制圧、A詰めもないという状況を作り上げることでかなり広いエリアが確保できていた。
ガレージ取りから最終的なAフェイクC設置の流れも、RIGのキルジョイの配置を読んだ上で罠のある側には行かないという非常に合理的な選択に見える。
唯一ガレージ取りの際にBサイトを抜けてCリンクへと一気に侵入するMeteor選手のジェットの動きはリスクが高い動きかなと思うが、おそらくチームのエース故の信頼もあっての動きなのかなといった感じ。
反対にRIGからするとガレージを取られた後のソーヴァをキルされたのが非常にもったいなく感じた。あそこでソーヴァが落ちていなければ人数状況は4on4で数的不利を負うこともなかったし、オウルドローンも残っていた状況でもあったので、索敵もしやすかっただろうと思う。
ただソーヴァを担当していたeKo選手が韓国籍ということもあり、もしかしたらチーム内でのコミュニケーションに乱れがあった可能性もあると考えると、そのあたりを今後のチーム運営でどのようにしていくのかという点は非常に注目したい。
■後書き
1ラウンドを取り上げただけだったが思ったより長い文章になってしまった…。
ただ、やはりプロプレイヤーたちのアビリティの使い方や全体のアビリティ管理が非常にうまく、1つ1つにきっちりと意味がある使い方がされているように感じる。
なかなか自身のプレイで同じようにとはいかないかもしれないが、きちんと考えてプレイできるようになりたいね。